なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

感染症学セミナー

2015年08月02日 | Weblog

  日本臨床微生物学会の感染症学セミナーに行ってきた。今年は蒲田(東京工科大)で開催。東京駅から京浜東北線で21分と意外に近い。

 「いま知っておきたい耐性菌は?」 グラム陽性球菌は増加しているが、微増といったところ。むしろグラム陰性桿菌の耐性化が著しい。多剤耐性緑膿菌・多剤耐性アシネトバクターもあるが、一番の問題はカルバペネム耐性腸内細菌科細菌Carbapenem-resistant Enterobacteriaceae(CRE)。

 「これだけはやっておきたい耐性期検査」 薬剤感受性試験から耐性菌と判明するが、最初から選択培地(MRSA選択培地・VRE選択培地)を使用すると、1-2日早くわかるそうだ。βラクタマーゼを検出するシガβテストも初めて知った(検査技師には常識か)。細菌培養の検査をよく知る必要がある。

 「耐性菌を産まない抗菌薬治療の基本」 亀田総合病院の細川直登先生の講演。抗菌薬治療は二度選ぶ(初期治療と最適治療で)。初期治療empiric therapyは何にでも効く抗菌薬で開始することではなくて、想定した起炎菌をカバーする最小限のスペクトラムの抗菌薬で開始することだという。最適治療は起炎菌に合わせて初期治療で開始された抗菌薬より狭いスペクトラムの抗菌薬にすること。ブロードスペクトラムの抗菌薬をなるべく使用しないことが、目の前の患者さんを治すだけではなく、明日の患者さん、来年の患者さんを治すことにつながっていく。実際に亀田総合病院では感染症科ができてから、耐性菌が減少している。また、標準予防策もきちんと地道にしていかなければならない。

 症例検討の1例目は小児感染症科(都立小児総合医療センター)から6歳男児の脛骨骨髄炎(Brodie膿瘍)。起炎菌はMRSAで、手術と抗菌薬投与(バンコマイシン点滴静注からクリンダマイシン内服)で治癒した。成人だと6~8週間点滴調注を継続するが、小児では条件がゆるせば途中から経口薬に切り替えるそうだ。2例目は亀田総合病院から高齢女性の急性腎盂腎炎からの敗血症性ショック。起炎菌は大腸菌(ESBL)で、メロペネムで開始して(最初の抗菌薬が効かないと死亡に至るケース)、感受性試験の結果をみてセフメタゾールにde-escalationした。これも条件しだいだが、ESBLでもセフメタゾールでの治療もあるという(神戸大学では論文にしている)。

 最後に「2015 CLSI AST会議のトピックス」  感受性のS・R・Iは真面目にやっても案外ブレるという話だった(繰り返すと同じにならない)。Sだから絶対に効くというものでもないので、臨床経過をよく見ることが大切だという。

 まあまあためになるセミナーではあった。東京は暑かった。

 

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