なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

菌血症・敗血症

2024年10月24日 | 感染症

 10月20日(日)に日当直をしていた先生(別の医療機関の先生のバイト)から入院の報告がきた。(その日は内科当番だった)

 施設入所中の90歳代前半の女性が、前日に転倒して頭部を打撲した。地域の基幹病院に搬入されて、頭部CTでは異常がなかった。しかし発熱があったために抗菌薬内服を出されて、帰宅(施設)となった。

 施設といってもケアハウスなので、自力歩行できる人が対象になる。その女性はふだんは歩行器を使用して自力歩行が何とか出来ていたが、転倒打撲後は歩行できなくなった。施設におけないので、当院に入院させてほしいと連れて来られたのだった。

 社会的入院ですが、ともいわれた。当院受診時は発熱はなかった。(36℃台なので、ふだんより微熱?)白血球は正常域だが、CRPが9.3と上昇していた。

 総胆管結石で基幹病院消化器内科に2回入院して内視鏡治療を受けていた。総胆管ステントはまだ挿入されたままだが、肝機能の異常がなかった。胸部X線で肺炎もないので、尿路感染症だろうという。セフトリアキソンを入れておきます、ということだった。

 

 月曜日に本人に話を訊くと、転倒する前に顎があわあわとなったという。歯があれば、ガチガチ鳴りましたということだろう。悪寒戦慄だった。

 また前腕に皮下出血が目立ち、救急車内で血圧が80mmHgで救命救急士が点滴しようとして、何度か失敗していた。(静脈は見えるが、もろい)

 基幹病院搬入時のバイタルはどうだったのだろうか。どうも菌血症・敗血症になっていたようだ。当院入院時は血圧100ちょっとにはなっていた。(敗血症性ショックの定義は、①十分な輸液にもかかわらず、平均動脈圧65mmHgを保つための循環作動薬を要し、かつ②血清乳酸値2mmol/L=18mg/dL以上)なので、正確には該当はしない)

 入院後は発熱もなく、食事摂取良好で会話も普通にできていた。自力で両手をベット柵にかけて臥位から座位になれた。すでに抗菌薬2種類が入っていて経過が良好なので、培養は提出しなかった。

 すると、10月22日施設の嘱託医からFAXが病院に来た。血液培養2セットから大腸菌が検出されて、どうやらESBLらしいということだった。最終結果と薬剤感受性が出たら再度伝えるとなっていた。入院で抗菌薬を使用するならセフメタゾール(CMZ)かカルバペネムを、内服ならST合剤にというアドバイスも記載していた。

 セフメタゾールは尿路系のESBLに使用できるが、以前感染症の先生(感染管理指導で来ている教授)に訊いたところでは血液培養で出た時はきちんとカルバペネムを使用するようにといわれていた。

 薬剤感受性がないセフトリアキソンやレボフロキサシンが効いたような経過になるのは尿路感染症特有のことだ。

 先方の病院は抗菌薬内服だけ出してあっさり帰宅としていたが(病室逼迫の問題かもしれない)、きちんと検査は提出していたのだった。

 

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