先週の木曜日に、地域の基幹病院呼吸器内科の先生から、肺癌の80歳代後半の男性の転院依頼があった。年齢的に癌に対する治療はないこと、無気肺をきたしていること。病状悪化時はDNRであることなどを言われたが、最後に実は不穏で困っていてという話が出た。ベットがなくて困っているはずなので、いつものように引き受けることにした。
昨日当院に転院してきたが、午後までずっと寝ていた。最初は意識障害なのかと思ったが、夜間せん妄で精神薬を使用したらしく、朝方から寝始めたようだ。話をしても状況を理解していなかった。入院によるせん妄以外に、もともと認知力低下があったようだ。
紹介状を見ると、先週の火曜日に呼吸困難で入院していて、3日目の木曜日に転院依頼してきたことになる。経過の記載がないので、病棟の看護師さん宛ての看護情報提供書で確認した。今年の3月に近医から右肺上葉異常陰影で紹介されたが、年齢的に経過観察となっていた(まあそうだろう)。
いつもは付いてくる画像を入れたCDもなかったので、胸部CTで確認した。右上葉は癌の浸潤で確かに無気肺になっている。右気管支にも浸潤していて、早晩右肺全体が無気肺に陥りそうだ。胸水貯留もあった。上下肢に浮腫があって、末梢からの点滴は困難だった。
娘さん二人(それぞれ別居)が付いてきていた。奥さんとの二人暮らしだが、奥さんは今ショートステイに入っているそうだ。連れてくるのが大変らしいが、できるだけ早く1回顔を見に連れてくるよう勧めた。
酸素吸入と医療用麻薬のフェントステープが貼付されている。疼痛時のレスキューはオプソ頓用になっていた。苦痛がないように緩和ケアをしましょうという状況ではある。
昨夜は夕食後にせん妄対策で内服薬を使っていたがダメだった。夜間せん妄がひどく、4人部屋では対応できず、急遽個室異動になった。精神薬静注を2種類使用したが、あまり効かなかったそうだ。抑制や必要時の指示を使って何とか対応してくれる病棟看護師さんには申し訳ないと思う。今晩の対応はどうするかの相談になった。緩和ケアというよりは、せん妄・不穏対策の患者さんになってしまった。入院3日目での転院依頼はこういう事情によるのだった。