面白かった。
毎日ニュースばかりで、ちょっと気持ちがくらあくなってしまって、東北の人や節電に苦労している地域の人に悪いなあと思いながらレンタル屋さんで借りて来た。
2時間20分があっという間だった。
ストーリーは、淡々と進む。大きく盛り上げられた場所もなく、剣岳登頂という大きな場面も実にあっさりと描かれさらっと通り過ぎる。それなのに、飽きるということがなかった。山が、美しかった。
「南極料理人」は大雪原の中、むさくるしい男8人を実にシュールに描いていて、食事シーンが主役だと思った。「剣岳 点の記」は山を登る男たちの様子をもくもくとカメラが追う。山を登ることが主役だった。
剣岳の雄姿は、画面に映し出されたどの季節も素晴らしかった。
素晴らしかったが、その歩いて登る彼らの装備の乏しさに仰天した。今では考えられないほどの、私の眼には装備とは映らない状況だ。明治40年、わらじにロープ、菅笠に蓑で、そのとんでもない山を登っていく。
明治の人の強さに目を見張る。そしてそれを演じ切った浅野忠信、香川照之に絶賛!
この監督は「八甲田山」を撮った監督だという。私はリアルタイムで劇場で観た。
あれは八甲田という自然に、違う方法を挑んだ二人の軍人を描いたものだった。
「剣岳」にも、軍隊はそういう理不尽な考え方をするものだということが描かれている。
その中で口数少なく与えられた仕事に全力を尽くす男たち。
日本人 かっこいいじゃないか。
そうやって考えを進めてきて、今、原発を止めようと現場で必死に頑張っている人たちに思いをはせた。
上の人たちは、いろいろ考えていろいろいう。周りも身の安全な場所であれこれいう。
その中で、物言わず、自分のやれることを必死にこなしている人たちがいる。
「タワーリングインフェルノ」だったろうか、最後にスティーブ・マックイーン演じる消防士が
「誰かが、聞きに来るまで、おれは火を消すだけさ」という。
せめて、責任を取る立場の人たちは胸張って立っていてほしい。
「剣岳」では、功名心争いの相手であった「日本山岳協会」が「陸軍測量隊」の成功を称賛する。
私も、ほめられてしかるべき人をしっかりほめたいと思う。