装丁にひかれて買った本だ。
小作りな、かっちりとした装丁が心地よい。
この本を大切にしてほしいと作り手が言っている。本はこういうものだったと思わせるものだ。
出版社や編集者の思いが伝わってくる。
クラレンスと名付けられたスズメが12年と7週と4日を生き抜いた様子が、淡々と、格調高い文章でつづられている。野鳥であるスズメが人になつくわけではないが、人との共同生活を受け入れている。時は第二次世界大戦中。空襲の不安の中、ひねりつぶされてしまうほどの生き物だ。そのはかない交流にドキドキした。
クレア・キップス 英国婦人てこういう人のことをいうのだろう。“こうあるべき”という生活習慣をきっちりと守っている。シャーロック・ホームズが下宿をしていたベーカー街221Bの ハドソン夫人 はこういう人ではなかったろうか・・・。赤毛のアンの マリラ・カスバート のイメージもこれに近い。怖いイメージがあるが、背筋をぴんと伸ばして凛としている様は少々あこがれでもあった。その誇り高い女性が、慈しんだ小さなスズメの死をいたんでいる。そのことがじんわりと伝わってくる。声高に戦争を語っているわけではなく、平和を説いているのでもないが、この優しい小さな交流が穏やかな平和な時に行われていたらと思う。
訳本の常で、日本語の流れにはない読みにくさを覚える箇所もあるが、誇り高いキングズイングリッシュなんだなと感じさせてくれた。今、この本から感じたこと、来年感じること、時代が流れ世界の様子がもっと変わって感じることがまたあるだろうと思う。再読したいと思う一冊です。