『世界』を読む会

寅さんの博も読んでいる『世界』を読んで、話し合おう。

富岡の『世界』を読む会・11月例会は、5名で。

2022-11-28 18:39:58 | 日記
富岡の『世界』を読む会・11月例会の報告
 
(郡山さんから)
 富岡『世界』を読む会は、11月16日高崎市吉井町の西部コミュニティセンターで、5人の参加で開催されました。
 テーマは、『世界』11月号の特集「戦後民主主義に賭ける」から、高橋哲哉『終わりなき歴史責任(下)』と辛淑玉『千三つのギャンブル』の二つの論文を取り上げました。(高橋論文は『世界』9月号の同名論文(上)含む)
 
Ⅰ.高橋哲哉稿『終わりなき歴史責任 (上)・(下)』
 同論文(上)は、冷戦終結と再統一後の過去30年の、ドイツの歴代大統領と首相によるドイツの歴史責任に関する発言を追跡したものだ。「自虐史観」からの訣別を唱える櫻井よしこや高市早苗等の「歴史修正主義」言説への、痛烈な批判となっている。大統領発言の主な部分は次の通り。例会では、高橋論文の(上)戦後責任を中心に話し合った。
 ①ヘルツォーク 大統領在任期間1994-1999 政党CDU ワルシャワ蜂起50周年記念式典 94/8/1 ワルシャワにて
「今日、私は、ワルシャワ蜂起の闘士たちとポーランドの戦争犠牲者すべての前で頭を垂れます。私はドイツ人によって彼らになされたことについて、赦しを乞います。」
 ②ラウ 1999-2004 SPD 強制労働被害者補償に関する声明 1999/12 ベルリンにて
 「私は今日、ドイツの支配下で奴隷労働と強制労働に従事せざるをえなかったすべての人びとに思いをいたし、ドイツ国民の名において赦しを乞います。彼らの苦しみを私たちは忘れません。」
 ➂ケーラー 2004-2010 CDU 戦後60年記念行事 2005/5/8 独連邦議会にて
 「私たちはこれらすべての苦痛とその原因を心に刻み、目覚めさせておく責任を負っています。私たちは、こうしたことが二度と繰り返されないようにしなければならないのです。この責任に終わりはありません。」
 ④シュタインマイヤ— 2017- SPD 第2次世界大戦開戦80年記念式典 2019/9/1 ポーランド・ヴィエルニ村にて
 「ドイツの暴力支配によるポーランド人犠牲者の前で頭を垂れます。そして、赦しを乞います。」
 ⑤シュタインマイヤー 2017- SPD 戦後75年記念行事 2020/5/8 ベルリン・ノイエヴァッヘにて
 「これを耐えがたいと思う者、終止符を求める者は、戦争とナチス独裁の災禍を記憶から排除しょうとするのみならず、私たちが成し遂げてきたあらゆる善きものの価値を失わせ、わが国における民主主義の中核的本質すら否定してしまうのです。・・・「人間の尊厳は不可侵である」。わが国憲法の第一条に掲げられたこの一文には、アウシュヴィッツで起きたこと、戦争と独裁体制下で起きたことが、すべての人の目に見える形で刻み込まれています。そうです、過去を想起する営みは重荷ではありません。想起しないことこそ重荷になるのです。責任を認めることは恥ではありません。責任の否定こそ、恥ずべきことなのです。」
 例会では、これら歴代ドイツ大統領の戦後責任発言を受けて、歴史認識と戦後責任についての日独間の相違と落差の大きさについて、感想を述べ合った。参加者各人の発言内容を合わせ、アレンジして報告する。
 ナチスドイツによるホロコーストについては、例えば仏映画ショア(1985年、ユダヤ人生還者や元ナチス等のインタビューからなる9時間超えのドキュメンタリー)が世界中に衝撃を与え、さらに多くの映画や小説、ドキュメンタリー作品が切れ目なく世界に提供され続けており、ホロコーストは最大級の世界的関心事だ。これに比べ日本軍国主義によるアジアでの蛮行は、ホロコーストと較べ散発的かつ非組織的であり、被害を受けたアジアの国々を除けば、世界の関心事となり難かった。日独両国の戦時の加害者性を見つめる世界の眼に、相違があったといえるのではないか。
 戦後、憲法によって実現した日独の戦後体制の相違も指摘すべきだ。憲法第一条、独「人間の尊厳は不可侵」、日「象徴天皇性」。ドイツがナチ体制の徹底的破壊の上にリベラル・デモクラシーを追求してきたのに対し、日本は、天皇制を保持したまま「あいまい」なままずるずると戦前の残滓を捨てきれず、中途半端に民主主義を追求し続けてきた。この「あいまいさ」が、政治指導者の歴史認識と戦後責任からの遁走を許してきた。「敗戦後、天皇は退位すると思っていたのに、いけしゃあーしゃあーと残った」という瀬戸内寂聴さんの感慨が紹介された。
 日独両社会におけるの歴史認識の落差は、やはり学校教育に求めざるを得ない。日本史教科書の戦争記述に対し、文部省は「戦争を暗く表現しすぎ」だとして検定不合格としたが、それを違憲として訴えた家永教科書裁判が、「歴史認識・戦争責任」論争の原点だ。こうした歴史教育を受けた若者たちは、剣呑・狡猾な右翼政治家たちの歴史修正主義的主張に容易に靡き、彼らの跳梁跋扈を許している。日独両社会の歴史認識の落差の最大のポイントは、この辺りにありそうだ。
 
Ⅱ.辛淑玉稿『千三つのギャンブル—民主主義を獲得するために』
 在日三世として日本社会に生きてきた筆者は、被差別者ゆえに研ぎ澄まされた人権感覚をもって、日本社会に潜む差別意識と構造を鋭く可視化している。筆者は、「自分のことは自分で決める」「自分たちのことは自分たちで決める」ことこそが、民主主義だと説く。辛淑玉さんの簡明な言説は、書斎の理論家ではなく街なかの運動家に由来する言葉なのだと思う。
 北朝鮮への帰還事業の背景に、「社会主義の楽園への帰還」というプロパガンダがあったと記されているが、1960年のころ北朝鮮へ「帰った」同級生の女子がいたという出席者は、中学1年生を取り巻く大人たちの言説から、「ドイツは西、朝鮮は北」が豊かで幸福だという認識があったと発言した。
 多くの自民党議員が選挙運動に統一教会の信者に依存していたことを、筆者は「自発性のもっとも欠如した人々に頼る以外にないという政権党の現実。これこそ、やせ細った日本の戦後民主主義の行きついた姿だ」と断じている。こんな「戦後民主主義に賭ける」岩波編集部に対し、筆者の辛淑玉さんのカチンときた姿を見る様だ、との感想が出された。ただ、辛淑玉さんの日本の戦後民主主義に対する厳しい見方は、運動の中に分断を持ち込むのではないか懸念する、との指摘もあった。
 
◎冨岡『世界』を読む会・12月例会の予定
 ■開催日・場所:12月21日(水) 午後2:00~4:30
 ※ 時間帯が午前から午後に変更しています。
 吉井町西部コミュニティ・センター
 ■テーマ
 (1)斉藤正美『自民党と宗教右派の結託が阻んできたもの』
 (2)藤原帰一『壊れる世界 第4回-自由世界と国民国家』
 
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東久留米の『世界』を読む会・昼の部・11月例会は6名で。

2022-11-17 17:47:11 | 日記
東久留米の『せかい』を読む会・昼の部・11月例会の報告
 
 東久留米の『世界』を読む会・昼の部・11月例会は11月16日(水)、午後4時から、生涯学習センター学習会議室3で行われました。参加は、新しい方、久しぶりの方も参加で6名でした。
 
 今月のテーマは、
 ①内田聖子「デジタル・デモクラシー 第10回 民主主義という希望」
 ②山本昭宏「先後民主主義という経験」
 でした。
 ①は、デジタルのビッグ・テックの支配に恐ろしさを感じることが交流されました。事態の変化の速さは、少し前の状況が役に立たないような状態です。
 今月号では、「民主主義という希望」ということで、「集団行動」と「立法」と「自前の技術」という対抗策を提示してくれていますが、日本でのその姿が明示的に示されるようになっていないようだと話し合われました。
 こんなことは「なくて済む」ような生き方が理想的なのかも知れませんが。
 ①の議論で多くの時間を割きました。それだけ、大きな深刻な課題です。
 
 ②は、筆者が非常に若いということで、「戦後民主主義」を生きてきた?参加者たちには、どうもピンとこないという反応でした。筆者の言いたいことが頭に入らないで苦労したという方も。
 「戦後」と冠されようとそうでなかろうと、「民主主義」は、私たちの現実的課題として目の前にあるという気がしました。
 
● 11月号のその他のお勧めは
・富塚 「夢の沈んだ底の『火山島』」     金石範
・須山 「刑罰をどう考えるか」       浜井浩一
     でした。
 
◎ 東久留米の『世界』を読む会(昼の部)12月例会のお知らせ
 ●日 時 12月21日(水) 午後4時
 ●場 所 生涯学習センター学習会議室5
 ●持ち物 雑誌『世界』12月号
 ○共通テーマ
 ・「参政党を取り巻く陰謀論」        藤倉善郎
 ・「転換期の世界をどう見るか」  板橋拓己、三牧聖子
 ※ 第3水曜が定例です。ご承知ください。
 ● 連絡先 須山
                suyaman50@gmail.com
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東久留米の『世界』を読む会・zoom・11月例会は3名で。

2022-11-11 15:22:50 | 日記
東久留米の『世界』11月例会の報告
 
 11月9日(水)、午後7時より、東久留米の『世界』を読む会がzoomで開かれました。3名の参加でした。
 
■ 第一テーマ ・神子島健「小田実 難死から「殺すな」へ」
・〔p.110〕日本の教科書に「加害の歴史」が削除されていかないよう監視が必要だな。
・〔p.113〕「死」という名詞に比べて「死ぬ」という動詞が、生々しさを伝えるということに納得。
・〔p.113下〕平易な文章で表現することの重要性に賛成。シルバー民主主義に若い人を巻き込むためにも。
・〔p.116〕国際刑事裁判所の規定をアメリカが批准していないとは意外だった。民主主義を大切にしている国のはずが。
・〔p.116〕納得の行かないことをしないという「脱走兵」という立ち方に惹かれた。
・〔p.117〕「殺すな」バッチを手に入れてみたい。
・〔p.117〕「殺すな」の呼びかけが、殺されている人がいることを黙認する傍観的状況を変えよという意思を含んでいるということを、ウクライナ戦争で考えてしまった。
・〔p.119〕「良心的兵役拒否」という言葉が気に入って、「良心的納税拒否」を実行したい気持ちだ。
・世界が軍拡へ進んでいるが、それをくい止めようとする人の存在を嬉しく感じた。
・かつての学生運動はベ平連の市民主義を馬鹿にしていたが、ここに至ってみると、ベ平連の市民主義は、今こそ輝く者だと感じる。
・「死」に対して「死ぬ」は、実存的な孤独感を表すということが大切だと思う。
・ベトナム戦争での「『殺すな』と叫びながら『殺す』」ということについてスタンスが分かれたということだが、「問題解決の手段として暴力を視野に入れない」という小田実の譲らない非暴力主義は、日本国憲法を深く理解していると思った。
バオ・ニンの『戦争の悲しみ』を読み返したが、ベトナム戦争の英雄の主人公が一切の勝利感を持てず、ひたすら「戦争の悲しみ」に包まれることになる。戦争を本当に描いた本物だ。正義の戦争なんて言ってはいけないのだ。(ドイモイの中で本になることができたが)
・良心的兵役拒否は、社会にも貢献しようというのだから、賛成してくれる人も多いのではないか。
・ベトナム戦争の時にベ平連がやったことを今やっていないな、と思うというところから、どのような行動がいいだろうか。三人で大いに話し合いました。やる気あるのかな?
・市民が自由に意見表明の行動をすることが出来ない日本の現状について大いに激論。
「子どもを元気にするためのガイドブック」?を図書館で借りて読んだら、「許可を求めるな」という素晴らしいフレーズがあった。自己規制する、自主警察の大人に言いたい。「許可を求めるな」。
 
◎ 『「ウクライナから手を引き」座って・話そう会』
  毎月第一土曜日・午後1時から4時(1月7日スタート!?)
  小さい椅子、緑のリボン、風船、抹茶飴、お茶、童話
  「ここから平和の声を」世界に向けて
などと、考えました。
  
■ 第二テーマ・山本昭宏「戦後民主主義という経験」          
・ベ平連の脱走米兵援助活動というがいいなと思った。脱走したロシア兵士のことを考えてしまった。ロシアでは脱走は禁錮10年のようだ。
・「シルバー民主主義」と聞くと、若い人をどうするかを考えたくなる。
・戦後民主主義は生きている、その継承が大切だという文章。特に市民運動を重視している。
・戦後民主主義批判について触れていないが、今は戦後民主主義であるかどうかより民主主義そのものが課題になっている。
 
●その他のお勧め
 ○ 須山 ・「刑罰をどう考えるか」    浜井浩一
          でした。
 これを巡って、また燃えた議論が行なわれました。
 『空が青いから白をえらんだのです』奈良少年刑務所詩集・寮美千子編・新潮文庫 の紹介がありました。
 刑法学者の民主主義観、人権感覚のレベルの高さに感心し、嬉しくなってしまいました。
 教育の現状についての考えの大きなヒントを得る内容でありました。
 人間は、子どもは、失敗していい、「取り返しのつかないこと」「命のこと」以外は。失敗を前提とする、それが自由で寛容な社会の在り方だろう、などと考えた。自己責任の新自由主義の真逆。◆10月号のその他のお勧めは
 
◎ 東久留米の『世界』を読む会、12月例会のお知らせ
 ●日 時 12月14日(水) 午後7時
 ●zoomでのオンライン開催
 参加希望の方は、メールを下さい。案内を送ります。
 ●持ち物 雑誌『世界』12月号
 ○共通テーマ
 ・「カルト規制はどうあるべきか」
             紀藤正樹×島岡まな×田近肇
 ・「ウクライナ戦争と平和主義のゆくえ」 松元雅和
 ※ 第2水曜が定例です。ご承知ください。
 ※ 他に、昼の部として、第3水曜、4時から会場で行なう会もあります。
 ● 連絡先 須山
          suyaman50@gmail.com
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