『世界』を読む会

寅さんの博も読んでいる『世界』を読んで、話し合おう。

「久保校長の提言書」を読んで。

2022-02-28 20:09:15 | 日記

 

 

久保校長の提言書
 
『世界』3月号で
対談「子どもがいて、地域があって、学校がある」久保敬、名田正廣、斉加尚代
を読んだ。
 感動した。希望を感じた。
 
 当時、話題になった、久保校長の提言だが、改めて読んで感動した。
 維新が猛威を振るう大阪で、このような教育関係の良心に触れることができたとは。

 

 遅ればせながら、この提言は大いに流布されなければ、との思いを抱いた。
 ネットでは、
https://www.asahi.com/articles/ASP5N6KWMP5NPTIL00R.html
ここで見られる。

大阪市立木川南小学校・久保校長の「提言」全文:朝日新聞デジタル

 大阪市淀川区の市立木川南小学校(児童数140人)の久保敬校長が、市の教育行政への「提言書」を松井一郎市長(57)に実名で送った。全文は以下...

朝日新聞デジタル

 
 
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zoomの『世界』・2月例会は、5名の参加でした。

2022-02-27 20:30:44 | 日記

zoom『世界』を読む会・2月例会の報告

 
 2月25日(金)、zoomの『世界』を読む会・2月例会が行われました。参加は、5名でした。
●第一テーマ・鴨志田祐美「再審制度の改革はなぜ必要なのか」
・刑法改正の際に、再審の条文だけが間に合わなくて戦前のまま取り残されたという事情があったとは驚いた。
・治安維持法のやり方、(思想犯では物的証拠は問題にならない)取調べにおける自白偏重主義が戦後も続いていることが、諸外国と違って非常に問題な点ではないか。
・証拠開示に関することで、アメリカに比べて、日本では他の分野でもデスクロージャー制度が取り入れられていない現状がある。
・検察官が不満があれば、再審の中で主張すればいいのに、抗告で妨害してしまっているのはおかしいという主張だ。
・「再審法改正をめざす市民の会」(https://rain-saishin.org/〔p.215〕の映画喫茶『泪橋ホール』(https://namidabashi.tokyo/の行事で、布川事件の櫻井昌司さんの作詞作曲した『想いうた』というCDを買ったが、櫻井さんはNHKの『逆転人生』にも出たようだが、癌を患っていて、歌を聴いて涙が出てきた。
・刑法関係の問題としては、死刑廃止論があるが、團藤重光という人が死刑賛成から廃止論へ変わったことが印象に残っている。
・検察の有罪証拠のねつ造、あるいは無罪証拠の隠ぺいということがあるのだが、これは過失ではなく意識的な行為なのだが、この文では〔p.217〕個人責任でなく制度の機能不全だとしているが、こういう行為が何らかの罰則の対象になることは考えられないだろうか。村木さんのねつ造の場合は、政府内部での処分で終わっているという扱いだったが。
・須網論文〔p.172〕では、越境的に国際間で対話する裁判官対話のことが書かれているが、韓国の裁判官が非常に積極的に参加している(「アジア憲法裁判所協会」)のに、比べて日本の裁判所は消極的である、とあったことと、〔p.214〕の「ガラパゴス化する日本」ということと関係しているのでは。
・慰安婦問題で、日本の裁判所は1965年の日韓条約から判断しているのに対して、韓国の裁判所は1978年頃の国際人権条約に基づいて判断している。
・「人事」が物事をよい方向に持っていく壁になっているが、「直接の上司」には人事権がなく「人事」が独立したシステムになっている体制が最低限、必要だろう。
・岩手県議会では意見書を出すことが出来たとあるが、市民が動いて地方議会は風穴を開ける働きが可能だという現実がある。
 
●第二テーマ・中村真人「頭とこころでつまずく」
○ 郡山さんの報告で、実際にドイツに行った時に撮影した「つまずきの石」の写真を見せて説明していただきました。zoomで「画面の共有」をして。6点に整理して報告を受けました。
①つまずきの石は、市民の生活の場所にある。日常の中で歴史と共に生活している。犠牲者は一般市民だったことを示す。
②「分散型」記念碑であったため、市民からの距離が短く、つまずきの石プロジェクトは、大勢の市民が参加するものになった。ヨーロッパ27カ国、8万人まで。
③ナチスの犠牲者全ての人々を対象としている。(ユダヤ人、シンティ・ロマ、同性愛者、障害者、政治思想や宗教で迫害された人、強制労働者、脱走兵)
④名前を持った、一つ一つの家族と個人の物語を語るものになっている。600万人という抽象的な数ではなく。
⑤つまずきの石は創造的なアートである。
⑥足で踏みつけるということに関する議論があった。〔1月号p.259〕カッセルでのユダヤ教ラビの説明。〔p.265(4)〕にある、ミュンヘンの「目線の高さで」という対応。
・加害の歴史を忘れないという決意の表れであり、それを担保する工夫の込められた貴重なプロジェクトだ。
・「群馬の森」の朝鮮人強制連行犠牲者追悼の「記憶 反省 そして友好」という記念碑が2004年県議会で全会一致で設置されたものが、ヘイトスピーチを繰り返す右翼団体の請願によって、2014年、更新期に自民党・公明党の賛成で設置を拒否した。参加者が慰霊碑前で「強制連行」という言葉を使ったからという理由で。それは「政治的だ」、この碑の前で政治活動はやってはいけない。高崎地裁では市民が買ったが、東京高裁で去年八月下旬県が勝ち、最高裁に持ち込まれている。その結果によって、撤去されることになるかもしれない。
 ドイツの自治体の協力と、日本の妨害との差はあまりにも大きい。
・「頭とこころでつまずく」というのはいい題名で、アートで伝えるというのはいいなと思う。安逸な日常に攪乱を持ち込むような。
・埼玉の平和博物館でも、書き換えられることが起きている。
・ユダヤへの迫害のことは、朝鮮人の問題、南京事件などに比べて、重く扱われている。プロバガンダの差か、運動の差か、本当の両方とも大切な問題なのに。
・我々ドイツ人が過去につまずいた、という過去の「つまずき」かと思っていたが、今ここでこの石に「つまずく」そこから考えを進めるという意味なのかと思い直した。
・日常に過去の死と向き合うような仕掛けがお店の前の道にあるようなことが日本では精神の在り方としては考えにくいな、と思った。
・南京事件を描いた映画は、ヒトラーを描いたものに比べてまるでない。日本の小説としては、堀田善衛の『時間』と榛葉英治の『城壁』があるのみだが、『城壁』は出すのに非常に抵抗があった。
・ドイツの扱い方は、加害者も被害者も「個人」として扱われている。そこが日本と違うのでは。
 
■ 本の紹介がありました。
 ・中島京子『やさしい猫』
 ・酒井隆史『グルシット・ジョブの謎』
 ・今野晴貴『賃労働の系譜学』
 
◎ ZOOMの『世界』を読む会、3月例会 の予定
 ●日 時 3月25日(金) 午後7時~9時半
 ※ 月末の金曜が定例です。
 ○共通テーマ
  ・「NHKに何が起きているのか?」  長井 暁
  ・「原発とどう向き合うか?」     八田浩輔
 ○参加ご希望の方は連絡下さい。案内を差し上げます。
 ● 連絡先 須山
            suyaman50@gmail.com
 
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練馬の『世界』を読む会・2月例会は8名で。

2022-02-21 19:26:16 | 日記
練馬の『世界』を読む会・2月例会の報告
 
 2月18日(金)、午後1時より、光が丘図書館の会議室で、練馬の『世界』を読む会・2月例会が行われました。8名の参加でした。
 例によって、美味しい手作りケーキとお菓子、コーヒーをいただきながら。チョコレートケーキにはレモンの皮をすり込んであったそうです。(気付かず食べてしまいました。美味しかったです。)
 
今月のテーマは
・「野党第一党に何が問われているのか」    南 彰
・「路上を子どもたちに返す」        今井博之
・「最高裁判所を「憲法の番人」として機能させるために」
                      渋谷秀樹
 でしたが、最初の「野党第一党に何が問われているのか」で、一番時間を掛けて、論議が盛り上がりました。新聞労連委員長の南氏に、もっと鋭い切り口を期待していたのに、という声もありましたが、朝日新聞の現役記者という立場から、配慮を伴った表現ではなかったのか、と。近づく参議院選挙、その後の選挙のない三年間での憲法の危機など、大変危ぶまれる事態の変化ですが、それを打ち破る、本物の力強い共闘の力をどうしたらつけられるのか、皆さん真剣に向き合っての発言でした。
 二番目の「路上を子どもたちに返す」では、自分たちの子ども時代との比較。今の子どもの現状。町づくりの在り方。それにどうコミットできるのだろうか。など、現実的な課題として話し合われました。
 三番目の「最高裁判所を「憲法の番人」として機能させるために」は、難しかったという感想。日本で違憲審査が行われていない現状への対応ですが、人事の問題が大きく立ち塞がっているのを感じました。最高裁のことを論じていて、「統治行為論」に触れていないのはどうかとも話されました。
 
■2月号のお薦めは
・実川 「認諾官僚たちに告ぐ。「ふざけるな」」   金平茂紀
・巻・青木 「政権の賃上げ政策への違和感」     片山善博
      でした。
 
◎ 練馬の『世界』を読む会、3月例会 の予定
 ●日 時 3月17日(木) 午後1時~4時
 ●場 所 光が丘図書館
 ●持ち物 雑誌『世界』3月号
 ○共通テーマ
 ・「ルーツを巡る旅、ヘイトに抗う道 第1回」   安田菜津紀
 ・「沖縄・半世紀の群像 第1回 川平朝清」     渡辺 豪
 ・「町工場vs.公安警察」               青木 理
 ・「維新を勝たせる心理と論理」           松本 創
 ● 連絡先 須山
           suyaman50@gmail.com
 
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小岩の『世界』を読む会・2月例会、zoomで、5名参加。

2022-02-21 18:08:18 | 日記

小岩の『世界』2月例会の報告

 2月17日(木)、午後7時より、小岩の『世界』を読む会・2月例会がzoomで開催されました。参加は、5名でした。

●第一テーマ・ダニエル・リード「FUN TO DRIVE?」
・トヨタは広告に一千億円使っていて、マスコミにはトヨタ批判は全く出てこないようになっている。
・電気自動車の普及は電力の需要の拡大を招いて地球環境に負荷を与えるだろう。
・クルマを所有する喜びから、シェアして、どう利用するのかという考え方に変わるだろう。
・テスラのイーロン・マスク氏の出自の国際性とトヨタの三代目という存在との差が出ているのでは。
・電気自動車を賄う電力を太陽光発電でカバーできないだろうから、そう簡単に全てが電気自動車に向かわないだろうというトヨタの幅広い対応が有効なのかも知れない。
・イーロン・マスクの興味は「ステラ」の電気自動車よりも「スペースX」の低高度人工衛星群によるインターネットの構想にあるのでは。それがイーロン・マスクの多様性ではないか。
・駐車場に駐まっているクルマが圧倒的に多いという状況は、クルマ社会の脱クルマへの転換を指し示すことなのかも。
宇沢弘文の『自動車の社会的費用』を読んだが、本号の除本論文や寺西論文を読む方がその内容を掴めるように思った。

●第二テーマ・今井博之「路上を子どもたちに返す」
・子どもと道路という観点から道路問題を考えたことはなかったので、面白かった。
・道路が子どもから疎遠なものになっていったことが、山や川の自然が疎遠になっていったことにつながっているんだ。
・子どもだけでなく大人の交流がなくなることとも繋がっている。
・「ボンエルフ」などヨーロッパの取り組みは社会全体で問題を解決する方向だが日本では考えにくい。
・交通安全教育か道路環境の整備かという視点が面白く思った。〔p.129〕交通安全教育の発想は子どもの能力を過大評価していて、正解は道路環境の整備だろう。
・車が優先されているが、事故責任としては罰則で歩行者を優遇していて、バランスを取っているのかな。
・都市圏では車なしで生活できるが、地方では車無しでは生活が成り立たない実態がある。・車にとって快適な道路網を作ることが、戦後日本の発展そのものになっていて、政治家はそれを手柄としてきたのだが、それと真逆の発想が提起されている。
・交通弱者に道路を返そうということか。
・戦後の政策によって、高速道路網など、地方の幹線道路も、歩道の整備も改善されて最悪の状態から見ると、良くなったといえるのではないか。
・かつては家の中などに子どもは居られなくて、自然に道路で遊ぶしかなかった。住宅事情が良くなった。
・イギリスで階層によって子どもの歩行者死亡率の差が最近になってぐんと大きくなったというのには驚いた。〔p.133〕
・コロナ禍でネットショッピングが盛んになって物流が盛んになって大きなトラック輸送のための道路網が重要視されることもあり、生活道路への要求とぶつかることでもある。

●第三テーマ・南彰「野党第一党に何が問われているのか」
・戦後一貫して野党第一党が抱えている問題、連合を巡る労組間の対立の問題、成田三原則〔p.62〕の問題が引き継がれているのは、その通りだ。
・世田谷モデルという解決方法が示されているが、それはかつて議会で質問王と呼ばれたような確かな権力の監視役としての批判精神を背景にもっての具体的な提案型の政治姿勢だ。
・「現実的」や「中道」の名のもとに無原則な現状追認に陥らないように注意することは確かに大切だ。〔p.64〕
・成田三原則はその通りだが、その三つは同じことの三つの側面かなと思えて、どうやったらいいのだろう。
・今の立憲は、昔の民主党と同じようなものになってしまって、下からの声に応えるようなことが中心でなくなってしまっているのでは。
・選挙互助会的な性格で、世論の風を読もう読もうとしていて、力を付けようとすることが出来ていないで、失敗しているようなことではないか。
・国民は安倍・菅から岸田へという疑似政権交代で満足してしまうような現状で、野党連合がそれを変えられるような力関係にはなっていなかった。
・一人区でもう少し迫力のある連携を進めたり、消費税5%にするなどの政策を前面に出すとかをしたら、自公の強い危機感にあったように、大きな変化を生む可能性があったのではないか。
・野党共闘が前進しそうだということを危機に感じるようなことが正面に出る選挙結果になったのでは。連合などがそれを最も強く感じていたのでは。
・今回の選挙の敗北の最も大きな原因を作ったのは、連合の会長の振るまいだった。
・宇都宮健児さんが、政権交代は50年かかる仕事だ、足腰を鍛える時期だと言っていたが、そうだと思う。政権交代は野党第一党の政党支持率が、与党第一党に迫らないと出来ない。だが、当事者の政党としては、政権交代を言わざるを得ない。
・政権交代は先のことなのに、野党連合が最大の目標であるような言い方は馬鹿なことではないか。
・労組との関係で野党第一党が過半数の支持を得ることになるとは思えないのに、労組の問題に関わっているのは、明後日のことをやっているようで空しく感じる。
・労組が野党支持だということが、愛知で見られるようにすでに幻想になっているので、小さなパイを野党で奪い合っているようなことになっている。
・若い人で自民党支持が高くなっていることこそが目を付けるべき問題点だろう。
・市民の願いを実現することに近づいていくためには、立憲が維新や国民の方に行ってしまわないで、共産、社民、れいわの方に行って改革勢力に付くことができるかが重要だ。
・維新、国民、立憲、共産、社民、れいわの全野党連合を作れる政策が出来ないと、与党には勝てないのでは。しかし、現状では参院選は、反共産の維新・国民と反維新・国民の容共路線とが野党間の闘いの場となりそうだ。これでは与党と向き合えないのでは。
・自民党の赤木ファイルに見られるような腐敗のひどさを見ると、自民党政権から変えるという点で一致しての左派が政策的に譲った政権交代を目指す共同を求めることが大切ではないか。

 などの意見交換でした。
・渋谷秀樹「最高裁判所を「憲法の番人」として機能させるために」は、時間切れで出来ませんでした。

◎2月号のお薦めは
■ 片山 ・「政権の賃上げ政策への違和感」       片山善博
■ 大塩 ・「日本の法曹養成制度は社会の変化に対応できているか」
                 ディミトリ・ヴァンオーヴェルベーク
■ 須山 ・「再審制度の改革はなぜ必要なのか」    鴨志田祐美
     でした。

◎ 小岩の『世界』を読む会、3月例会 の予定
 ●日 時 3月17日(木) 午後7時
 ●zoomによるオンライン開催
 ※ 参加希望者は連絡下さい。
 ●持ち物 雑誌『世界』3月号
 ○共通テーマ
 ・「沖縄・半世紀の群像 第1回 川平朝清」    渡辺 豪
 ・「維新を勝たせる心理と論理」          松本 創
 ・「身を切る改革を実行したいなら」        三木義一
 ・「原発とどう向き合うか?」           八田浩輔
 ●連絡先 須山
             suyaman50@gmail.com

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富岡の『世界』・2月例会は6名で。

2022-02-19 13:56:28 | 日記
富岡の『世界』を読む会・2月例会の報告
(郡山さんから)
 
 富岡『世界』を読む会・2月例会は、2月16日6人が参加して開催された。
 テーマは、『世界』2月号の
「特集1.クルマの社会的費用」から、
 ダニエル・リード『Fun to Drive?―トヨタと気候変動』
 飯田哲也『テスラ・ショック-モビリティ大変革と持続可能性』および
 鶴原吉郎『電動化が引き起こす自動車産業の「解体」と「再構築」』の三つの論考、そして
「特集2.日本司法の"独自進化"」から
 須網隆夫『取り残される日本の司法』
 ディミトリ・ヴァンオーヴェルベーク『日本の法曹養成制度は社会の変化に対応できているか』
 の二つの論考、合計5論考を取り上げ、話し合った。
 二つの特集ともに専門性が高く、テクニカル・タームを丁寧に読み解きながらの読書となった。
 
 特集1.クルマの社会的費用について。
 まず事実の確認。地球上のCO²排出量の24%が輸送機関が占め、その45%が乗用車である。その自動車が現在14億台稼働し、毎年1億台の新車が販売されている。これは、人類と地球の未來にとって「危険な光景」(リード)との指摘に納得。Hさんは、「このことは50年前に、宇沢弘文が先取り的に警告していたことだ」と紹介した。
 テレビコマーシャルでは、トヨタ自動車の脱炭素化・全方位戦略が喧伝されているが、トヨタが気候対策ランキングで最下位にあることをリード論文で知る。中・米・欧の自動車メーカーと新規参入企業が、極めて積極的にEV戦略を展開しているのに対して、世界トップメーカーであるトヨタ自動車の慎重さや曖昧さが際立っている。特集2の日本司法の"独自進化"という言葉を援用すれば、トヨタの全方位戦略はまた、日本自動車の"独自進化"といえるかもしれない。この独自進化こそが、飯田哲也のいう「半導体・家電・液晶・太陽光と次々に敗れ去った日本の、最大かつ最後の基幹産業である自動車産業の危機という"日本沈没"リスク」なのだろう。
 では、日本のEV化の課題は何なのか。Sさんは、EV化必至とする各論考に対し、疑問を提起した。まず、日本の再生可能エネルギー発電の進捗の遅れから、ただ自動車のEV化だけが先行しても、脱炭素化にとっては意味がないのではないか。また、EV化に対応した充電設備等のインフラ整備が遅々として進まず、しかもEV自動車が超高価格であることから、2030年目標到達は極めて困難だ、と発言した。EV化に積極的な中・欧・米各国政府および多国籍ファンドの最大の関心事は、気候変動対策も然(さ)る事ながら、産業・経済政策の面がより強いのではないか、との指摘もあった。また、南北格差や貧困問題をそのままにしてEV化を論じても、「先進国の富裕層のみのEV」となるのではないかとの懸念が示された。
 そこで問題は、EV化の必要性・重要性を肯定しつつも、本当にそれだけで脱炭素社会へ到達できるのか、ということだ。リードは「クルマの数そのものの減少が必要」だとし、究極的には「移動自体を減らすことが必要」と主張している。飯田もまた、「そもそも私たちは何のために移動するのか」という根源的な問いかけをした。コロナ禍のもと、私たちは移動・外出・旅行・海外渡航などの制限や自粛を求められた。メルケルが苦渋の選択として国民に訴えかけたように、移動制限は基本的人権としての自由権を侵すものであることは、自明のことである。では、「移動自体を減らす」ということをどのようにイメージすればいいの? 通勤・通学距離の縮小、買い物・遊興距離の縮小、エネルギー・食糧・貨荷物郵送距離の縮小などが、移動減少に寄与する。それらを実現するための社会経済政策コンセプトは、巨大都市・一極集中から地方中小都市・多極分散、店舗や遊興施設の広域大型から狭域小型、エネルギー・食糧・介護の自給自足などとなるのではないか。つまり脱成長=循環型社会・経済を構築していくことが、いま厳しく問われている。
 
特集2.日本司法の"独自進化"について
 日本の弁護士数は、人口当たりでみると1/2986(2020)で、欧州の1/6~1/3程度である。つまり弁護士は少ない。だから、参加者の身近に弁護士は少なく、その姿は漠然として定まらない。マイノリティの味方になって法に基づき正義を実現してくれる存在、という認識もあれば、米国TVのリーガルドラマの描く大企業をクライアントに「正義よりも利益」を追求する有名弁護士像まで、さまざまだ。ただ、日本社会が今よりも多くの弁護士を必要としていることについては、その善悪を超えて、そうなんだと納得してる、との発言があった。  
 須網論文『取り残される日本の司法』は、法曹界の国際交流について多くの事を教えてくれた。異なる裁判所が判例情報を交換する「裁判官対話」や欧州の憲法裁判所を中心に62か国の現職裁判官が作っている「ヴェニス委員会」と118か国参加の「憲法裁判世界会議」、そして韓国憲法裁主導による「アジア憲法裁判所協会」などである。これらの国際交流に、米・欧・韓の法曹界が積極的にコミットしているのに対し、日本の法曹は参加せず、消極的である。とりわけ、アジアの隣国、韓国法曹界の国際性には目を見張るものがある。このことは、韓国の慰安婦裁判や徴用工裁判で、国際人権条約が重視されていることと無関係ではない、との発言があった。
 ディミトリ・ヴァンオーヴェルべーク論文『日本の法曹養成制度は社会の変化に対応できているか―ベルギーから見て』は、ベルギーの法曹養成制度-大学教育5年・実務研修3年・資格取得後の継続学習-においては、「非法律系学習を弁護士業務に不可欠として重視し、多文化・異文化理解能力の向上を必須としている」と指摘した。国際化を「知的財産権」問題に集約する日本の法曹界との認識差を強く感じる。
 ガラパゴス化とはweblio辞書によれば、「 市場が外界から隔絶された環境下で独自の発展を遂げ、その結果として世界標準の流れからかけ離れていく状態を揶揄する表現」と定義されているが、日本のEV化を含めた気候変動対策も、日本の司法の在り様も、まさにガラパゴス化していると言わざるを得ない。『世界』2月号の二つの特集から、このことを痛烈に感じさせられた。
 
 
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