小岩の『世界』7月例会の報告
小岩の『世界』を読む会・7月例会は、コロナ感染急拡大の事情でzoomでのオンライン開催となりました。22日(金)に、4名の参加で行われました。
■ 第一テーマ・藤原帰一「抑止とその限界」
・核抑止が通常兵器での戦争を抑止できないことが、不安定化に繋がっていることを、抑止には限界があることを述べている。
・抑止論が破綻した現状で、抑止論に頼る議論が起きていることに、「奇怪な現象」と見ているが、それが日本などを覆っている。抑止論は根強い。
・抑止力にならなくても、戦争になれば軍事力は必要なので、軍拡論者にとっては、抑止力論はそんなに重要ではないのかも知れない。抑止力論に拘わらず軍拡論は成り立つのでは。
・軍拡論者の本音はそうだが、抑止力を軍拡の論拠にして国民に訴えている現状がある。
・軍拡は認められないので、抑止力論をロジックとして利用している。
・具体的には軍事費2%問題であり、敵基地攻撃能力問題、核共有問題で、議論されている。
・筆者は、パワーポリティクスのリアリズム(=現実主義)に反対して、リベラリズムの観点から批判している。あえて相手の土俵に上って論じてみて。現実主義が現実的でないのだと。
・〔p.84〕筆者の中国の通常戦力に対して通常戦力の抑止が必要だというような議論は疑問だ。
・そのための方策が軍事力の問題だと言っている訳ではないと思うが。
・ウクライナが九条の国だったら、世界は圧倒的にウクライナ支援になっただろう。九条の抑止力を重視すべきだろう。
・侵略の口実(=大義名分)を与えないということは、戦争を防ぐ大きな力だ。
・外交と国際司法と国際公法の確立が、本当の戦争を防ぐ力だろうが、まだ世界はその力を確立していない。先進国がそれを阻害している現実がある。
・民主主義だ、立憲主義だと国内で言っている国が、国際政治の場では、それを推進すべきだと動いていないどころか、妨害している現実がある。
※ 藤原さんを無視して(乗り越えて)、大切な本質的な議論が行なわれた気がしました。
■ 第二テーマ・松井芳郎「多国間主義の危機」
・日本は「多国間主義」から、「普通の国」、「単独行動主義」の方へ後退していると述べている。
・アメリカは、二つの間を行き来している。政権毎に。
・筆者は、国連(軍)中心をmultilateralism、 日米安保条約の日本やNATOをunilateralismと捉えるような把握をしている。かつて小沢一郎がmultilateralismを主張した。
・停戦後をmultilateralismで国連軍が動くことがあるが、戦争事態ではほとんどunilateralismが働いている。
・日本の「核共有」論は、NPT違反で、単独行動主義で国際的に認められないものだ。
・国連総会決議が力になった例を二つ挙げている。〔p.181〕〔p.184〕
・市民に何ができるか、ということで、それぞれの議会を動かすことも説いている。オバマの核の先制不使用を、日本の政府の動きでつぶしてしまったという逆の例もある。
※ 話しは、ウクライナ戦争の長期化、見通しの無さについての話しへ流れました。世界の経済状況の悪化など、困った状況が深まっています。
●7月号のその他のお薦めは
片山 ・「ロシア正教という要素」 寺島実郎
大塩 ・「沖縄半世紀の群像 牛島貞満」 渡辺 豪
でした。
◎ 小岩の『世界』を読む会、8月例会 の予定
●日 時 8月25日(木) 午後7時
●zoomによるオンライン開催
※ 参加希望の方は連絡ください。
●持ち物 雑誌『世界』8月号
○共通テーマ
・「メディアは自らを改革できるか」 南 彰
・「大学の解体、民主主義の解体」 駒込 武
・「新たな歴史を紡ぐアメリカ新世代の労働運動」 松元ちえ
●連絡先 須山
suyaman50@gmail.com