読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

100年前の世界一周

2010年05月06日 18時53分27秒 | ■読む
写真・回想録:ワルデマール・アベグ 文:ボリス・マルタン、日経ナショナル ジオグラフィック社刊
本書は、1873年にドイツ、ベルリンの裕福な家庭に生まれ、10代から写真を趣味とし、大学で法律を学び、卒業後は公務員となり、32歳で世界一周に旅立った人物の回想録を元にした著作です。旅立ちは1905年。正に20世紀の初頭に当たります。そして、回想録は80歳を過ぎてから書いています。
一方、ボリス・マルタンはフランス人で、大学で研究をする傍ら、執筆業、人道的活動に従事し、ユアニテール誌(「世界の医療団」発行)の編集長を務めているそうです。
本書は、ワルデマールの生い立ちから始まり、何故、世界一周の旅に旅だったのかを説明しています。当時は東回りの世界一周が一般的であったのに、ロシアの状況が不安定であったので西回りで旅だった事。旅は、アメリカ => 日本 => 韓国 => 中国 => シンガポール => インドを経てドイツに帰還します。
それぞれの国々の様々な写真が掲載されており、白黒に混じってカラーのものも多く含まれています。例えば、本の表紙に使われている写真は、ワルデマールが九州の別府で出会った17歳の芸者「コダマサン」と15歳の舞妓「ヨボキチ」ですが、その見事な発色にビックリです。
当時の日本で撮影された写真は白黒で、それに彩色したものでしたから、こんな見事なカラー写真が撮れていたとは驚きです。下記URLによれば、カラー写真は1800年代から開発が始まり1904年にフランスのリュミエール兄弟によって、最初のカラー乾板である「オートクローム」が発明され市場に現れた、とありますので、それを使用したのかと思われます。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%99%E7%9C%9F#.E3.82.AB.E3.83.A9.E3.83.BC.E5.86.99.E7.9C.9F
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沢山の収録作品はどれも興味深いのですが、サンフランシスコのクリフハウス・ホテルを写した写真では、そのホテルを見物しているドレスや背広姿の観光客が、海岸の砂浜に何も敷かずに座ったり、肩肘をついているのです。何となくオットセイが海岸で群れているようです。
ワルデマールは、この世界旅行で、取り分け日本の風土や文化に感じ入ったようです。本書によると、出発する際には、西洋文明の有為や常識を疑わなかったけれども、日本を含むアジアに見せられた彼は、インドから西洋文明の国々に帰還するにつれ憂鬱に落ち入ったに違いないと、想像しています。
評価は4です。

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