
浅田次郎著、中公文庫刊
幕末を舞台とした六編の短編集です。が、語り手が幼少時に、家族離散の末に、明治30年生まれの祖父に面倒を見られながら、夜ごとの祖父の昔語りを回想しつつ、物語を書いたとの設定だ。巧みな導入から、結末の後に加えた「作者」の語りが秀逸で、構成と展開が凝っている。
幕末故の時代背景を生かした作品だが、数百年に亘ってがんじがらめに束縛された侍の生き方を拒否して、人間らしい生き方に跳躍する主人公達に共感を覚える。また、「ご一新」時の粗野な官軍が、不気味な侵入者として鮮やかに描かれていて、説得力がある。
文体は、娯楽時代劇を見るような言葉廻しで映画化に最適と思える。どの作品も魅力的だが、私は「女敵討」が好みだ。実際の敵討ちを収拾した「日本敵討ち異相」で知った敵討ちの悲惨な現実と比べ、本作品は、世間のしがらみと自身の穏当の願いとの葛藤に苦しむ主人公の在り方が心を打つ。
「あざとい」の一歩手前で踏み留まった、凝った作品だ。
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○浅田次郎 => https://ja.wikipedia.org/wiki/浅田次郎
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評価は4です。
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