読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

白い人/朗読:平幹二朗

2010年01月10日 05時08分08秒 | ■聴く
遠藤周作著、新潮CD発行
受験勉強の最中に遠藤さんの作品「狐狸庵閑話」に熱中してしまい、困った記憶があります。遠藤さんの同級生が「兎に角」を「うさぎかく」と読んで笑われた話など、大変にユーモアに溢れたエピソードが詰め込まれたものでした。その後も「ぐうたらシリーズ」を読んでいましたが、氏の本領とも言うべき文学作品は、その後一冊も読んでいませんでした。5,6年ほど前に読んだ「深い河」が初めてでした。
今回は、氏が世に出た作品となった「白い人」を朗読で聞きました。この作品は1955年(昭和30年)に第33回に芥川賞を受賞しています。下記URLによると、氏はフランスへの留学から帰った後に、それまでの評論中心の活動から、小説家への道を歩むことなった転換点の作品のようです。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/遠藤周作
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さて、本作は、第二次世界大戦のフランスが舞台です。主人公はフランス人の父とドイツ人の母との間に生まれ、斜視であったこと、多情な父のために両親が不仲で、母に禁欲的な信仰を強要された事などにより、強度のコンプレックスと人格的な偏りが形成されます。長じてリヨン大学に入学しますが、学生生活の中で、これも強いコンプレックスを持ちながら強い信仰心を持った神学生ジャックと出会います。主人公は、その神学生の従兄弟の女性マリー・テレーズを誘惑し、両者に苦しみを与えます。しかし、マリーはジャックによる導きによって尼僧への道を歩み始めます。、やがて、ドイツ軍に占領されたパリで、主人公はゲシュタポに雇われる事になりました。そして、件のジャックがゲシュタポに検挙され拷問にさらされます。しかし、自白しないため、主人公はマリーを拘束し、ジャックに揺さぶりを掛けようとします。やがてジャックは・・・。
自らの歪んだ想念によって、ジャックとマリーをキリストに重ね合わせて、貶めようとする主人公は、ついにその想いを遂げることができません。その目に真っ赤に燃えたパリの街並みが目に入り・・・。
非常に重いテーマで、私自身の心に潜む邪悪な面がえぐり出されているようで、聞いていて胸苦しく感じました。人が自らの存在に疑問を抱く時に感じる苦しみや怒りが、世界の存在(神)への怒りに転じた時、他者に強いる悪業が描かれているように思います。ジャックに対する許しはあり得るのでしょうか。
評価は4です。

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