読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

動的平衡

2012年02月09日 20時14分09秒 | ■読む
福岡伸一著、木楽舎刊
大変分かり難いタイトルですが、作者はあとがきで以下の通り述べています。
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 生命、自然、環境-そこで生起する、すべての現象の核心を解くキーワード、それが《動的平衡》(dynamic equilibrium)だと私は思う。間断なく流れながら、精妙なバランスを保つもの。絶え間なく壊すこと以外に、そして常に作り直すこと以外に、損なわないようにする方法はない。生命は、そのようなありかたとふるまいかたを選びとった。それが動的平衡である。
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このことの実例を、作者は、人の細胞は、体外から取り込んだ栄養素を細胞に送り届け、個々の細胞は常に入れ替わっていることなどで説明しています。20世紀に花開いた科学技術を成立させる思想的な基盤を打ち立てた偉大な哲学者であるデカルトは、全ての生命現象も物理的な観点から説明が付く、としました。いわゆる還元主義です。しかしながら、今日の最先端の科学の知見に依れば、卵子が分裂して生命体として成長する過程は、分裂する細胞同士が何らかの情報伝達を相互にすることによって、同種の細胞が別々の役割を担う、異なった細胞へと分化して行く事が分かっているのだそうです。人工的に作り出したタンパク質をどのように混ぜ合わせても、こうした生命の営みは再現出来ない。それゆえ還元主義では説き明かせない分野があることを作者は指摘しています。
本書は、様々な生命活動にまつわるトピックを取り上げ、分かり易く解説し、その背後にある思想を伝えてくれています。非常に優れた啓蒙書であると思います。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/福岡伸一
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評価は5です。

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