読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

きのうの空

2010年06月01日 19時12分58秒 | ■読む
志水辰夫著、新潮文庫刊
志水さんの作品で3作目に読んだものです。清水さんの作品は、情感豊かで独特の雰囲気があります。本作は、2001年に柴田錬三郎賞を受賞しているそうです。、
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/志水辰夫
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さて、本書は10の短編で成り立つ作品ですが、作者が後書きで書いているように、著者本人が歩んできた戦後の時代を断片的に切り取っている。そして、作者の経験や思いを登場人物に仮託して濃密な世界を構築しています。
自意識に目覚めた不安定な少年記、異性を強烈に意識した思春期、家の経済状況で心ならずも陥った労働の日々。結婚して生まれた子や妻、母、妹。沢山の家族の情景が描かれています。私が取り分け心を打たれたのは3つ目の作品「イーッ!」です。多感で早熟な少年と少女が、恵まれない家庭環境の元で、互いに惹かれながら決して交わることなく、一瞬の輝きを交えて交差しただけで分かれて行く場面は、圧倒的な悲しみに溢れています。そして、最後の「里の秋」は、初老期の男が少年期を過ごした古里で、自らの過去を整理しつつ、かつて心を通わせた同級生の女性を思って、暮れゆく秋の夕暮れに、心を滲ませて行く哀切な文章で結ばれています。作者が結びの作品の題を童謡の「里の秋」としたのは、作者がこの童謡の出自を知っているからとの頃ですが、ネットを調べたら、下記のURLに背景が記されていました。
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URL => http://www.aba.ne.jp/~takaichi/douyou/satonoaki.html
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評価は5です。

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