読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

「かわいい」論

2010年11月17日 19時48分50秒 | ■読む
四方田犬彦(よもた いぬひこ)著、筑摩新書578刊
「かわいい」がテレビの画面で連発されるようになったのは、バブルの頃からだったでしょうか。何にでも「かわいい!」攻撃を仕掛ける、ノータリン風の女性に、頭がくらくらしました。しかし、この便利な言葉が次第に一般化してきて、従来とは明らかに異なる意味空間を形作ってきた事にぼんやりと気づいていました。
そんなことから本書が気になり読みました。著者は、下記URLによれば、誠に特異な経歴と研究分野をお持ちで、異彩を放っています。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/四方田犬彦
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さて、本書では、第一章で日本発の「かわいい」が世界に広まっている状況を説明すると共に、その現代的意味を提示しています。
第二章では、「かわいい」という言葉の来歴と、外国語の対応する言葉を検証しています。
第三章は、「かわいい」の意味空間が、年代や性別によって異なることが示されています。
第四章では、「かわいい」が美とグロテスクの間に位置することを説明し、第五章は、日本に特有の「縮み志向」との関係やミニアチュールに対する愛好との兼ね合いを論じています。
第六章では、未成熟であることに価値を見出す日本文化の特性との関係を、第七章では、女性誌を年代ごとに取り上げ、「かわいい」が意味する対象、概念が次第に変わってきたことを指摘しています。
更に第八章では、サブカルチャーの代表ともいえる「オタク」と「腐女子」の趣味の対象との関係を論じ、第九章では「かわいい」を具現化している日本発のキャラクターが、海外に広まる中で、日本文化に根差した地域性を失っていることを指摘し、エピローグでは「かわいい」が覆い隠している世界があり、その表出があり得ることを予言しています。
大変に野心的で実験的な論考であると思います。面白く読みました。最近増殖してきた変な日本語の出現を考察した書籍など、あったら面白いと思います。
評価は4です。

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