
湯谷昇羊著、新潮文庫刊
体温計でお馴染みのオムロンの創業者、立石一真さんの一代記。立石氏の生い立ちから、就職、起業、挫折、再生、復活などの苦闘・力行を、見事な筆致で描いている。立石氏の社会への奉仕、常に全力でニーズに応え続ける、そして、先を見越した製品開発の精神が、企業の活動を規定し、社員達を奮い立たせ続けた。その姿は、厳しい修行に挑み続ける修験者のようだ。
戦後に起業して成功したホンダ、ソニー、パナソニックなどの起業家たちと共通する面もあるものの、立石氏の奉仕の精神の程は無二のようだ。企業が社会の公器であることが一般に意識されたのは、然程前のことではない。立石氏は、自らの境遇と強い正義感に発する気高い精神によって、時代を遙かに超越した信念をお持ちになった。本書によればピーター・F・ドラッカー氏が立石氏に敬意を抱き親しくしていたとのこと。「B to B」を社業の軸足としているので、一般の消費者への知名度は低いが、自動改札機、ATM、交通管制システムなど、独創的で画期となった製品を開発していることからも、技術力の高さが窺える。
本書は、立石氏の長年に亘る力闘を描いているにもかかわらず、重複が最低限で見事な著述に終始している。そして立石氏への深い敬意が窺える名著であった。
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○立石一真 => https://ja.wikipedia.org/wiki/立石一真
○オムロン => https://ja.wikipedia.org/wiki/オムロン
○湯谷昇羊 => https://ja.wikipedia.org/wiki/湯谷昇羊
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評価は5です。
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