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一夜明けて、怒りが納まらない韓国国民の心を韓国各紙は伝えている。
例えば「中央日報」は「4勝3敗の日本と5勝2敗のキューバが決勝進出 …異変の大会」
と題して、韓国が6勝1敗で決勝に出れないルールの不備に怒りを表している。
「朝鮮日報」の見出しにも「日本に負けたとは思わない」とか「ルールが間違っている」と悔しさを隠そうとしない。
「日本に負けたとは思わない」という意味は今大会で日本とは三度戦って2勝1敗と勝ち越しているからだ。
更に同紙は風刺漫画で今大会の「異常なルール」を次のように皮肉っている。
≪WBC準決勝に進出した日本とキューバ戦の審判が困った顔をした漫画で、
【予選3敗の日本が決勝へ 】、
キューバ
「1回だけ負けた韓国が脱落して、3回負けた日本が決勝の相手って本当?」
審判
「ややこしいなあ」≫
又3月15日の同じ「朝鮮日報」は【口は災いの元】という題で、風刺漫画を掲載している。
≪日本
「“向こう30年は日本に手は出せないな”という感じで勝ちたいと思う」
メキシコ
「韓国野球なんて知らない」
アメリカ
「日本とメキシコだけ警戒」
「50球で仕留めてやる」
<他国代表チーム>
「韓国にむやみに威勢のいいこと言ったらおしまいだ。わかったな!!」 ≫
コラム欄では今大会の特別ルールや「疑惑の審判」に付いても手厳しく皮肉っている。
≪・・・略・・・ワールドベースボールクラシック(WBC)も米国がなければ不可能だった。ところで米国はまた無理をした。必ず優勝しなければならないという強迫観念に、あちこちでてこ入れしてみるや2つの国が1大会で3度も対戦するという笑えない寸劇が起こった。
シカゴ・カブスの外野手だったアンドレ・ドーソンは審判の判定に抗議して1000ドルの罰金を払ったことがある。小切手のメモ欄にドーソンはこう書いた。「視覚障害者のための寄付金」。4強から脱落した米国代表チームが罰金を払わなければならないのなら、小切手にこんなことを書かなければならないのではないか。「自業自縛の謝礼金」。
(李勲範(イ・フンボム) WEEK&(ウィークエンド)チーム長 ) ≫
確かに韓国の今大会のルールや審判に対する不満は良く判る。
最近ではスキー、スケート、古くは水泳の例で判るとおり国際試合ではルールを作った国が有利なのは当然。
今大会では全てアメリカがルールを作った。
しかし何はともあれ、日本は首の皮一枚で繋がっていた命をメキシコに助けて貰った。
当分はメキシコの方に足を向けては寝られない。
◇ ◇ ◇
★中央日報 2006.03.19 18:03:23
<WBC>4勝3敗の日本と5勝2敗のキューバが決勝進出 …「異変の大会」
第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は結局、‘異変の大会’だった。
19日(日本時間)の準決勝で、選手全員がアマチュアのキューバが、メジャーリーガー34人が布陣するドミニカ共和国を3-1で破って決勝に進出した。
米国がメキシコに敗れたことで奇跡的に準決勝に進出した日本も、第1・2ラウンドでともに敗れた韓国を6-0で破り、決勝に進んだ。
第1・2ラウンドでともに2位と、辛うじて残ったチームの間で優勝を争うことになったのだ。
キューバは第1ラウンドC組でプエルトリコに敗れて2位(2勝1敗)で第2ラウンド(8強)に進出、同ラウンドでも2勝1敗と同率のドミニカ共和国より失点が多く、2位で準決勝に上がった。 しかし準決勝でドミニカ共和国を破り、優勝をねらうことになった。
7試合で5勝2敗のキューバよりも成績の低いチームが日本だ。 日本は第1ラウンドA組で韓国に次ぐ2位(2勝1敗)、第2ラウンドでは韓国と米国に敗れたが、同率の米国・メキシコよりも3チーム間の失点が少なかったことで、準決勝に進出する幸運をつかんだ。 そして同カード3試合目で韓国を破り、4勝3敗という成績で決勝に進出した。
サンディエゴ=成百柔(ソン・ベクユ)記者 <carolina@joongang.co.kr>
★『スポーツ朝鮮』 2006/03/19 20:17
【WBCコラム】世にも珍しい試合方式で消えた優勝
三球三振させられなかったせいで、すごすごと帰り支度をしなければならないのか。2ストライク1ボールならまだ投手が優位だ。それなのにサヨナラホームランを打たれたかのような気分なのが悔しい。
哀惜の念に耐えられない。いや、張り裂けんばかりの憤りさえ感じる。6試合勝って、たった一度負けただけなのに。口惜しさを胸にしまい、WBC韓国代表チームが見せてくれたこれまでの苦労に拍手を送りたい。
アメリカが主導した今回のWBC。世にも珍しい試合方式のせいで韓国は最大の犠牲者となった。韓国は1次リーグ(アジアラウンド)で日本に3-2で勝った。ベスト8に入った2次リーグでもう一度戦って2-1で勝利した。韓国の2次リーグ成績は3勝。1組の1位として準決勝に進出。一方、日本は1勝2敗で脱落が予想されたが、2次リーグ最終日に米国がメキシコに敗れる波乱があり最小失点の原則によって漁利の利で準決勝に上がった。
ほとんどすべての国際大会では組を2つに分けて進行し、ベスト4が決まったらクロストーナメントで決勝に進む2チームを決める。しかし大会初めての年に無理に欲を出した米国は、同じ組のチーム同士を再び準決勝で戦わせる日程を採択した。2組の最強チーム、ドミニカ共和国に決勝戦まで会わなくて済むように、という意図以外に説明のしようがない。
その結果、韓国は準決勝で日本とまた戦うことになった。1つの大会で同じチームと三度も戦うという、失笑するしかないようなことになった。すでに二度勝った韓国だ。もう一度勝ってあたりまえ、負ければ脱落という滑稽なプレッシャーを抱えて三度目の対日本戦を行った代表チーム。
日本は韓国よりプロ野球の歴史が50年も長い。高校だけで約4700チームもある日本と、50前後しかない韓国では、基本的な資源からして相手にならない。だから客観的な戦力に優れた日本に二度連続で勝ったことさえも奇跡のような出来事だった。
奇跡は三度はやって来なかった。2次リーグ以後2勝2敗の日本が決勝でキューバと試合をすることになった。欲をかいた米国はベスト4にも上がれずに恥をかき、大会最大の波乱を巻き起こして興行を引っ張った韓国は悔しいことに帰り仕度をする羽目になった。WBCの制度的な矛盾が韓国野球100年史の快挙の足を引っ張ったことになる。それでも幸いなことは、韓国野球の隠れた底力は今や全世界から認められたのだ。
(キム・ナムヒョン特派員)
◆日本経済新聞 春秋(3/20)
1960年10月13日。ワールドシリーズ覇者を決める第七戦で、ヤンキースは同点の九回にサヨナラ本塁打を喫しパイレーツに敗れる。ヤンキースの4番マントルはピッツバーグからニューヨークまで帰る機中を泣き通した。大リーグ史に残る逸話だそうだ。
▼ワールド・べースボール・クラシック(WBC)で韓国に負けた夜、イチロー選手がヤケ酒で「荒れまくった」との記事を見て、マントルの話を思い出した。ところが野球は分からない。翌日には、失点率なる数字で0.01米国をしのいで奇跡的に準決勝に進み、昨日、WBC3度目の対決でようやく韓国を破った。
▼うれしい誤算の日本と対照的に、米国は当てが外れた。大リーグ野球が世界王者であることを証明すべく、決勝が「米国対大リーグ選手主体の国のいずれか」となるよう予選の組分けや日程、審判員の選定に工夫を凝らしたのに、決勝戦に出るのは日本と、米国の仇敵(きゅうてき)キューバ。出場する大リーガーは2人だけだ。
▼2分冊の大著『野球術』(G・F・ウィル)には、野球は最高の打者でも65%はダメな「失敗のスポーツで」「それゆえ人を謙虚な気持ちにさせてくれる」とある。野球発祥の本家本元にして唯一の超大国米国がWBCの結果を見て、謙虚な気持ちになってくれるなら、ありがたいではないか。
◆産経新聞 産経抄 平成18(2006)年3月20日[月]
野球の神様ありがとう。正直いうと野球には関心がない方だが、きのうのWBC準決勝で日本が韓国を破った瞬間、そんな言葉さえ浮かんだ。勝利に向け、これほど一丸となったチームは最近見たことがなかった。ベンチの緊張感がテレビを通してひしひしと伝わってきて息をのんだ。
▼曲折はあったが、とにかく王ジャパンはアジア野球の盟主の座を守った。韓国に連敗したあと「これほどの屈辱を味わったことはない」と唇をかんだイチローの笑顔が表していた喜び、それでも穏やかに「熱い声援のおかげでやっと勝てました」と語った王監督の誠実さ。美しいシーンだった。
▼とはいえここにたどり着くまでを振り返れば、言いたいことはやはりある。なんといっても米国の大会運営に対する不誠実さである。米国人審判による相次ぐ誤審や自国優遇の日程、リーグ分けなど、これは主催国としてのプライドが欠如していたとしか言いようがない。
▼それなのに米国は準決勝に残れなかった。他国をあなどっていたこともあろうが、大会に対する意識が低かった。その点、三試合目にして日本に敗れ、決勝進出は逃したものの韓国の戦いぶりは見事だった。
▼勝利への意欲を少しも隠さず、選手個々の力を比べれば劣ると言われながら、一時は日本を崖(がけ)っぷちにまで追い込んだ。それが日本チームを目覚めさせた、と言えなくもない。「国を背負って戦う」意識を吹き込み、皮肉な言い方をすれば日本に勝利を呼び込んでくれた。
▼いずれにしろ日韓の戦いは今大会のハイライトであろう。国際大会に欠かせないのは国の誇りを背負った闘志であることも、改めて教えてくれた。決勝戦では、韓国選手が見せてくれた闘志にも報いる試合を期待したい。