狼魔人日記

沖縄在住の沖縄県民の視点で綴る政治、経済、歴史、文化、随想、提言、創作等。 何でも思いついた事を記録する。

平和主義が戦争をもたらす 合成の誤謬

2007-12-21 06:40:34 | 普天間移設

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■風邪が吹けば桶屋が儲かる■
 
バターが品薄になったとテレビは報じていた。
 
牛乳が売れなくなり、折角絞った牛乳を廃棄処分するニュースを見てもったいないと思ったのも記憶に新しいが、牛乳の廃棄は牛乳の需要の低迷だという。
 
畜産農家が牛乳の生産調整を行い、それがバター不足の原因だという。
 
畜産農家が真面目に努力して牛乳の生産拡大した結果が、生産過剰、⇒そして生産調整、⇒めぐり巡ってバター不足とは皮肉なものだ。
 
まるで落語のネタではないか。
 
「風が吹けば桶屋が儲かる」を連想した。
 
連想ついでに遠い昔学んだ経済学の需要と供給、とか「合成の誤謬」といった経済用語を想い出した。
 
もう一つの真面目な努力の皮肉な結果の例、つまり「合成の誤謬」を、めったに見ないNHKの特集番組で見た。
 
先日のNHKスペシャル「ワーキングプアⅢ解決への道」で、
 
韓国政府が非正規社員の増加対策として、「非正規社員保護法」を立法した例を紹介していた。
 
その名の通り非正規社員を保護する目的の同法の趣旨は、
 
「企業は二年間非正規社員を雇用したら正規社員にしなければならない」という非正規社員にとってありがたい法律のはずだった。
 
だが、結果は逆であった。
 
大量の非正規社員を抱える韓国の有名百貨店は同法の施行の前に急遽300人もの非正規社員を解雇したというのだ。
 
番組では解雇された非正規社員のデモの様子を伝えていた。
 
個々に見れば非正規社員に有利なはずの法律も全体で見れば思わぬ結果をもたらすという点で、この例も「合成の誤謬」を連想させた。
 
同番組のテーマである「ウォーキングプア」や「格差社会」については脱線すると困るのでこのサイト「※NHKスペシャル「ワーキングプアIII 解決への道」の感想こはちら」に譲るとして、
 
ここでは「合成の誤謬」について述べてみたい。
  
 ■合成の誤謬■
 

合成の誤謬(fallacy of composition)とは、経済学用語でミクロの視点では正しくても、マクロの世界では、かならずしも意図しない結果が生じることを意味する。

冒頭の例で個々の畜産農家が牛乳の増産に努力することはミクロの視点では正しいが日本の経済全体というマクロの視点で言うと生産過剰が価格を下げ、結局努力の結果を廃棄する羽目に陥ることにもなる。

念のため昔学んだサムエルソンの『経済学』の合成の誤謬の説明を見ると次のようになっている。

「もしすべての農民が精出して働き、自然がこれに協力して、方策が得られるならば、農家所得の総額は下がるであろう」

個々の農家は精出して働いた結果が、所得の増加ではなく所得の減少という意図しない事実に終わる事を言うのである。

要約すると「一部分において真であることが、そうであることだけのゆえに、全体においても必然的に真であると錯覚することを合成の誤謬」と呼ぶ。

Fallacy of composition: A fallacy in which what is true of a part is, on that account alone, alleged to be also true on the whole.
 

ケインズは「貯蓄は個人を富ませるが、社会全体を貧困にする」と主張して倹約・貯蓄といった日本古来の美徳に水をさした。

ここで念のため断っておきたいが、昔のあいまいな記憶を頼りにここで経済学のウンチクヲ傾ける意図は無いし、そのため長々と「合成の誤謬」を解説してきたわけではない。

合成の誤謬は経済学のみならず他の社会学、特に「平和論」にも応用できると思うのだ。

■平和主義の「合成の誤謬」■

反戦平和といえば左翼勢力の専売のようにマスコミは喧伝するが、左右を問わず戦争を好む人はいないだろう。

反戦平和に固執したあまりに結局はそれが世界大戦の原因になったことを歴史は教えてくれる。

1936年、天性の侵略者ヒトラーがベルサイユ条約を踏みにじって独仏の中立地帯ラインラント進駐した。

フランスの安全はドイツによってのど元に匕首(あいくち)を突きつけられた状態になりながら、フランスは反撃のために立ち上がることをしなかった。

当時のフランスは現在の日本のような平和ボケ状態にあり、空想的平和主義が跋扈し戦争反対や、いかなる理由でも軍隊を動かすことには反対する運動が盛んだった。

フランス政府は反戦平和の国内世論に怯えてヒトラーの暴挙を拱手傍観していた。

同じような態度はイギリスにも見られ、このような各国の早期防衛に踏み切れない「平和主義」が、結局はヒトラーの世界征服の野望の後押しをする結果となった。

この辺の事情を小室直樹は「第二次大戦は『平和主義』の捲き起こした戦争である」と喝破している。

小室先生に言わせると「無防備地域宣言」に狂奔する平和主義者たちは「戦争愛好者」に見えるのだろう。
 

無防備平和条例:札幌市会総務委、全会一致で否決 /北海道

 「無防備平和条例」制定の直接請求について、札幌市議会総務委員会は10日、全会一致の反対で否決。上田文雄市長は市民約4万人の署名を重く受け止め、08年度に「平和事業担当」を新たに設置する考えを示した。

 同条例案の元となるジュネーブ条約追加第1議定書では、「無防備地域」を宣言するには、戦闘員や兵器などの完全な撤去など4条件を満たすことになっている。上田市長は反対理由について「(防衛政策に関する事務について)私の権限では4条件を満たすことができない」と述べた。【内藤陽】

http://mainichi.jp/hokkaido/seikei/news/20071211ddlk
01040188000c.html


毎日新聞 2007年12月11日

 わが国は平和主義の立場から「武器輸出三原則 」を掲げて事実上武器の輸出を行っていない。

戦争に繋がるとも思える「武器輸出」が実は自国の防衛に貢献するという論がある。

これもある意味「合成の誤謬」といえるが、これについては稿を改めて触れてみたい。

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