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「首相の犯罪」ともいえる「故人献金」については、テレビメディアは相変わらずスルーが続いている。
鳩山首相がテレビに登場する時は、やれ服装が夫人選定で高価なものであるとか、鳩山御殿が凄いとかおべんちゃら番組だけ。
麻生首相が自分の金でホテルのバーで飲んだのを庶民感覚がないと、叩きまくったのとは大違いである。
ところが、検察が関係者の事情聴取を始めるや、活字メディアが活発に動き出した。
「故人献金」をスクープした朝日を先頭に、全国五大紙のコラムが遂に全紙揃って「故人献金」を取り上げた。
各紙とも代表的コラムの筆者には優秀な記者をあてると聞く。
寸鉄人を刺す風刺の効いたコラムは記者の腕の見せ所。
大上段に構えた「社説」で取り上げるより、各紙の看板コラムで看板記者に斬られたほうがある意味インパクトは強い。
各紙の工夫を凝らした切り口で「故人献金」の問題性をえぐってみよう。
さて、思わぬ導入部からどのように核心に迫るか。
中には導入部に強引過ぎるこじつけも見られるが・・・。
◇
読売新聞 10月6日付 よみうり寸評
〈71%〉――奇(く)しくも同じこの数字が別々の二つの設問で出た。読売新聞社が2~4日に実施した全国世論調査が示した結果だ◆一つは鳩山新内閣の支持率で前回調査の75%からはやや下降だが、なお高い水準を維持して堅調だ。鳩山さん、大いに喜んでいい。もう一つは首相の資金管理団体を巡る偽装献金問題だ◆これについての首相の説明に「納得できない」が支持率と同じ数字なのだ。こちらは前回の69%より上がった。東京地検特捜部が捜査を始めた折でもあり、同じ高水準でも、これは無論喜べない◆国連総会に、両国国技館に、IOC総会にと大忙しで舌も滑らかに滑り出した首相だが、この問題となると歯切れが悪い◆「私の知る限りはもう話してある」「個人献金が少なく、分かったら大変だと秘書が思ったのではないか」というが、これを71%の人が納得していない◆「捜査に影響するから話さない」も通らない。むしろ率先して説明を果たすべきだ。今後、二つの71%はそれぞれどう推移するだろうか。
(2009年10月6日13時46分 読売新聞)
読売新聞 10月9日付 編集手帳
詩人の薄(すすき)田(だ)泣菫(きゅうきん)はフランスの日刊紙「フィガロ」に風変わりな広告を見つけた。「飼っているオウムの発音が悪いので、正確なフランス語の話せる人を家庭教師に雇いたい」。大正年間のことである◆鳥の言葉にさえ敏感なお国柄を称(たた)えたあと、詩人は随筆を辛口の一文で結んでいる。〈多くの代議士に狗(いぬ)のような日本語で喋舌(しゃべ)らしておいて、黙ってそれを聴く事の出来る日本人の無神経さがつくづくいやになる〉と◆岩波文庫「茶話」の一節だが、泣菫が今の世にあれば筆勢を緩めただろう。好き嫌いは別にして、鳩山首相はこの上なく丁寧な言葉遣いで知られる◆その丁寧な人が自身の献金疑惑では情理を尽くして語らないのはなぜだろう。東京地検は捜査に着手したが、首相は口をつぐんでいる。「疑惑はこうしてぬぐえ」と説明の手本を示すことで政権交代の意義を訴えることもできように、不可解である◆詩人が“狗のような”と形容した乱暴な物言いの政治家が当節、見当たらないのはありがたい限りだが、代わりに「セツメイズミ、セツメイズミ…」と繰り返す“オウムのような”首相が現れても困る。
(2009年10月9日01時11分 読売新聞)
毎日新聞 10月8日
余録:
プラボ・ヤズディーはアイルランドの交通警察には天敵といえる名前だった。何しろスピード違反や駐車違反を懲りもせず繰り返す。違反の記録は50件以上にのぼった。警察が追及に乗り出すと、その意外な正体が判明した▲「プラボ・ヤズディー」とはポーランド語で「運転免許証」を意味したのだ。交通警官はポーランドの免許証に書かれたこの言葉を人の名前と勘違いしてせっせと違反切符を切っていたのである。先週発表されたイグ・ノーベル賞で文学賞に選ばれたアイルランド警察の“業績”だ▲今年はパンダのフンの菌の研究で田口文章北里大名誉教授も受賞したイグ・ノーベル賞だ。そんな人を笑わせ、考えさせる研究に与えられる一方、アイルランド警察のようなおかしくも「イグノーブル=不名誉な」業績にも授与されてきた▲アイスランド金融危機をもたらした銀行経営陣の経済学賞選出もイグノーブル系だ。過去の経済学賞授賞例には資金操作にまつわる怪しい発明発見もあった。そう聞けば、もしや初の政治学賞に選ばれはせぬかと心配になってくる鳩山由紀夫首相の資金団体の「故人」献金問題だ▲何しろ亡くなった人の献金が報告されていたり、それら虚偽報告を削除したら中に実際の寄付者がいたりというこの間のドタバタだ。しかも虚偽報告の理由説明は何とも不可解である。だが告発を受け地検が参考人聴取を始めると、首相は捜査を理由に説明の口を閉じてしまった▲こと政治とカネをめぐる問題ではかつて秘書に責任を押しつける政治家を批判した首相である。国民の抱く不審には自らの言葉で答えるところに、一国の指導者の名誉はあろう。
産経新聞 【産経抄】10月7日
2009.10.7 02:36
強敵を破って南米初の五輪招致に成功した美酒に酔ったのだろう。ブラジルのルラ大統領は、3代続けて1年で首相が交代した日本の政治状況をこう皮肉った。「おはようとあいさつした首相とは別の人に、午後にはこんにちはとあいさつすることになる」。
▼記者たちは爆笑したそうだが、まったくもって恥ずかしい。鳩山由紀夫首相には「明日もまた会いましょう」とジョークで反論してもらいたいところだが、高支持率でスタートした鳩山首相に早くも暗雲が漂い始めた。
▼亡くなった人が首相の資金管理団体に寄付するという世にも不思議な「故人献金」問題が明るみに出たのは、衆院選前だった。選挙に影響が出てはいけないと東京地検は捜査を手控えていたようだが、ようやく参考人聴取に踏み切った。
▼首相は「公設秘書が個人献金数を多く見せかけるためだった」と釈明しているが、どうも釈然としない。有識者とおだてられている人の中には、虚偽献金の賄賂(わいろ)性は薄く、そんなに大した問題ではないとかばう向きもおられるが、これが自民党の首相だったら口を極めて罵(ののし)っていたことだろう。
▼首相は6年前、自らのメールマガジンで、「政治家は金銭に絡む疑惑事件が発生すると、しばしば『あれは秘書のやったこと』とうそぶいて自らの責任を逃れようとしますが、とんでもないことです」と言い切っている。因果は巡る糸車とはこのことだ。
▼ルラ大統領にまたバカにされないよう首相には、短期間で政権を投げ出さずにがんばってほしいが、間違っても捜査当局に圧力をかけないよう願いたい。人権擁護に熱心な千葉景子法相が、「政治主導」を錦の御旗に指揮権を発動し、捜査を中止させるシーンは想像するだにおぞましい。
日本経済新聞 春秋(10/7)
ツグミという鳥は、ほとんど鳴かないのだそうだ。秋からはとりわけ無口になるらしい。ひたすら口をつぐむ鳥だから付いた名がツグミ、と物の本にある。ひょっとしたら、今をときめく官邸のハトもそれをまねているのかもしれない。
▼鳩山首相の政治資金管理団体をめぐる献金問題について検察が捜査を始めた。亡くなった人からのカネまで収支報告書にぞろぞろ、という選挙前からの疑惑である。首相にはこのさい情理を尽くして説明してほしいものだが沈黙を決め込んでいる。「捜査に影響する発言は避けなければならない」との申し開きだ。
▼野党になった自民党は手ぐすね引いて待ち構えているという。このままでは臨時国会がスキャンダル追及で混乱しかねないし、せっかくの政策論戦もかすんでしまう。鳩山さんもそれは本意ではあるまい。逃げる黙るの政治家に世間が抱く思いは「よほど都合の悪いことでも隠しているのか」という疑心であろう。
▼かつて勢いあまって、検察の動きを「国策捜査だ」と難じたこともある首相だ。それがこんどは「捜査への影響」をタテに口を閉ざすとはいかにも苦しい。ちなみにハトは「クークー」と鳴くという。ツグミになったハトの心境は「苦苦」だろうか。そろそろ真相を洗いざらい打ち明けてラクになったほうがいい。
◆
朝日新聞が欠けているが、これについたはここ。⇒天声人語が「裏切り」?「首相の犯罪」小口献金も虚偽記載
【番外編】
岐阜新聞 ぎふ寸評 2009年10月 8日(木)
コラムは権力者や世相を、上手にやゆしたり茶化したり冷やかしたりするから受ける。それが民主党中心に政権交代してからは、何だかやりにくい。
◆国民の大きな期待を受けて誕生した政権だし、支持率も高いから下手な批判はできない。読者を敵に回すことになりかねない。誕生間もない政権の揚げ足取りも大人気ない。
◆ああ、読み間違いやら失言やらで、次々とネタを提供してくれた前首相の時代が懐かしい。(輝)
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岐阜新聞については「博士の独り言」さんが、報道「民主党不問」の闇 (10/12) で批判されているのでここでは省略します。
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