異論は受け付けない芥川賞作家目取真俊氏のブログが、珍しく読者の縁側さんの指摘に応じて事実誤認を訂正したとのこと。
そのコメントがこれ。
Unknown (縁側)
2009-10-01 20:23:35
狼魔人さま こんばんは
目取真ブログの記述訂正を確認いたしました。芥川賞作家としてのプライドからでしょう。ご指摘申し上げた点をすんなり受け入れていただきました。潔い面は認めねばならないでしょう。
さすがに異論ならともかく、明らかな間違いは潔く訂正に応じたのかと思いきや・・・ん??
訂正前の文章を保存してないので、訂正の箇所がよくわからないが、地の文章を読む限り事実誤認は見られない。
ところが、である。
「9・29集会」会場で配布された「アピール」に、当初の間違いが記載されており、それはそっくり訂正されないまま引用されているではないか。
つまり間違い箇所は依然として放置されたままになっているではないか。
「アピール」文は主催者が書いた文章なので勝手に訂正できないというなら、世人はそれ卑怯という。
意見の相違ならともかく、明らかな事実誤認を含む文書を、何の補足説明もないまま引用したら、これは引用者の責任である。
その事実誤認を目取真氏が承知しながら引用しているのなら、卑怯の上にさらに卑劣の言葉も添えておこう。
その事実誤認の部分はこれ。
《「集団自決(強制集団死)」の記述を削除させるための検定意見を付したことが明らかになった。》
同じ間違いを指摘をした縁側さんに従って訂正したのなら、この部分が間違いであることは承知の上で、そのまま引用したのか。
目取真氏のような沖縄の有識者とされる有名人のブログに、意図意的な間違いが含む文章が引用されているとは、読者は到底信じないだろう。
9月29日当日、開会の6時よりかなり前に会場に着いたが、その時はまだ明るく、パラパラ集まり出した参加者の間をぬってチラシを配る人が目立った。
そのチラシの一枚が目取真ブログに引用されている《「9.29県民大会決議」を実現させる県民集会アピール》(以後「アピール」と呼ぶ)であり、その裏に印刷されていたのが「アピール」の前に引用されている《「9.29県民大会決議を実現させる県民集会」式次第》である。
参考までに該当部分を「9.29民大会決議」を実現させる県民集会より引用する。
以下に集会の式次第と採択されたアピール文を紹介したい。
「9.29県民大会決議を実現させる県民集会」式次第
司会:玉城徳知(沖青協)
1.開会のあいさつ・・・・・・・・・・・・・中山きくさん(青春を語る会)
2.主催社代表あいさつ・・・・・・・・・山田君子さん(沖縄県老人クラブ連合会副会長)
3.メッセージ紹介・・・・・・・・・・・・・大城節子さん(沖婦連会長)
4.県議会議長あいさつ・・・・・・・・・高嶺善伸さん(県議会議長)
5.戦争体験者代表あいさつ・・・・・吉川嘉勝さん
6.各政党代表あいさつ・・・・・・・・・端慶覧朝敏さん(民主党)、赤嶺政賢さん(共産党)、新里米吉さん(社民党)、喜納政春さん(社大党)
7.労働者代表あいさつ・・・・・・・・・仲村信正さん(連合沖縄会長)
8.アピール文採択・・・・・・・・・・・・太田守さん(県PTA連合会会長)
9.閉会宣言・・・・・・・・・・・・・・・・・玉寄哲永さん(沖子連会長)
◇
「9.29県民大会決議」を実現させる県民集会アピール
2007年3月、文部科学省は高校の歴史教科書検定に際し「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である」とし、「集団自決(強制集団死)」の記述を削除させるための検定意見を付したことが明らかになった。
その検定意見に対し県民は怒りの声を上げた。「沖縄戦の事実をゆがめてはならない」という思いは、復帰後最大規模といわれる11万6千人余の県民大会につながったのである。
このような動きを受けて、文科省は執筆者による訂正申請は認めたものの、県民の願いである「検定意見の撤回」などについてはいまだ実現していない。それどころか、「検定意見の見直し」では、新たに「執筆者に守秘義務を課す」など、県民が求めた「検定制度の透明化」とは逆行するものとなっている。
しかも、文科省は今年、沖縄戦について「4月、アメリカ軍は沖縄本島に上陸し、ついに陸上の戦いも日本の国土に及んだ」と記述し、意図的に3月に起こった「集団自決(強制集団死)」を無かったことにしようとする教科書に「検定合格」を与えている。07年、連続して文科省に対し沖縄県議会をはじめとして多くの要請団が「検定意見の撤回、沖縄条項などの確立」を求めてきた。その要請の中心は3月に起こった「慶良間諸島の『集団自決(強制集団死)』」の記述をめぐる内容であり、このような教科書を合格させた文科省の責任は重いといわざるを得ない。
07年9月29日の「県民大会」を機に、多くの戦争体験者が重い口を開き、沖縄戦の真実を語り始めている。その声に真摯に耳を傾けることこそが、今必要なのである。
これまで政府・文部科学省が「審議会が決めたことには口出しできない」と「審議会」を隠れ蓑とし、県民の声に耳をふさいできたことを、これ以上放置することは許されない。
私たちは、連立政権が実現した今、「9.29県民大会決議を実現」させるために、再び県民の声を届けなければならない。そして、速やかに密室でなされた「検定意見を撤回」させ、二度と「沖縄戦の実相を歪める」ことが起こらないよう「沖縄条項」の実現を求めるものである。以上アピールする。
2009年9月29日
0.29県民大会決議を実現させる県民集会参加者一同
◇
問題の箇所はここ。
《「集団自決(強制集団死)」の記述を削除させるための検定意見を付したことが明らかになった。》
いまさら説明するまでもなくこのような検定意見はない。
明らかに引用されている「アピール」文が事実誤認をしているが、目取真氏に良心の欠片でもあれば、先ず実行委員会に「誤り」を指摘し、原文を訂正させた上で、自ブログも訂正すべきであろう。
原文の訂正が間に合わないというのなら、事情を説明して全文削除するのが作家の良心ではないのか。
原文をそのまま残すのなら、少なくとも補足説明で事実誤認の箇所を明らかにして然るべきであろう。
補足説明といえば「アピール」には外にも読者を意図的に誤解させる記述があるの。
そこで、引用者の目取真氏は補足説明を付すべきだと指摘し、次のように書いた。
同ブログの「9.29県民大会決議」を実現させる県民集会アピール」には、読者を誤解させる記述があるので指摘しておこう。
同ブログが述べる「2.29県民集会」とは「高校の歴史教科書」の検定意見を撤回せよという主旨であるが、「中学の教科書」とは一言の補足説明もしないまま、次のように引用している。
《 しかも、文科省は今年、沖縄戦について「4月、アメリカ軍は沖縄本島に上陸し、ついに陸上の戦いも日本の国土に及んだ」と記述し、意図的に3月に起こった「集団自決(強制集団死)」を無かったことにしようとする教科書に「検定合格」を与えている。》
「高校教科書」を問題にしているはずの引用文が糾弾しているのは、実際は「中学の教科書」の記述に関してであるが、一言もその説明がないので、
事情を知らない読者は問題の「高校歴史教科書」についての記述だと、ミスリードされてしまう。
同じ歴史を教えるにも中学と高校では自ずとその範囲が異なって当然であり、例えば中学の歴史で「戦時売春婦」のことを詳細に教える必要は全くない。
沖縄戦に関しても、高校の教科書でも異論のある「悲惨な集団自決」をわざわざ記述しなかったのは教科書執筆者の一つの見識であり、
これを敢えて省略した教科書が合格したからといって、文科省が糾弾される理由にはならない。 合格した教科書を使うかどうかには選択の自由があるはずだ。
引用文にある「中学教科書」を報じる沖縄タイムスの2009年08月05日付記事がこれ。
「政治的意図感じる」 つくる会教科書採択/教育関係者ら懸念【08月05日】
「集団自決」体験者も批判
沖縄戦時、慶良間諸島で起きた「集団自決(強制集団死)」について日本軍の命令や強制に否定的な見解を示し、南京大虐殺などの記述を「自虐的」と主張する「新しい歴史教科書をつくる会」が執筆した中学・歴史教科書(自由社発行)を横浜市教育委員会が4日、採択したことに、「集団自決」体験者や教育関係者から批判と懸念の声が上がった。つくる会の教科書は沖縄戦について「(1945年)4月、アメリカ軍は沖縄本島に上陸し、ついに陸上の戦いも日本の国土に及んだ」と記述。教育関係団体などが、同年2月の硫黄島、3月26日からの慶良間諸島の戦闘を指摘し、「事実に反する」と批判していた。
横浜市教育委員会の定例会を傍聴した琉球大学の高嶋伸欣名誉教授。訪れた約250人の市民の大半は会場に入れず、別室で音声だけを傍聴したという。高嶋名誉教授は、定例会では「教科書の実質的な教育効果や歴史的事実の内容について話し合われることはほとんどなかった」とし、「明らかに間違った記述のある教科書が採択されてしまった。歴史的事実を学ぶ『教育』とは別に、一定の思想を子どもたちに植え付けようという政治的な意図を感じる」と懸念した。
「身を切る思いで証言した体験者の思いを踏みにじる悲しい判断だ」。座間味島の「集団自決」体験者の宮城恒彦さん(75)は、声を落とした。「わざと慶良間を除外し『集団自決』の事実を消そうとする教科書。合格にした文科省、採用した教委の責任は重い。戦争美化の動きが社会全体にじわじわと広がっていることが怖い」と指摘。一方で、「県民の怒りの底流は続いており、全国的な理解も深まっている。今回の採択をしっかり問題視し、声を上げるべきだ」と訴えた。
2007年9月の教科書検定意見撤回を求める県民大会で副実行委員長を務めた玉寄哲永さん。沖縄戦の実態は「集団自決」の悲劇を隠しては語れないとし、「戦争できる国にしたい権力者と特定の政治思想を持つ集団が一緒になって、子どもたちにうそを教えようとしているのではないか」と不信感をあらわにした。
「集団自決」をめぐる教科書記述で、軍の強制性を明確にするよう求める要請書を先月末、教科書各社に送付した一人、教科書執筆者の石山久男さんは、「不正常な状況で審議されたとしか思えない」と批判。子どもと教科書全国ネット21は同日、採択の撤回を要求する談話を発表した。
県内採択なし
市町村教育委員会などによると、県内は来年度も現行の教科書を使用する見込みで、自由社発行の歴史教科書の採択を検討している自治体はなかった。
目取真氏が「中学教科書」を「高校教科書」と間違いやすいこの部分を、補足説明をせず敢えて放置してあるのは、意図的に読者をミスリードするつもりと取られても仕方ない。
沖縄版・言論封殺魔と言われたくなかったら、上記二点、つまり事実誤認の訂正と中学教科書との補足説明を早急にされることをお勧めする。
【おまけ2】
目取真ブログの事実誤認のおかげで
こんな無知なブログが増殖中!
⇒国を愛する子供を育てるってな~に
《歴史教科書から集団自決が消えることのないよう・・・
【追記】⇒講演会のお知らせ