沖縄タイムス社とJX通信社が実施した27日投開票の石垣市長選に関する電話世論調査では、自衛隊配備について賛成が反対を上回った。一方、住民投票を実施すべきだとする答えが「必要ない」よりわずかに高く出るなど、配備計画への関心の高さがうかがえる。新人で前市議の砥(と)板(いた)芳行氏(52)=無所属=は「合意のない配備は反対」とする一方で、4期目を目指す現職の中山義隆氏(54)=自民、公明推薦=は容認する立場だ。玉城デニー知事に対する支持と不支持は拮抗(きっこう)した。(記事中やグラフの数値は四捨五入で表記しており、合計が100%にならない場合があります)=1面参照
重視する政策
投票に際し、重視する政策を聞いたところ「経済対策」が30%で最多だった。「自衛隊配備問題」が23%、「教育・福祉、子育て政策」22%と続いた。「新型コロナ対策」「観光政策」は7%で並んだ。
投票行動とのクロス分析では、経済対策を重視すると回答した人の大半は中山氏を支持。一方、自衛隊配備問題を選択した人の大半は砥板氏を支持している。教育・福祉・子育てを選択した人の支持は割れた。
住民投票実施に肯定的
陸自配備・住民投票の賛否
石垣島への陸上自衛隊の配備の賛否を聞いたところ、「賛成」が43%で「反対」の34%を上回った。「どちらとも言えない」は24%だった。
陸自配備に関する住民投票を実施すべきかに関しては「行うべき」が43%、「必要はない」は41%でわずかに「行うべき」が上回った。「どちらとも言えない」は16%だった。自衛隊配備は賛成が多い一方、住民投票へも肯定的な意見が上回った。
自衛隊配備に賛成とした人の大半は中山氏、反対とした人の大半は砥板氏をそれぞれ支持し、配備への賛否で投票行動が割れた。
また、住民投票を行うべきとした人の過半は砥板氏、必要はないとした人の約8割は中山氏を支持する傾向が出た。
自民30% 無党派層44%
支持政党
支持政党は自民党が最も高い30%だった。共産党は7%、立憲民主党と公明党は5%、れいわ新選組と社民党は2%、日本維新の会は1%と続いた。NHK党と国民民主党は1%以下だった。一方、「支持する政党・政治団体はない」とした無党派層は44%に上った。
砥板氏は「オール沖縄」勢力の政党の大半を、中山氏は自民・公明支持層の大半をそれぞれ固めた。
無党派層の38%が中山氏を、31%が砥板氏をそれぞれ投票先に選んだ。32%は投票先について「まだ決めていない、わからない」を回答した。
支持と不支持が拮抗
玉城知事の評価
玉城デニー知事を支持するか聞いたところ、「大いに支持する」が30%、「ある程度支持する」が18%で、計48%が支持する考えを示した。一方、「全く支持しない」25%、「あまり支持しない」18%で、不支持は計43%。支持と不支持が拮抗(きっこう)する結果となった。
「大いに支持する」の約7割が砥板氏、「全く支持しない」の約9割が中山氏を支持した。知事への評価が市長選の支持動向にも表れた。
「どちらとも言えない」は8%だった。
(写図説明)陸上自衛隊の配備
(写図説明)陸自配備の住民投票の賛否
(写図説明)どの政党を支持するか
(写図説明)玉城知事の評価
★
石垣委長選は、保守系候補の一騎打ちで、アンケ―トの結果も分かり難い。
ただ、アンケートを実施した沖縄タイムスが「オール沖縄」を支援しておりデニー知事の支援者でもあるという事実を前提に検証すると、次のことが明確になる。
①自衛隊配備⇒中山候補は賛成、砥板候補⇒条件付きで賛成
➁支持母体⇒中山候補は自公及び保守層、砥板候補⇒「オール沖縄」及び自衛反対の革新層
➂デニー知事の評価、中山候補⇒全否定、砥板候補⇒評価する
自衛隊配備のような国防案件に条件を付けて、実行不可能な公約を掲げる砥板候補の言動を見ると、「辺野古阻止」を公約に掲げ反米軍と言う実行不可能な公約で県民を欺いた翁長前知事を連想する。
もはや「イデオロギーではなくアイデンテティー」の迷言で有権者を騙すことは不可能だろう。
また防衛協会の除名されるような人物が、「オール沖縄」に支援されたからには、本気で自衛隊配備に賛成のはずがない。
【おまけ】
「何としても尖閣を取りたい」中国の阻止訴える 石垣市議会きっての保守論客 自衛隊配備容認に理解求める
2021年12月26日 09:50有料
[「防人」の肖像 自衛隊沖縄移駐50年](40) 第3部 琉球弧の今 石垣島(下)
砥板芳行氏が漁船団の一員で視察した際の尖閣諸島・魚釣島=2012年8月、石垣市(砥板氏提供)
「中国の軍備拡大に対抗するため陸自配備が必要」と語る砥板芳行氏=21日、石垣市
軍備を拡大する中国との間で、領有権を巡り緊張状態が続く尖閣諸島。約170キロ南にあり、行政区域として管轄する石垣市は、不測の事態が発生すると最前線に立たされる。
「軍事施設がないと中国が『失礼します』と容易に入ってくる。備えが必要だ」。石垣島への陸自配備を容認する石垣市議会議員の砥板芳行氏(52)は、断言する。
市議会きっての保守論客だ。2010年に初当選し、3期目。議員になる前から八重山防衛協会入りし、青年部長を経て08年から事務局長を務める。安全保障問題に関する体系的な知識を得たのは、米国務省主催の国際研修プログラムに参加した経験が大きい。
日本青年会議所沖縄地区協議会の副会長だった09年、当時のケビン・メア在沖米国総領事の協力を得て安全保障に関するシンポジウムを開催したことが縁で、メア氏の推薦を受けた。
米国に約1カ月滞在し、国務省や国防総省の政府機関や、在沖米軍を管轄するハワイの米太平洋軍など訪問。担当者から沖縄を取り巻く安全保障の現状をつぶさに聞いた。
「尖閣を含めて先島諸島の安全保障環境が特に厳しくなると強調していた。中国の軍事力に対抗しないといけないことが、ひしひしと伝わった」
初当選の10年に尖閣諸島沖で、中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突する事件が発生。12年の国有化で、海域は一気に緊張が高まった。行政区域を預かる議員として譲れないテーマとなり、再三にわたり国へ実効支配強化を求めるなど、世論喚起に努めてきた。
中国に対しては「一党独裁で少数民族を弾圧しており怖さがある」と脅威を抱く。その上で、自衛隊配備の重要性を説く。
中国は台湾を挟み撃ちしたいとし「何としても尖閣を取りたいと考えている」と指摘する。専門家の見立てとして、日本との軍事力の差が5倍以上勝っている場合、中国が「打って出る」との分析を紹介。
ただ日米安保体制では及ばないとし「侵攻をためらわせるためにも配備が必要。日本の確固たる意思を示す必要がある」と力説する。
一方、軍事施設があることで標的の危険にさらされることに「背中合わせの面はある」と認める。
だが中国の覇権主義が「リスク要因」だと言い「島民自らの努力で取り除けず、非常にもどかしい。配備への理解を広げていくしかない」と腹をくくる。(八重山支局・粟国祥輔)=おわり