新基地建設作業が進む米軍キャンプ・シュワブ沿岸部。埋め立て工事着手に向けた動きが進む大浦湾側の海域(右)には、軟弱地盤が広がる=18日午前10時26分、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部(ドローンで撮影)
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辺野古代執行訴訟で沖縄県敗訴 埋め立て設計変更の承認命じる 地方自治体事務の代執行で初の判決
沖縄県名護市辺野古の新基地建設を巡り、国が玉城デニー知事に代わって沖縄防衛局の設計変更申請を承認する代執行に向けた訴訟の判決で、福岡高裁那覇支部(三浦隆志裁判長)は20日、国側の主張を認め、玉城知事に設計変更を承認するよう命じた。県側は判決文を受け取った。承認するまでの期限は翌21日から数えて土日除く3日後の、25日となった。従わなければ、国が地方自治体の事務を代執行する国内初の事例となる。軟弱地盤が広がる大浦湾側の工事が近く始まり、重大局面を迎える。
国が地方自治体を相手に起こした代執行訴訟は2度目で、判決は今回が初めて。県側は、1週間を期限に最高裁に上告できるが、代執行を止める効力はない。情勢は極めて厳しく、知事は承認の可否を巡って難しい判断を迫られる。
一方、国は軟弱地盤の改良工事に着手するものの、海面から深い部分では難工事が予想される。防衛省は米軍への提供までに約12年を要するとしているが、工費、工期ともに大幅に膨らむ可能性がある。大浦湾側での工事は今後も複数回の変更申請が必要とされており、現行の計画通りに進むかは不透明だ。
裁判では、知事が承認しないことが「著しく公益を侵害することが明らか」かどうかなど代執行手続きの3要件が争点だった。
県側は新基地反対の民意こそ「公益」などと強調し、代執行手続きの要件を満たしていないと主張していた。
国側は、承認を迫った国土交通相の是正指示が適法との司法判断が確定しても承認しない知事の事務は違法で、代執行以外で是正を図ることは困難と指摘。国の安全保障と普天間飛行場の固定化回避という重大課題に関わり「著しい公益侵害は明らか」とした。
変更申請を巡り、県は2021年11月、軟弱地盤の調査が不十分などを理由に不承認としたが、国交相は2022年4月に不承認を取り消し、承認を迫る是正指示を出した。県は提訴したが、2023年9月に最高裁で敗訴が確定。その後も勧告や指示に従わず、国は10月5日、代執行訴訟を提起した。
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失った「最後のカード」…窮地に追い込まれた沖縄・玉城知事 辺野古代執行訴訟で県側敗訴
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事を巡る国と県との法廷闘争は、9月の最高裁判決に続き、再び県側敗訴で決着した。福岡高裁那覇支部は20日、「民意」を盾に司法判断にあらがってきた県に対し、普天間飛行場の危険性除去が早期に実現せず「甚だしく社会公共の利益を害する」と断じた。玉城デニー知事は「最後のカード」を失い、打つ手がない状況で、「世界一危険」と言われる普天間飛行場の移設工事は大きく動き出す。
【写真】玉城知事、肺炎で26日まで療養 「辺野古」承認期限は25日
「多くの県民の民意に即した判断を期待していただけに極めて残念だ」。20日の判決後、玉城知事は姿を見せることはなく、池田竹州(たけくに)副知事が県庁で報道陣を前にコメントを読み上げた。 辺野古への移設工事は平成29年4月に始まったが、大浦湾側の埋め立て区域で軟弱地盤が見つかり、防衛省は令和2年4月、地盤改良に伴う設計変更を県に申請。玉城知事は審査を1年7カ月も引き延ばした末、3年11月に不承認とし、国との法廷闘争を展開した。 防衛省沖縄防衛局によると、5年間で辺野古崎の南側では計画の99・7%に当たる318万立方メートル(11月末時点)の土砂が投入されたが、軟弱地盤が見つかった北側の大浦湾岸では工事が進まず、埋め立てに必要な土砂投入は全体の15・8%にとどまる。 「行政の長なのに民意が最高裁判決を上回るという考えがおかしい」。ある防衛関係者はそう話す。設計変更を承認するよう是正指示を出したのは違法として、県が国に取り消しを求めた訴訟は、9月に最高裁で県の敗訴が確定。玉城知事は工事の設計変更を承認する義務を負った。 にもかかわらず、移設反対派が当選した直近3回の知事選や平成31年の県民投票で反対票が多数を占めたことを根拠に玉城知事は「民意こそが公益」として司法判断に従わなかった。 今回、高裁支部は判決の送達を受けた翌日から休日を除いて3日以内に承認するよう県に命じた。期限は今月25日だが、玉城知事が取り得る選択肢は限られる。 高裁支部判決を不服として県は上告することができるが、最高裁で県側が逆転勝訴するまで代執行は止められない。一方、玉城知事が司法の判断に従い承認した場合、知事を支持する「オール沖縄」などの反発は避けられない。承認せずに辞職し、知事選で改めて民意を問う選択肢もあるが「可能性は低い」(県議会関係者)という。 保守系の県議からは「承認しなければ行政側の瑕疵(かし)となる」との声も上がる。司法の判断に従わなければ、法治主義の原則を行政の長たる知事自ら踏み外すことになるとの批判だ。だが、辺野古移設に反対する「オール沖縄」の関係者は「沖縄は(本土復帰までの戦後)27年間もアメリカの人質になっていた。国益と地方の公益は違う」と強調し、あくまで「代執行反対」の立場を貫く。 沖縄の米軍基地は日米同盟の抑止力の要。辺野古移転は、抑止力の維持と普天間飛行場の危険性の除去を両立させる目的があるが、国の安全保障が沖縄の「民意」によって大きく左右される事態が続いてきた。 自民党県連関係者は玉城知事の心情をこう推察した。「行政の長としてやるべきことと、支持者から求められることが違う。知事は自己矛盾の中にいる。本人も苦しいだろう」(大竹直樹)
■「法治主義を軽視、民意を絶対視する風潮招きかねない」高井康行弁護士 行政は法律にのっとって行われなければならない。これが法治主義だ。法治主義の下では、法律の適用などに争いがあれば裁判で決着を付け、たとえ不服があっても裁判の結果に従うことが不可欠となる。 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画を巡る訴訟では、行政の長である沖縄県の玉城デニー知事が、民意を背景に裁判結果に従った行政を行っていない。 こうしたことが許容されるのであれば法治主義は成り立たない。法治主義を軽視し、民意を絶対視する風潮をも招きかねないと危惧する。近代国家の基本的価値観である法治主義や法の支配が確立されていなければ、民主主義も自由主義も存続し得ないはずだ。 民意の尊重は重要だが、行政の長たる首長は、民意の尊重にも限界があることを理解する必要がある。そうでなければ民主主義社会、自由主義社会の健全な発展は難しいといえる。
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12月20日発売の月刊willに『沖縄「集団自決」の大ウソ』が掲載されました。
月刊WiLL(マンスリーウイル) 2024年2月号 (発売日2023年12月20日) の目次
目次
グラビア 現代写真家シリーズ オーロラの奇跡 谷角 靖
朝三暮四 加地伸行
◎スクープ!
■和田秀樹(日大常務理事・精神科医)・須田慎一郎(日大OB・ジャーナリスト)…日大の病理
◎言論史に汚点?
■竹内久美子…言論弾圧(テロ)に屈したKADOKAWA
◎2024世界と日本はこうなる!
■飯山陽・島田洋一…ハマスvs.イスラエル 学者・政治家・専門家 世間知らずの暗愚ばかり
■髙山正之…目を覆いたくなるイスラムの男尊女卑
■門田隆将・平井宏治…中国が宏池会のパー券を買っている
■田村秀男・石橋文登・阿比留瑠比…政局を仕掛ける財務省は日本のディープステートだ
■髙橋洋一・平井宏治…米国に怒られた機密情報ダダ洩れ日本
■平井文夫…岸田オロシはともかく誰がいる?
■高市早苗…総合的な国力を強化! 「日本のチカラ」研究会
■ほんこん…高市さんしかおらへんやろ
■長尾たかし・松原仁…上川陽子は媚米で親米?
■氷川貴之…氷川政話「上川総理」なら中国はニンマリ
■武者陵司…世界経済は日米二強時代へ
■岩田清文[陸]・村川豊[海]・福江広明[空]…ウクライナ イスラエル 台湾 外誌が予測「日韓とも核保有を検討する」
■峯村健司…安倍晋三「台湾有事は日本の有事」誕生秘話
■マックス・フォン・シュラー…日本はいまだ仮想敵国
■佐々木類…トルコからテロ支援者と名指しされた「川口クルド」
◎死地からの脱出
■岩田温…岩田温、只今帰還しました
附高坂正堯の外交に学べ
◎七月都知事選
■澤章…消しても再燃する小池百合子都知事「学歴詐称」
◎8割おじさん西浦がまた暴言
■掛谷英紀…ワクチンがなければ36万人死んでいた
◎沖縄
■江崎孝…「集団自決」の大ウソ
◎池田大作死去!
■溝口敦…私がみた池田大作の本名
■乙骨正生・長井秀和…池田大作「女性問題」が出てくるかも
◎樋口季一郎をマンガ化!
■東雲くによし…初・巨編マンガ 北海道を守った男 樋口季一郎
◎シリーズ「俗論突破」⑨
■小倉健一… 川勝知事はなぜリニア妨害を続けるのか
◎グラビア
現代写真家シリーズ…谷角靖「オーロラの奇跡」
◎エッセイ
■小名木善行…山本条太郎と満洲大豆
■古田博司…《たたかうエピクロス》カール・バルト『ロマ書』にみる、エロスの秘かな深淵
■西岡力…《月報 朝鮮半島》韓国・保守の救命ボート? 李俊錫新政党の衝撃
■馬渕睦夫…《地球賢聞録》2024年の展望 トランプ・プーチン「反グローバリズム」の勝利
■中村彰彦…《歴史の足音》女のパワハラ騒動「鏡山事件」から三百年
■石平…石平が観た日本の風景と日本の美
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