「殺人の追憶」の方が傑作だと思うけど、ポン・ジュノ監督の記念碑的作品であることは間違いない。
半地下と天上と本当の地下をこんなにもわかりやすくコンパクトに描かれちゃ文句の言いようない。おバカなアメリカ人にも理解できるみたいで沢山の賞を獲得しているようだ。
「万引き家族」も同じ底辺の生活を描いていたけど、こちらの作品は分かりやすく金持ちに寄生しながら抜け出そうとする家族の物語にしているところが、文化を共有している隣国ではあるが根本的に違う。日本人のメンタリティとして、公の物や名前の無い物からの搾取(ちょろまかし)に関しては比較的罪の意識は低いが、韓国人は違うようだ。持てる者から吸い取ることに恥とか罪とかの感覚は無いみたい。排除した運転手に対しての同情は、弱き者への連帯感なのか。
血を欲しがる民族なのは歴史が証明しているし、優れた韓国映画にも血なまぐさいシーンは多く登場するけど、あそこまでの恨の意識があるなら自分で仕事して立身出世しろよとも思うが、そう出来ないあの国の背景があるのだろう。そこは隣国民であってもたやすく理解できない溝だ。
ポン・ジュノの面白さはシリアスな話でありながら、気安く笑える軽さを備えていることだと思う。人の人生はどんなに苦しくともずっと泣いたり怒ったりしているわけじゃ無いから、間の抜けた瞬間に起こる人間らしい滑稽さを見抜いているなといつも感心してしまう。
チョッピリ泥臭さが無くなった分、西欧人にもアピールできたんだと思うけど、もっともっと家族を描いて欲しい監督だ。
蛇足のようだが、「漢江の怪物」でもソン・ガンホの末娘が死んだけど、今回もヤッパリ同じく娘が殺されたな。
何か意味でもあるんだろうか。