春夏のドラマが稀にみる不作で今年の連続ドラマはどうなっちゃうんだろうと思っていたけど、秋ドラマが充実していたおかげでどうにか形がついた。
配信系のドラマも合わせて21本の連続ドラマを最後まで観たうえで、記憶に残る作品5本を紹介して今年の決算としたい
「silent」
けっこう膠着している日本のテレビドラマ界に現れた救世主になれるだろうか。そんな期待を膨らませてくれたのが、新人脚本家生方美久の登場だ。こんなに心揺さぶる脚本を書ける人はどんな感じだろうかと思えば、助産師の経験があるシャイな女性だった。いつかその経験を生かした医療ドラマも観てみたいなと思う
毎週このドラマに会うのが待ち遠しく、そんな気持ちにさせてくれた特別な作品となった
「鎌倉殿の13人」
やっぱり三谷幸喜は上手いなと感心した一年。歴史人物オンチのわたくしでも主要キャラが理解できたし、鎌倉幕府がどのように立ち上がって武家社会が根付いていったのかが分かりやすく描かれていた
大河ドラマならではの豪華な配役が過不足にならず随所で輝いていた。一年という長い間中弛みも無く引っ張っていく力強さは流石NHKの看板番組だなと思う
「妻、小学生になる」
ベースの物語がファンタジックであるから、実写ドラマにした時どれだけ真実味をもたらせられるかが成否のポイントになる。アラフィフの主婦が小学生の身体で動き回るわけだから、漫画やアニメではやれても実写では難しいだろうと思っていた。その難題を毎田暖乃が見事な演技で解決してくれた。彼女のドラマ史に残る名演技無くしてはこのドラマは成り立たなかった。今後も安売りすることなくしっかりと女優の道を歩んで欲しい
「僕の姉ちゃん」
黒木華と杉野遥亮の姉弟がいい距離で交差する温かなドラマだった
シニカルな毒舌を吐く姉ではあるが、その視点はユニークであり結構暖かみもあったりする。謎の部分も多くて不思議ちゃんな姉を慕うように佇む弟が如何にもな雰囲気でほのぼのとさせてくれた。特に起伏のあるドラマチックな出来事は起きないけど、肉親にしか表現できない空気感が魅力的だった
「カムカムエブリバディ」
朝ドラ史上初のヒロインが三代にわたり変わってゆくという挑戦的な作品だった
戦前戦後現代に渡り上白石萌音、深津絵里、川栄李奈の物語が展開されてゆくのだが、縦の線はつながっているけれどそれぞれのパート毎に違う人間関係があり、お話を膨らませてくれる。王道のヒロイン一代記も骨太の設定があれば見応えあるけれど、市井の庶民が小さな世界で人生を全うする姿を半年間観せられるよりリレー形式の方が楽しめることを実証した
個々の優れた仕事について
プロデュース・演出
村瀬健・風間太樹「silent」
佐野亜裕美・大根仁「エピルス」
脚本
生方美久「silent」
主演女優
奈緒「ファーストペンギン」
主演男優
小栗旬「鎌倉殿の13人」
助演女優
毎田暖乃「妻、小学生になる」
助演男優
杉野遥亮「僕の姉ちゃん」