恋愛・純愛小説の古典。
表題作は、幼き頃から好きだった女性を一生思い続けて年老いる男の話です。
純粋すぎて気持ち悪いくらいの潔さ。
なぜ気持ち悪いかと言えば、生産性がないのからでしょうね。
水清ければ魚住まずと言いましょうか、見ている分には美しいのですが、そこには幻想しかないのです。
他に2編が納められていますが、『大学時代』は面白く読めました。
ラストが、ジッドの『田園交響楽』みたいにヒロインの自殺で終わるのは、ヨーロッパってそんなに息苦しい社会なのだろうかと疑問を抱いてしまいます。
全編に流れる都会と田舎、町と自然の隣り合った雰囲気は、古き良き時代の風景が目に浮かび、詩情豊かな感性をより光らせることとなります。
現代的に言えば幻想的美少女小説とでも言うのかな。