ウイルスの話かなと思って読み始めたら、生命の神秘を思い知らされました。
DNA遺伝子の話から、動的平衡の話へと移っていきます。なるほど、生命はエントロピー増大の法則に逆らっているのではなく、先回りして自分を解体することにより、その流れの中に恒常性を維持しているのですね。だからこそ、宇宙に存在できるという目からウロコでした。
それにしても、著者は、すごく文才があります。文才がありすぎて、途中で、もう良いから科学的な話に移ってよと思うこともあります。
小説家の久美沙織が、生物学者の書く文章が一番上手だ、表現もさることながら小説家みたいに破綻がないとどこかに書いていましたが、こういうことなんだなと思いました。
生物は、波打ち際に建っている砂の城だが、その形は変わることはない。砂の一粒一粒はくずれて流されていくが、別の一粒がそれに替って形を維持する。そして、時が経つと、一粒足りとて、最初からあった砂粒はなくなる。
これが動的平衡です。