
――国王ルイ十六世の首を刎ねた男が副タイトル。
死刑執行人の家族は、忌み嫌われ、一般人とは結婚できず、まともに物も売ってもらえず、子どもは学校にも通えない虐げられた境遇で生きていました。
そんなサンソン家の4代目であるシャルル-アンリの物語です。シャルル-アンリが生きた時代は、斬首からギロチンへ移行していく時代であり、フランス革命や恐怖政治により、色々な事情・場面の処刑があった時代でした。ルイ十六世やマリーアントワネットの首を撥ねたのは彼です。
特に国王ルイ十六世は、残虐な処刑を廃止し、出来るだけ苦痛が少ない死刑を望み、ギロチンの導入に寄与しています。ギロチンの刃の斜め構造は彼の発案であったと言います。そんな彼を敬愛していたシャルル-アンリの苦悩は凄まじいものでした。彼を処刑したあと、カトリック禁止の時勢で潜伏している司祭を秘密裡に訪ね、国王のためにミサを開いています。それは命がけの行いでした。
また、革命を望み、処刑人も一般人と同等に扱われる世を望んでおり、出来うるなら死刑のない世界を夢見ていたのです。(処刑人の家は、人の体を熟知しているので医業を副業としておりかなりの稼ぎになっていたようです)
上が出した判決に忠実に死刑を執行するにしても、そのプレッシャーは想像を絶するようなものでした。革命時に処刑台に上がってきた若者が強がってシャルル-アンリの代りにギロチンを操作し、生首を手にもって掲げようとして倒れ、そのまま亡くなってしまうエピソードからもそのことが伺えます。
著者は、文才があるらしく、ドラマチックな描写は小説を読んでいるようで楽しく感じました。
そういう情けがあったんですね。
かのバルザックも、3000人近くを処刑したサンソンに関する回顧録を書いてますが
とても興味深い一冊だと思います。
人を苦しませない仕組みが、逆に多くの無実の民を処刑する。
更に、敬愛するルイ16世の首を自らの手で切り落とす。
侍の切腹も潔いですが・・・
>ギロチンの斜め構造に... への返信
そのバルサックの作品を翻訳したのが著者なのです。
日本の切腹との比較もされていて、成功率の違いなども考察しています。