フェンネル氏の奇妙な生活

気付いた世界の中の小さな出来事と水彩画と時たま油絵と思いついたことを爺さんが一人語りいたします。

parlez moi d'amour

2009-01-14 18:35:52 | Weblog
パンプの酸素補給が口に通した管から鼻のほうへ軽減されたから口が自由になった。だけど、パンプは、しゃべらない。みんな待っているのに。その一言が聞きたくたて。11日間も昏睡してたから口もリハビリしないとうまく動かないのかな。目はしっかりとしてきた。口で言うより手のほうが早いのか手は、しきりに動かす。この手がやっかいなんだから。回復すると点滴だろうが、酸素だろうが、ひっこ抜きますから。看護師さんが「てをどうしますか」と言うと、みんな決まって「まだ括っといて」というのがおかしかった。
みんなが期待してるんだから、はやく聞かせてよ愛の歌を・・・と気持は急くけどパンプは、まだ、しゃべりたくないらしい。午後7時ごろ看護師さんがは入って来て検温と血圧として点滴をしてたりしたら「こまった」と大きな声でパンプが言った。「こまった」が第一声だった。状況がわかっているみたいな一言に看護師さんもマーチンも笑っていた。「今日から、栄養の濃い点液になったから、先生がソケイ部からカーテルで入れてますので、パジャマのズボンをはかせましょうか」と看護師さんが体を横にしてズボンを穿かせようとすると「まぁ、いや、こんなことをして」と「いたたた」と言った。いつもの調子が戻った。「ご家族に大事にされてますね。よく分かります」とにこにこしながら看護師さんが言った。普通にしてるだけだから大事と言う言葉がピンと来なかった。でも、いろいろな人たちを見てきている人の言葉だからと思って「ええ、まぁ」とだけ答えて笑った



            岡本弥太

とほくの峠から あいさつした母のように
   なつかしい瑠璃雲である
 あのこと      あの人たちとの間
虹さえ帯びて 美しくたたへている。


もう聞かれないと思っていたパンプの声が瑠璃色に思えた。「こまった」か・・・・・。
コメント (3)
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