アイドル論資料、「ソロこそがアイドル本来の姿」往年のアイドルはなぜあんなに輝いていたのか
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42066
大の音楽好きで知られる、タレントのクリス松村さんが、今年、独自の視点からアイドル論をまとめた(『「誰にも書けない」アイドル論』、小学館新書)。
クリスさんは、1970年代に山口百恵やキャンディーズなどの曲に出合って以来、アイドルを応援し続けて、その変遷をずっと見守ってきた。
本書でも随所に70~80年代に輝きを放ったアイドルへの深い愛を語りつつ、ともすれば売り上げ至上主義に陥りやすい昨今のアイドル業界についても言及している。
アイドルのあるべき姿は、いかなるものか。ご本人に話をうかがった。
アイドルは「お人形さんでいい」
──アイドルが輝いていた時代を、71年から89年までと限定されていますね。
クリス松村氏(以下、敬称略) もちろん今でもアイドルはたくさんいますけど、私が、この本でアイドルとして取り上げたかったのが、主に70~80年代に活躍された方々ということです。彼女たち、あるいは彼らのほとんどは、ソロの歌手です。グループといっても、せいぜいキャンディーズやピンク・レディーのように2~3人までで、メンバーそれぞれが個性を放っています。
その頃は、お茶の間のテレビを家族全員で見るという時代でしたから、彼女たちは、世代を超えて万人に愛されるアイドルでした。今でこそ、ご当地アイドルとか、グラビアアイドルとか、ジャンルやカテゴリーが細かく区切られていますけど、アイドルというのは、本来、幅広い層に愛される存在だと思うのです。
そういう意味で、アイドルが輝いていた時代を、70~80年代としました。
──アイドルは「お人形さんでいい」と、明言されています。
クリス松村 私はそう思っています。プロである大人たちが、その子の魅力を最大限に発揮させるべくプロデュースする。それがアイドルの魅力の磨き方だったのではないでしょうか。作詞家の阿久悠さんは、アイドルが自分から「バラードを歌いたい」と主張すると、「それは周囲のスタッフが成長具合を見て決めることで、本人が決めることじゃない」とおっしゃったそうです。
──アイドルは、自分を押し隠さないといけないということでしょうか。
クリス松村 例えば小泉今日子さんは、「お人形さん」的なアイドルから大きく逸脱することなく、でも髪を勝手に短くするとか、ちょっとだけ自分の意志を出して、ファンに支持されました。それも、自由にやっていたのではなくて、制約があるから、面白いんだと思うんです。
それが今は、戦略かもしれないですが、アイドルが私生活をブログなどでたくさん見せちゃってますからね。
80年代までは、ほとんどのアイドルは寿命が短かかったんです。松田聖子さんや中森明菜さんや小泉今日子さんみたいに、長く活躍される人は少なくて、アイドルの活動期間は、基本的には2~4年でした。「お人形さん」でいられるのが、そのくらいの時間だということでしょう。一瞬の輝きを放って消えていくのもまた、アイドルの定めでした。
アイドルをやめてから、女優やタレントとして芸能界の仕事を続ける方は多いですけどね。
松田聖子さんは、今もステージではミニスカートをお履きになって、アイドルとして求められる姿を演じきられてますよね。まさに永遠のアイドルです。
ニューミュージックが支えたアイドル黄金時代
──アイドル像の変遷も詳しく書かれています。特に80年代前半に起きたことに紙数を費やされていますね。
クリス松村 その頃にアイドルの歴史にとって、重要なことが起こったからです。厳密には、70年代末から80年代前半にかけてですね。
70年代は、レコード会社主導で曲を提供する、いわゆる「歌謡曲のアイドル」だった時代でした。ところが78年にキャンディーズが解散し、翌年には山口百恵さんが婚約を宣言、そしてピンク・レディーの人気凋落と、アイドル界は寂しい状況になりました
その状況を打ち破り80年代のアイドルたちを支えたのが、ニューミュージック界の方々です。松任谷由実さん、中島みゆきさん、チューリップの財津和夫さん、山下達郎さん、元はっぴいえんどの大瀧詠一さんや細野晴臣さんなどです。
彼らには70年代から熱心なファンがいましたが、他人への提供曲も含め、必ずしもヒットには恵まれませんでした。それが80年代に入ると、アイドルに提供した曲も、彼ら自身の曲もヒットしだします。
──当時も、その変化を実感されてましたか?
アイドルをやめてから、女優やタレントとして芸能界の仕事を続ける方は多いですけどね。
松田聖子さんは、今もステージではミニスカートをお履きになって、アイドルとして求められる姿を演じきられてますよね。まさに永遠のアイドルです。
ニューミュージックが支えたアイドル黄金時代
──アイドル像の変遷も詳しく書かれています。特に80年代前半に起きたことに紙数を費やされていますね。
クリス松村 その頃にアイドルの歴史にとって、重要なことが起こったからです。厳密には、70年代末から80年代前半にかけてですね。
70年代は、レコード会社主導で曲を提供する、いわゆる「歌謡曲のアイドル」だった時代でした。ところが78年にキャンディーズが解散し、翌年には山口百恵さんが婚約を宣言、そしてピンク・レディーの人気凋落と、アイドル界は寂しい状況になりました
その状況を打ち破り80年代のアイドルたちを支えたのが、ニューミュージック界の方々です。松任谷由実さん、中島みゆきさん、チューリップの財津和夫さん、山下達郎さん、元はっぴいえんどの大瀧詠一さんや細野晴臣さんなどです。
彼らには70年代から熱心なファンがいましたが、他人への提供曲も含め、必ずしもヒットには恵まれませんでした。それが80年代に入ると、アイドルに提供した曲も、彼ら自身の曲もヒットしだします。
──当時も、その変化を実感されてましたか?
クリス松村 レコードがだんだん売れなくなったんです。70年代のアイドル曲は、20万枚売れてもベストテンに入らないことがあったのに、80年代後半になってくると、1週間で数万枚売れれば1位を取れてましたから。
事実だから言わなきゃしょうがないけど、アイドルの曲ばかりがチャートを賑わしている時代は、音楽全体が売れなくなるのではないでしょうか。
私は86年には、芸能事務所に勤めてマネージャーもやっていましたが、レコード会社から「もうシングル盤はやめようか」という声が出るくらい、業界は追いつめられていました。
そこで思い切った手段を打たなければならなかった。
──その手段とは?
クリス松村 おニャン子クラブです。素人同然の子を次々とデビューさせて、レコードに特典を付けて売りました。
あの時代としては、おニャン子の売り方が間違っていたとは思いません。ただ、レコードを売ることばかり考えているから、肝心の曲そのものが記憶に残らないんです。いい曲が本当に多かったのに、残念です。
また、この頃からアイドルがピンポイント型になった影響も大きいのではないでしょうか。おニャン子はもう万人を相手にはしてません。夕方にテレビ番組を見られる学生がターゲットです。
こうしてアイドルのグループ化の時代が幕を開け、ソロアイドルが減っていったと考えられます。個人的には、ソロで最後に頑張ったアイドル歌手は、89年デビューの田村英里子さんだったと思っています。
──90年代には、ミリオンセラーを出すソロ歌手が現れましたが、彼女たちはアイドルとは言えませんか?
クリス松村 私は、デビュー時はアイドルとして曲を聴いてましたが、ご本人たちは世間からアイドルと見られることに抵抗があったのかもしれないですよね。アーティストとしての意志がしっかりあったのでしょう。
その後も、ソロアイドルの資質を持った子は、何人かいたと思うんですけど、どうしても「アーティストになりたい」という気持ちが強すぎたようです。その結果、方向性を見失いがちになっていたのは、惜しいですね。
結局はグループアイドルばかりの時代になりました。
今のシステムでは個性的な子が生まれにくい
──グループアイドルの問題点は?
クリス松村 突出した魅力を持った人が出にくいことですね。時々思うんです。70年代だったら、スターの後ろで踊っていたスクールメイツのような子たちが、今ではそのまま一線のアイドルになっているんじゃないかって。
曲も全員で歌わなくてはいけないから、一人ひとりの個性を引き出す繊細なメロディーも作れない。どうしてもメリハリが少なくなりがちです。
それに、アイドルに限ったことではないですが、今の歌詞は単調ですね。これはグループだからというより、時代の流れがそうさせているのだと思いますけど。「元気だよ」「ありがとう」とか、結論ありきの歌が多い。
最近は、本当に読解力がない子が多くて、黄金期を支えた松本隆さんの歌詞を読み聞かせても、「意味が分からない」なんて平気で言う。女性の気持ちをストーリー性豊かに描いた、「松本文学」と形容できる世界が理解できないなんて、かわいそうですよね。
ネット依存の傾向にある今、教育からしっかりしてくれないと、どうにもならないところまで来ています。
──今の時代、アイドルの聴き手は、子どもや若者だけではないですよね。コンサート会場に行けば、クリスさんと同世代・・・かどうかは不明ですが、30~50代の人が多いです。
クリス松村 本にも書きましたけど、私も親から「アイドルなんか、聞くな」と厳しく言われて育ちました。おそらく、今、アイドルを追いかけている人のなかには、そうした抑圧された体験をお持ちの方も多いんだろうと思います。そして自分のお金が自由に使える歳になって、若い頃に抑えられていたものが、一気に吹き出しているのかもしれません。
いい歳した大人が、似合わないTシャツをお揃いで着ている光景は、昔は見られませんでした。でも、文句の言いようがないですけど。
──今も、アイドルのコンサートに行かれますか?
クリス松村 曲はひと通り聞いてますけど、最近のアイドルのライブ会場に足を運ぶということは少ないです。もちろん、松田聖子さんや往年のアイドルのコンサートには行ってますが。
──これからのアイドルのあるべき姿は?
クリス松村 今、活躍されている方を否定するつもりは本当にありません。だけど、グループアイドルばかりが増えると、やはり変化に乏しいように感じてしまいます。
一人ひとりは魅力的な子もいるんだから、もっと個性を出してあげてほしいですよね。
できればレコード会社や芸能事務所など、それぞれの会社がもっとプライドを持って、自分たちが育てたアイドルを、歌で競い合わせてほしい。個性を持ったソロアイドルが、もっと活躍する姿を見たいんです。
多くは望みません。素敵な歌をたくさん聞きたいだけです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42066
大の音楽好きで知られる、タレントのクリス松村さんが、今年、独自の視点からアイドル論をまとめた(『「誰にも書けない」アイドル論』、小学館新書)。
クリスさんは、1970年代に山口百恵やキャンディーズなどの曲に出合って以来、アイドルを応援し続けて、その変遷をずっと見守ってきた。
本書でも随所に70~80年代に輝きを放ったアイドルへの深い愛を語りつつ、ともすれば売り上げ至上主義に陥りやすい昨今のアイドル業界についても言及している。
アイドルのあるべき姿は、いかなるものか。ご本人に話をうかがった。
アイドルは「お人形さんでいい」
──アイドルが輝いていた時代を、71年から89年までと限定されていますね。
クリス松村氏(以下、敬称略) もちろん今でもアイドルはたくさんいますけど、私が、この本でアイドルとして取り上げたかったのが、主に70~80年代に活躍された方々ということです。彼女たち、あるいは彼らのほとんどは、ソロの歌手です。グループといっても、せいぜいキャンディーズやピンク・レディーのように2~3人までで、メンバーそれぞれが個性を放っています。
その頃は、お茶の間のテレビを家族全員で見るという時代でしたから、彼女たちは、世代を超えて万人に愛されるアイドルでした。今でこそ、ご当地アイドルとか、グラビアアイドルとか、ジャンルやカテゴリーが細かく区切られていますけど、アイドルというのは、本来、幅広い層に愛される存在だと思うのです。
そういう意味で、アイドルが輝いていた時代を、70~80年代としました。
──アイドルは「お人形さんでいい」と、明言されています。
クリス松村 私はそう思っています。プロである大人たちが、その子の魅力を最大限に発揮させるべくプロデュースする。それがアイドルの魅力の磨き方だったのではないでしょうか。作詞家の阿久悠さんは、アイドルが自分から「バラードを歌いたい」と主張すると、「それは周囲のスタッフが成長具合を見て決めることで、本人が決めることじゃない」とおっしゃったそうです。
──アイドルは、自分を押し隠さないといけないということでしょうか。
クリス松村 例えば小泉今日子さんは、「お人形さん」的なアイドルから大きく逸脱することなく、でも髪を勝手に短くするとか、ちょっとだけ自分の意志を出して、ファンに支持されました。それも、自由にやっていたのではなくて、制約があるから、面白いんだと思うんです。
それが今は、戦略かもしれないですが、アイドルが私生活をブログなどでたくさん見せちゃってますからね。
80年代までは、ほとんどのアイドルは寿命が短かかったんです。松田聖子さんや中森明菜さんや小泉今日子さんみたいに、長く活躍される人は少なくて、アイドルの活動期間は、基本的には2~4年でした。「お人形さん」でいられるのが、そのくらいの時間だということでしょう。一瞬の輝きを放って消えていくのもまた、アイドルの定めでした。
アイドルをやめてから、女優やタレントとして芸能界の仕事を続ける方は多いですけどね。
松田聖子さんは、今もステージではミニスカートをお履きになって、アイドルとして求められる姿を演じきられてますよね。まさに永遠のアイドルです。
ニューミュージックが支えたアイドル黄金時代
──アイドル像の変遷も詳しく書かれています。特に80年代前半に起きたことに紙数を費やされていますね。
クリス松村 その頃にアイドルの歴史にとって、重要なことが起こったからです。厳密には、70年代末から80年代前半にかけてですね。
70年代は、レコード会社主導で曲を提供する、いわゆる「歌謡曲のアイドル」だった時代でした。ところが78年にキャンディーズが解散し、翌年には山口百恵さんが婚約を宣言、そしてピンク・レディーの人気凋落と、アイドル界は寂しい状況になりました
その状況を打ち破り80年代のアイドルたちを支えたのが、ニューミュージック界の方々です。松任谷由実さん、中島みゆきさん、チューリップの財津和夫さん、山下達郎さん、元はっぴいえんどの大瀧詠一さんや細野晴臣さんなどです。
彼らには70年代から熱心なファンがいましたが、他人への提供曲も含め、必ずしもヒットには恵まれませんでした。それが80年代に入ると、アイドルに提供した曲も、彼ら自身の曲もヒットしだします。
──当時も、その変化を実感されてましたか?
アイドルをやめてから、女優やタレントとして芸能界の仕事を続ける方は多いですけどね。
松田聖子さんは、今もステージではミニスカートをお履きになって、アイドルとして求められる姿を演じきられてますよね。まさに永遠のアイドルです。
ニューミュージックが支えたアイドル黄金時代
──アイドル像の変遷も詳しく書かれています。特に80年代前半に起きたことに紙数を費やされていますね。
クリス松村 その頃にアイドルの歴史にとって、重要なことが起こったからです。厳密には、70年代末から80年代前半にかけてですね。
70年代は、レコード会社主導で曲を提供する、いわゆる「歌謡曲のアイドル」だった時代でした。ところが78年にキャンディーズが解散し、翌年には山口百恵さんが婚約を宣言、そしてピンク・レディーの人気凋落と、アイドル界は寂しい状況になりました
その状況を打ち破り80年代のアイドルたちを支えたのが、ニューミュージック界の方々です。松任谷由実さん、中島みゆきさん、チューリップの財津和夫さん、山下達郎さん、元はっぴいえんどの大瀧詠一さんや細野晴臣さんなどです。
彼らには70年代から熱心なファンがいましたが、他人への提供曲も含め、必ずしもヒットには恵まれませんでした。それが80年代に入ると、アイドルに提供した曲も、彼ら自身の曲もヒットしだします。
──当時も、その変化を実感されてましたか?
クリス松村 レコードがだんだん売れなくなったんです。70年代のアイドル曲は、20万枚売れてもベストテンに入らないことがあったのに、80年代後半になってくると、1週間で数万枚売れれば1位を取れてましたから。
事実だから言わなきゃしょうがないけど、アイドルの曲ばかりがチャートを賑わしている時代は、音楽全体が売れなくなるのではないでしょうか。
私は86年には、芸能事務所に勤めてマネージャーもやっていましたが、レコード会社から「もうシングル盤はやめようか」という声が出るくらい、業界は追いつめられていました。
そこで思い切った手段を打たなければならなかった。
──その手段とは?
クリス松村 おニャン子クラブです。素人同然の子を次々とデビューさせて、レコードに特典を付けて売りました。
あの時代としては、おニャン子の売り方が間違っていたとは思いません。ただ、レコードを売ることばかり考えているから、肝心の曲そのものが記憶に残らないんです。いい曲が本当に多かったのに、残念です。
また、この頃からアイドルがピンポイント型になった影響も大きいのではないでしょうか。おニャン子はもう万人を相手にはしてません。夕方にテレビ番組を見られる学生がターゲットです。
こうしてアイドルのグループ化の時代が幕を開け、ソロアイドルが減っていったと考えられます。個人的には、ソロで最後に頑張ったアイドル歌手は、89年デビューの田村英里子さんだったと思っています。
──90年代には、ミリオンセラーを出すソロ歌手が現れましたが、彼女たちはアイドルとは言えませんか?
クリス松村 私は、デビュー時はアイドルとして曲を聴いてましたが、ご本人たちは世間からアイドルと見られることに抵抗があったのかもしれないですよね。アーティストとしての意志がしっかりあったのでしょう。
その後も、ソロアイドルの資質を持った子は、何人かいたと思うんですけど、どうしても「アーティストになりたい」という気持ちが強すぎたようです。その結果、方向性を見失いがちになっていたのは、惜しいですね。
結局はグループアイドルばかりの時代になりました。
今のシステムでは個性的な子が生まれにくい
──グループアイドルの問題点は?
クリス松村 突出した魅力を持った人が出にくいことですね。時々思うんです。70年代だったら、スターの後ろで踊っていたスクールメイツのような子たちが、今ではそのまま一線のアイドルになっているんじゃないかって。
曲も全員で歌わなくてはいけないから、一人ひとりの個性を引き出す繊細なメロディーも作れない。どうしてもメリハリが少なくなりがちです。
それに、アイドルに限ったことではないですが、今の歌詞は単調ですね。これはグループだからというより、時代の流れがそうさせているのだと思いますけど。「元気だよ」「ありがとう」とか、結論ありきの歌が多い。
最近は、本当に読解力がない子が多くて、黄金期を支えた松本隆さんの歌詞を読み聞かせても、「意味が分からない」なんて平気で言う。女性の気持ちをストーリー性豊かに描いた、「松本文学」と形容できる世界が理解できないなんて、かわいそうですよね。
ネット依存の傾向にある今、教育からしっかりしてくれないと、どうにもならないところまで来ています。
──今の時代、アイドルの聴き手は、子どもや若者だけではないですよね。コンサート会場に行けば、クリスさんと同世代・・・かどうかは不明ですが、30~50代の人が多いです。
クリス松村 本にも書きましたけど、私も親から「アイドルなんか、聞くな」と厳しく言われて育ちました。おそらく、今、アイドルを追いかけている人のなかには、そうした抑圧された体験をお持ちの方も多いんだろうと思います。そして自分のお金が自由に使える歳になって、若い頃に抑えられていたものが、一気に吹き出しているのかもしれません。
いい歳した大人が、似合わないTシャツをお揃いで着ている光景は、昔は見られませんでした。でも、文句の言いようがないですけど。
──今も、アイドルのコンサートに行かれますか?
クリス松村 曲はひと通り聞いてますけど、最近のアイドルのライブ会場に足を運ぶということは少ないです。もちろん、松田聖子さんや往年のアイドルのコンサートには行ってますが。
──これからのアイドルのあるべき姿は?
クリス松村 今、活躍されている方を否定するつもりは本当にありません。だけど、グループアイドルばかりが増えると、やはり変化に乏しいように感じてしまいます。
一人ひとりは魅力的な子もいるんだから、もっと個性を出してあげてほしいですよね。
できればレコード会社や芸能事務所など、それぞれの会社がもっとプライドを持って、自分たちが育てたアイドルを、歌で競い合わせてほしい。個性を持ったソロアイドルが、もっと活躍する姿を見たいんです。
多くは望みません。素敵な歌をたくさん聞きたいだけです。