● お笑い100万票どこへ 「身近な人を」「アンチ権力」 読売 1月13日
「力失った」見方も
有力3候補が競う大阪府知事選(27日投開票)。33年ぶりに主要政党が3極に分かれる構図となったが、各陣営が「当落を左右しかねない」と見るのは、かつて数々の庶民派リーダーを誕生させた〈お笑い票〉だ。府内に100万あると言われるが、漫才師出身の横山ノック氏が1999年に強制わいせつ事件で知事を辞職したことで“威力”を失ったという見方もある。はたして、その行方は――。
知事選に立候補したのは、弁護士の梅田章二(うめだしょうじ)氏(57)(共産推薦)、自民党府連推薦、公明党府本部支持の弁護士でタレントの橋下徹(はしもととおる)氏(38)、元大阪大教授の熊谷貞俊(くまがいさだとし)氏(63)(民主、社民、国民推薦)ら。
元吉本興業常務でフリープロデューサーの木村政雄さんは「自分たちの代表にはエリートよりも身近な人を、というのが大阪流。お笑いタレントは概して目線が低く、受け入れられる素地がある」と分析する。
大阪のタレント政治家の草分けは、漫画トリオで人気を集めた横山氏だ。参院大阪選挙区で80万~86万票を集め、99年の知事選で過去最高の235万票を獲得した。80年の参院選はアナウンサーの中村鋭一氏が94万票で当選。漫才師出身の西川きよし氏も97万~105万票を得て3期連続でトップ当選を果たした。
知事選立候補者に携帯電話のカメラを向ける若者たち。
〈お笑い票〉の行方が注目される(12日午後7時28分、大阪市内で)=工藤菜穂撮影
「大阪人の根底にあるアンチ東京、アンチ権力の気質が表れた」と読み解くのは、演芸評論家の相羽秋夫・大阪芸術大教授。「お笑いは大阪が全国に誇れる文化で、庶民からも支持されやすい」
一方、前回知事選で元プロ野球選手の江本孟紀氏が、官僚出身の太田房江知事に大差で敗れるなど、〈お笑い票〉は力を失ったとの見方も。「大阪学」を著した大谷晃一・帝塚山学院大名誉教授は、横山氏が強制わいせつ事件で辞職した影響を挙げ、「タレント候補への目が厳しくなった一方、二大政党化の流れの中、政党の存在感が高まっている」と指摘する。
票の取り込み3陣営手応え
〈お笑い票〉をどう引き寄せるか。
「変革を望む庶民の票」とみるのは、梅田氏陣営の幹部。「横山氏には強制わいせつ事件で裏切られ、行政手腕に期待した太田知事は『政治とカネ』に無頓着だった。今回、支持を得られるのは庶民派の梅田氏だけ」とアピールする。
橋下氏は、街頭演説するたびに、人だかりができる人気。陣営は「政治の素人への親しみが〈お笑い票〉。受け皿になる可能性を感じる」と手応えを語りながらも、「人の集まりと、投票してもらえるかどうかは別」と上滑りを警戒する。
熊谷氏のスローガンは「人気より本気」。陣営幹部は「面白い方に流れやすいが、本質もきっちり見極めているのが大阪人」との見方を示し、「信念を持って主張すれば、真剣に大阪の将来を考えている無党派層に伝わる」とする。 |