主 文
1. 原判決を次のとおり変更する。
2. 被控訴人が,桑名市議会緑風無所属クフプに対し,平成17年度に交付た政務調査費のうち174万3204円の返還請求を怠っていることが,違法であることを確認する。
3. 控訴人のその余の請求を棄却する。
4. 訴訟費用は,第1, 2審を通じ,これを4分し,その1を控訴人の,その余を被控訴人の負担とする。
第3当裁判所の判断
2 本件支出が本件使途基準に適合するか否かの判断基準について
(2) 基準についての規定と内容
イ ・・そうすると,政務調査費が地方議会の活性化を図るために,地方公共団体の公金から交付される以上,これを用いて会派が行う調査活動は,市政と無関係であってはならず,少なくとも,市政との関連が必要であり,この関連性を欠く調査活動は,本件使途基準に反する違法なものというべきである。
もちろん,具体的な政務調査活動や政務調査費が本件使途基準を満たすかどうかの判定の難しい場合もあろうが、その点は活動,支出の目的等に照らして,事実認定の原則に従って決すべきは当然である。そのようにしても不明な費用がある場合については,いわゆる立証責任の分配の原則(訴松前ではそれに準じる。)に従って判断するのが相当であるが,本件条例8条からすると,会派は交付を受けた政務調査費の総額から,必要な経費として支出した残額がある場合、返還しなければならないと定められている上,政務調査費の給源が公金であることに照らすと,必要な経費かどうか不明なものは,返還の対象となると解するのが相当である。
ウ 被控訴人は,議会の自律性,会派による政治活動の自由等から,桑名市議会の会派が行う調査研究活動として,合理性ないし必要性を失くことが明らかであると認められない限り政務詢査費の支出が本件使途基準に反するものとはいえない旨主張し,原判決が,政務調査費の支出が一見明らかに市政とは無関係であるとか,極めて不相当あるいは著しく高額であるなど,支出の必要性や合理性を欠くことが明らかと認められる場合に限り,本件使途基準連反の違法の問題が生じ,そうでない限りは,会派ないしその所属議員が当骸支出について政治的費任を負うことはともかく,違法の問題は生じない旨を判示しているが,上記イに反する趣旨を含むもので
あれば,その限度では採用することができないというべきである。
3 本件講演会の目的について
(1) 本件講演会と市政に関する調査研究との関係
ア 本件講演会は,一般市民向きに開催された講演会であって,本件議員ら,あるいは本件会派自身の調査研究活動との関連性が希薄であるといわぎるを得ない。本件会派及び本件議員らから見たときにも,本件講演会は,一般市民がどのようにして多数参加し,興味深く参加してもらえるかの観点にばかり関心が高く,本件会派自身の政務との関わりや関心との結びつきが具体的でないし、講演後にも政務にこれを生かしているという気配を窺わせる証拠はない。
イ 被控訴人に有利に見える下記の証拠も,下記の理由により,いずれも採用することができない。
(オ) 医療・福祉政策に何らかの示唆を与える面が全くないとまでは言い切れない。
しかしながら,そのような抽象的な関連性が存在するのみでは,直ちに市政や議員活動と関連性があると言うことはできない。
(3) まとめ
ウ そうすると,本件講横会は,他の目的(選挙運動目的)があって開催されたのではないかとの控訴人の疑間が提起されるのも無理からぬ間がある。しかし、本件は,政務調査費の目的外支出の有無,その返還の有無を主な争点とする住民折訟であって,選挙に関する訴訟ではない上,後記のとおり,本件支出が本件使途基準を逸脱することは明らかなので,本件においては,本件講漬会の開催に係る本件会派又は本件議員らの行為が公職選挙法上の選挙に係る政治活動や寄附行為に該当するかどうかの点までの判断は要しない。
4 本件文出の適否について `
(1) 前配2の判断基準に従い,前記3の本件講演会の目的に関する事業関係に当てはめると,本件講演会は,本件議員らの調査研究活動として実施されたとはいえず,本件支出のうち本件講演会に係る文出は,政務調査費に係る本件使途基準に反する違法なものというべきである。
5 まとめ
被控訴人が,本件会派に対し,平成17年度に交付した政務調査費174万3204円の返還請求を怠っていることは,違法であり,その旨の確認講求は理由がある(そして,それにより控訴人の目的は達せられていると解される)。
第4 結論
以上の次第で,控訴人の請求は,被控訴人が,本件会派に対し,平成17年度に交付した政務調査費のうち174万3204円の返還捕求を怠っていることが違法であることの確認を求める限度で理由があり,被控訴人に,本件議員らに対して同額を連帯して支払うように請求することを求めゆる請求は理由がないと
よって,控訴人の講求をいずれも菜却した原判決を変更し,主文のとおり判決する。 |