三重県リサイクル製品利用推進条例改正についての要望書
提出版
2009年2月9日
三重県議会議長 萩野 虔一 様
議員提出条例に係る検証検討会座長 西塚 宗郎 様
議 員 各 位
四日市再生「公害市民塾」
RDFを考える会
「瀬戸市にこれ以上産廃はいらない」会
瀬戸市の問題を考える市民ネットワーク
くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク
放射能のゴミはいらない!市民ネット・岐阜
来る2月議会において、三重県リサイクル製品利用推進条例につき、これまで規則で定められていた特別管理廃棄物や空間放射線量率が0.14μGy/hを超えるものを再生資源等から除外する規定を、条例自体に明記する改正案を議員提出予定と報道にて知りました。
報道では、フェロシルト問題で議会の議決責任を認める文言を提案説明に盛り込むとも伝えられています。
議決責任を重く受け止めて、議員提出条例の検証を行う取り組みに期待します。
報道の様子からは、今回の改正はあたかも望ましいことのように見えます。しかし、私たちは「フェロシルト」と同じく体内被ばく等が配慮されないままチタン廃棄物のリサイクル・不法投棄の推進の役割を果たすのではないかと強く危惧します。
2006年3月14日付、市民団体提出の抗議文・要望書を添付します(別添-1)。
私たちの危惧する点は以下です。
1.再生資源等の除外規定における、空間放射線量率の基準「0.14μGy/hを超えるもの」との記述はそれ以下の数値の放射性廃棄物のリサイクル推進の根拠となるが、この基準はリサイクルを可能とする基準ではない。
(1) 本条例が根拠としているのは、「チタン鉱石問題に係る検討の結果と今後の対応について」(1991年5月30日科学技術庁原子力安全局チタン鉱石問題検討会報告)及び、「チタン鉱石問題検討会報告」です。この報告をもとに1991年6月6日に、科学技術庁、厚生省、通商産業省、労働省が関係府県に要請した「チタン鉱石問題に関する対応方針」(以下「対応方針」)も、ウランやトリウムを含むチタン廃棄物に起因する空間放射線量率が0.14μGy/hを超えないものに限って例外として管理型処分場に処分できるとしているのみです(別添-2「対応方針」)。リサイクルを想定した値ではありません。
当然、廃棄物処理法では現在も放射性物質及びこれによって汚染された物を除くことが明記され、国の「資源の有効な利用の促進に関する法律」でも第2条に「放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。」と明記しています。
(2) その上、対応方針の数値は法律で定めたものではありません。それを利用して石原産業が数値を超えたアイアンクレーを産廃処分場に搬入しても、罰則もなく、回収指導すらできない現実を三重県と三重県議会はご承知のはずです(別添-3 ①2008年5月29日記事、②同年6月22日記事、③同年8月8日付 国四省の三重県に対する「助言」、④同年11月18日市民団体申入書、⑤同年11月19日記事)。石原産業の対応で、対応方針は既に破綻しており、かえってチタン廃棄物の不法投棄をもたらしていることが明確になりました。
(3) そもそも対応方針は、チタン廃棄物がリサイクルされ流通した先々で、人々がチタン廃棄物に密着したり吸い込んだり飲み込んだりすることまでを想定して安全性を担保したものではありません。そのため、対応方針では、廃棄物から1m離れたところでγ線のみを測定し、その数値が0.14μGy/hを超えなければよいと定めるだけです。α線やβ線、ラドンガスの影響、体内被ばくの影響については何ら考慮されていません。
(4) しかし、チタン廃棄物が再生資源として用いられ流通すれば、流通先での使用方法まで監視が行き届かないのは「フェロシルト」事件で明らかです。「フェロシルト」は認定の際に条件としてつけられた「覆土」でさえも守られることはありませんでした。三重県では不法投棄されたフェロシルトでこどもたちが泥遊びをし、愛知県では地域住民がフェロシルトの泥にはまりながらひまわりを育てる活動をするなどの被害もありました。
(5) これら危惧する点があるにもかかわらず、本改正をこのまま進めるのであれば、第二第三の「フェロシルト」を推進することになり、将来に禍根を残します。
2.「特別管理廃棄物」を利用したものを「リサイクル製品から除く」と条例本文に明記しながら、中間処理した特別管理廃棄物はリサイクルできるという運用のあり方について。
(1) 特別管理廃棄物は有害性が高く、特別な処理基準が設定され単なる産業廃棄物より厳しい規制が定められています。有害物質をコントロールできず、投棄先で更なる有害物質が発生し、環境を汚染したのが「フェロシルト」です。
(2) 「フェロシルト」の教訓から本条例の見直しを図っている議会が、運用で中間処理した特別管理廃棄物のリサイクルの推進を認めるべきではありません。
3.本条例改正案のパプリックコメントのありかたについて
(1) 本件につきパブリックコメントの募集を2008年12月20日〜2009年1月19日の間実施され県議会のホームページ上だけで周知し、寄せられた意見はゼロだったそうですが、検証検討会はそれで良しと判断されたとも伺いました。
議会事務局によれば、トップページの「注目情報」にパブリックコメント募集を載せて意見を募ったが、終了後は改正案も募集の案内も削除したので、議会ホームページ上に記録が残っていないとのことでした。
(2) 後日、議会事務局に依頼してFAXを受けたパブリックコメント「三重県リサイクル製品利用推進条例の改正概要」には、「特別管理廃棄物を利用して生産又は加工されたもの等は、リサイクル製品から除くこととします。このことについて条文上整理します」とあるのみで、条例を実質的に動かす運用に係る規定が全く示されていません。
(3) ところが実態としては2で述べたように、中間処理した特別管理廃棄物はリサイクルできるという運用が認められています。運用を示さないのは恣意的です。条文と具体的な運用が併せて示されてこそ、実態に即した理解や意見が生まれます。
(4) いずれにしても、貴議会自らが重要な課題として本条例の改正に取り組み、議決責任も明確にしようとお考えであるならば、条例改正にあたっては、ひろく意見を募るべきであると考えます。
(5) また、議会事務局に確認したところ「0.14μGy/hを超えるもの」とする基準は、パプリックコメント時には記されておらず、寄せられた意見として取り入れたものでもなく、本改正案検討の最終日である2009年1月30日の検証検討会で初めて改正案に盛り込まれたとのことです。パプリックコメント時に記載されていない重要な条件が、意見を受けたわけでもなく突然追加されることは、パプリックコメントを無にする行為です。
明らかに、議会が独自に盛り込んだ部分です。
(6) このように手続上問題のある形で追加された「0.14μGy/hを超えるもの」の規定は、この観点からも削除すべきです。
以上のことから、下記の点について再度検討いただくとともに、あらためて広く周知し十分な期間をもってのパブリックコメントを募集した上で、本条例改正につき判断をされますよう要望いたします。 |