毎日、1000件以上のアクセス、4000件以上の閲覧がある情報発信ブログ。花や有機農業・野菜作り、市民運動、行政訴訟など
てらまち・ねっと



 「書評」というものを初めて書いた。
 新聞社の依頼で。 
 東京新聞、中日新聞で、「北海道新聞」「西日本新聞」の二紙にも配信されるという。

 時間が無いけど良いですか、と編集者に聞かれたけど、3月の議会後だったので、「何事も経験」と気軽に応じた。

 「岩波」と聞いたので、無意識に浮かんだのは「新書」。

 ところが、数日後に届いたのは、ズッシリと重たいと本。
 書籍は、岩波書店の『川辺川ダムはいらない』、著者は高橋ユリカさん。
 
 川辺川ダムことは、このブログでも採りあげてきた。
   ex.  2008年10月2日のブログ
   ⇒ ◆川辺川ダム建設中止/他方で、ダム撤去は凍結/熊本蒲島知事

 いろいろな公共事業や大規模開発などに起因して、無謀な計画に、やむを得ず市民運動が立ち上がることは通常のことだ。
 私の住む岐阜県でも、公共事業としての長良川河口ぜきや徳山ダムの計画、大規模開発、廃棄物の問題など、全国と同じ状況だ。

 いろいろな環境問題にかかわってきた。
 かつて、ゴルフ場開発の問題では、全国に先駆けて「岐阜県内の住民運動、市民運動団体、個人のネットワーク」を呼びかけて、県内ネットを作った。
 それは、今の「くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク」の前身でもある。

 ともかく、川辺川ダムは日本の公共事業のひとつの結末(まだ、完結はしていないけど)。
 ジャーナリストとしての著者・高橋さんの経験と地道な多くの取材に基づくしっかりとした「330ページ」の本。
 読む中で、改めて日本の公共事業の歴史や発想、根底にあるもの、そして「これから」のことが見えてくる。

 もちろん多くの人に読んでほしいけど、特に官僚や役所の人にも読んでほしい。

人気ブログランキング→→←←ワン・クリック10点
ここのところ7位あたり

(転載、転送 歓迎)
 2009年4月5日 東京新聞、中日新聞
 書評
『川辺川ダムはいらない』
[著者]高橋 ユリカ 岩波書店/3150円

[評者]寺町 知正 (住民運動団体代表)

 「五木の子守唄(うた)」発祥の地・熊本県五木村。
 その周辺にダムを造ろうと、国は四十年あまりも前に「川辺川ダム」計画を公表した。
 その後、住民や関係者の反対や批判を受け続け、群馬県の八ッ場(やんば)ダムとともに長期化・問題化した公共事業の典型である。

 ところが、昨年初当選した蒲島郁夫知事によって計画が白紙撤回された。画期的な出来事だ。

 公共事業の計画は、かつてはなかなか止まらなかった。だが近年は、事業の断念や修正が実現することがある。景気や財政の悪化などの要因に加え、市民運動があるところに個性的な知事や市町村長が誕生、そのトップの決断など政治の現場の動きと呼応したときだ。
 川辺川ダム計画の結末は、その象徴とも言える。

 著者は東京から現地に十年にわたって通い続け、その経過を「序章」で感慨をもって語る。
 他の地域の事例や背景の考察などが織り込まれ、説得力が増していく。

 ダム計画をめぐる流域住民の苦悩、周辺自治体や議会・議員の状況、熊本県の前知事のダムへの慎重な姿勢などが縦糸。
 横糸は、全国各地に国から押し付けられる公共事業に納得しない現地の人たちとその粘り強い運動、公共事業にストップをかけた長野県の田中康夫前知事や滋賀県の嘉田由紀子知事らの姿勢、真実を見据えようとする学者や専門家の議論の変化などである。

 それらが整理されていく中で、国が進める各種の計画の立脚点がもろくも崩れていくことを予見させる。

 本書は、単なる「川辺川ダム」計画の記録ではない。著者が「もはや流れは変えられない」と終章を結ぶとおり、日本の公共事業や大規模事業の計画づくりや進め方は変わった。官僚と政治家、業界の思惑や利権ではなく、真に暮らしや環境を守る政策が選択される時代に入った。

 本書は、主導権が地方や市民に移りつつあることを、しっかりと理解させてくれる。


中日新聞・東京新聞 書評『 川辺川ダムはいらない』 
 高橋 ユリカ 暮らし、環境を守る流れに




 ●著者 高橋さんの関連情報
   ジャーナリスト高橋ユリカの公式サイトです

 このブログの記載によると・・・
  「川辺川ダムはいらない 宝を守る公共事業へ」(岩波書店)では、これまでの経緯をこれかの未来を考えながら振り返っています。「子守唄の里・五木を育む清流川辺川・球磨川を守る県民の会」のサイトからアフェリエイトで購入していただくと「県民の会」に3.75%の寄付がされます。 
    川辺川ダム問題・書籍紹介 


  2009/04/04(Sat) のブログ ⇒  桜満開おそし>大戸川ダム凍結?>東京水辺クルーズ>海へ

●国の大戸川ダム凍結方針 知事「政治的には了」評価再修正  2009年4月8日 読売新聞
 嘉田知事は7日の定例記者会見で、国土交通省が大戸川ダム(大津市)建設の凍結方針を決めたことに関し、「政治的には了としたい」と述べ、国の判断へのの評価を再修正した。

 知事は同省近畿地方整備局が方針を発表した3月31日、「一定程度評価したい」と表明した。しかし、翌1日の定例会見で、「(ダム計画の白紙撤回を求めた)知事意見とは異なり、疑問がある」などと一転して同省を批判。同省の方針を支持した橋下徹・大阪府知事との立場の違いが表面化していた。

 知事はこの日の会見で、「(1日の会見後)大阪、京都の両府知事と連絡をとった。政治的メッセージとしては、国交相が凍結と言っていることを評価させていただく」と説明。

 凍結方針への評価が二転三転していることに関しては、「(1日の会見は)具体的な(凍結への)行政手続きについて疑問があると申し上げた」と釈明した。

●クローズアップ2009:大戸川ダム中止 高度成長期に計画、「時代は変わった」  毎日新聞 2009年4月1日
 ◇必要性に疑問
 国土交通省が31日、事業凍結を決めた大戸(だいど)川ダム(大津市)。公共事業の見直しを迫られる中、滋賀、大阪など4府県が共同で建設反対を表明しており、財政難と地方の声に凍結を余儀なくされた格好の今回の国の決定。全国のダム行政への影響も大きそうだ。【野田武、高橋昌紀、稲生陽、大西康裕】

 「(滋賀、京都、大阪の)3知事は『治水効果は認める』とし、ダムには一定の評価を与えている。優先順位の問題。建設自体に反対をしているわけではない」。東京・霞が関の国交省で、河川局治水課の担当者はダムの必要性を強調。「現在の経済状況を考えると、直ちに着工できるわけでもないということだ」と述べた。

 「建設凍結」決断の背景には、大戸川ダム問題が長引けば、淀川水系の整備計画自体に遅れが出るとの懸念があった。地元知事が同様に反対を表明した川辺川ダム(熊本県相良村)に影響。ひいては脱ダムの機運をも盛り上げかねなかった。

 昨年12月に内示された09年度一般会計予算の財務省原案で、国交省の概算要求は10億円。しかし、知事側の了解を得ていないとの理由から、財務省の内示は半分の5億円にとどまった。

 31日発表の整備計画について、ある国交省幹部は「付け替え道路の建設を保証することで、知事側が受け入れられる内容になった。整備を進めることを優先した結果だ」と解説する。

 一方で、本体工事に関する「建設中止」の文言は見あたらない。明記されたのは「中・上流部の河川改修の進ちょく状況とその影響を検証しながら実施時期を検討する」との文言だった。

 ある河川局幹部は「宇治川や桂川が改修され、淀川への負荷が大きくなれば『大戸川ダムはやはり必要』との声も出てくる」と言い切る。別の幹部は「時代は変わった。ダムによらない施策について、河川局自体が考えなければならない時期にきているのだが」と吐露した。

 国が建設を計画しているダムは群馬県の八ッ場(やんば)ダムなど、全国で47カ所、総事業費は約6兆2000億円。多くが大戸川ダムや川辺川ダムと同様、高度成長期に計画され、必要性に疑問が生じているものも少なくない。今回の凍結は、計画時から社会状況が大きく変わる中、事業を進める難しさを示した。

 ◇治水行政、転換点に--前宮城県知事の浅野史郎・慶応大総合政策学部教授(地方自治)の話
 発言力のある知事が一致して国にノーをつきつけたことが、見直しの機運を高めたのだろう。完成まで時間がかかる国の事業は、目的が変わってしまうことがあるのに、始まると止まらなかった。今回の凍結は大きな転換点。他の事業の見直しにもつながる可能性がある。

 ◇流域知事意見を初反映--昨年11月、反対で結束
 97年、長良川河口堰(三重県、95年完成)に大きな反対が起きたことから、国のダム建設に際して河川法改正で知事の意見聴取が義務づけられた。今回は、その仕組みが初めて機能した。

 大戸川ダム建設が計画されたのが68年。地質調査などを経て89年、建設が正式に決定。98年までに水没地の住民の移転が終わり、水没地を通る県道の付け替え道路建設工事が始まった。

 一方で、国交省近畿地方整備局は河川法改正を受けて01年、学識経験者でつくる諮問機関「淀川水系流域委員会」を設立。03年、流域委は「ダムは原則建設すべきでない」と提言した。

 委員だった嘉田由紀子・滋賀県知事がダム凍結を公約に06年7月、初当選。地元で、凍結への動きが本格化する。淀川流域委は大戸川ダムによる治水効果が淀川下流で19センチの水位低下でしかないことを審議過程で明らかにし、「建設は不適切」と結論づけた。

 08年1月に誕生した橋下徹・大阪府知事がダム建設に伴う地方負担金に異を唱え、地方分権を重視する山田啓二・京都府知事も参加。三重県も加わり、昨年11月に4知事で反対意見をまとめた。

 県議会の抵抗を受けながらも反対の立場を貫いてきた嘉田知事は国交省の決定を受け、「知事意見を尊重してくれたことを一定程度評価したい」とし、「ともすれば対立しがちな(大戸川の)上下流(の府県)が一致した意見が出せたということは歴史的にも画期的」と話した。

 橋下知事は「僕としてはありがたいと思っています。地方の声はしっかり反映されたんじゃないでしょうか」と話し、山田知事は「あれもやります、これもやります、30年たったら何とかなりますというものだ」と計画を改めて批判した。

 一方で、京都府内の流域自治体にはダム凍結についてさまざまな意見があり、「これからも誠実に話し合いたい」と話した。


●社説:大戸川ダム 知事連携が流れ変えた  毎日新聞 2009年4月7日
 「一度動き出したら止まらない」と言われた大規模公共事業にストップがかかった。滋賀、京都、大阪、三重の地元4知事が反対していた淀川水系の大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)建設である。知事の声に押される形で国土交通省が当面実施しないと判断したのは当然だ。公共事業を巡る国と地方の役割分担を議論し、より対等な関係を築く契機とすべきだ。

 大戸川ダムは1960年代、治水・利水・発電の多目的ダムとして計画された。その後、利水や発電の需要が見込めず、治水単独のダムへと計画が変わった。ところが同省近畿地方整備局の諮問機関・淀川水系流域委員会が「治水効果は限定的」とする意見書を提出し、「まずダムありき」の政策に待ったをかけた。

 それを受け4知事は昨年11月、共同で凍結を求めた。国のダム建設に地元知事が結束してNOを突きつけたのは初めてのことだった。

 ダム凍結を公約にした嘉田由紀子・滋賀県知事が06年に初当選するなどの状況変化に加え、各自治体の苦しい財政事情も背景にあった。ダムの総事業費は約1080億円。その約3割が地元負担である。「教育や福祉の予算を削ってまで、効果が明らかでないダム建設を優先すべきか」と、地方行政の責任者が疑問を抱いたのも無理はない。

 一連の経緯で浮き彫りになったのが、道路やダム、空港など政府が進める直轄事業を巡る国と地方のいびつな関係だ。こうした公共事業は「地方自治体も受益者」という理由で、一定割合で地方に負担が強いられてきた。しかし、必ずしも地元の意向を反映したものでなく、明細も十分に示されてこなかった。

 大阪府の橋下徹知事が09年度の直轄負担金の一部削減を要求、国もそれに応じざるを得なかった。ダム問題などを契機に噴き出した地方の不満を無視できなくなったからだ。

 完成まで何十年もかかるダムは、一度動き出せば止まらない公共工事の典型だ。大戸川ダムでも、整備計画書の本文に「凍結」が明記されていないことを滋賀県知事が警戒している。だが、熊本県の川辺川ダムに地元知事が反対。国交省内にも、全国のダム整備計画を再検討する動きがあるなど、ダム頼りの治水政策を見直す機運は高まっている。

 地元知事らは大戸川ダム問題を「地方分権の試金石」と位置づけていた。上流と下流で利害が相反する河川政策で協調することが、自治能力の証しになるからだ。一方で、大津市や京都府宇治市などダム建設を望む自治体もある。住民の不安を取り除き、納得できる治水対策を示すことが必要だ。専門家集団の地方整備局と一緒に知恵を絞るべきだ。

●2つのダム事業を中止へ 長野県の田中知事  2002/06/24 13:24 【共同通信】
 長野県の田中康夫知事は24日までに、自らの「脱ダム」宣言などで抜本的な見直し作業を進めていた浅川の県営浅川ダム(長野市)と砥川の同下諏訪ダム(下諏訪町)の建設事業を、中止する意向を固めた。  知事は、諮問機関が7日「治水・利水はダムを建設せず河川改修などで対応すべきだ」とする答申をまとめたことを尊重。25日の県議会一般質問でダム事業の中止を表明するとともに、宣言の理念にかなった河川改修と流域対策を組み合わせた代替案の概要を初めて明らかにする。  ダム建設推進派が多数を占める県議会や流域首長の反発は必至で、田中知事に対する不信任案提出をめぐる論議が活発化しそうだ。

●同じく長期化・問題化した群馬県の八ッ場(やんば)ダム
   数年前のオンブズ の全国大会で各県で住民監査請求・住民訴訟をそろってやろうと提唱された・・・・
      八ッ場ダム訴訟
 そのダムの分かりやすい基礎データ 八ッ場ダム  やんばダム

コメント ( 2 ) | Trackback ( )