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てらまち・ねっと



 生命や健康、財産を守ることや、環境問題や公害問題などの被害を心配してやむなく裁判を起こすことは少なくない。このとき、最高裁が、原告の訴えることができる内容や対象、範囲をより広く認める方向にチェンジしたことは定着している。

 昨日、産業廃棄物の最終処分場の許可の問題に関して、周辺の約1.8キロ離れた人たちの訴えを地裁・高裁が「適格無し」つまり、被害の心配があるとは言えないからと退けていた事件について、最高裁は、周辺の約1.8キロ離れた人たちにも「適格を認め」て、地裁に差し戻した。
 認定のとりあえずの基準としたのは約1.8キロ離れた人たちの居住地は、「本件環境影響調査報告書において調査の対象とされた地域」の中にある、というもの。分かりやすいと言えばわかりやすい。
 なお、当該、アセスの調査対象区域がどこまでであるのかは、興味深い。

 ともかく、影響は大きい判決。
 昨日の判示の基本は、小田急線の高架問題で、最高裁判所が大法廷で従来の判断を見直した判決。
 この判決がストレートに引用されている。(昨日の判示部分は、ブログの後半で色塗りしておいた)
 
 最高裁判所大法廷/平成16(行ヒ)114/平成17年12月07日
       小田急線連続立体交差事業認可処分取消,事業認可処分取消請求事件

 冒頭に、最高裁の「チェンジしたことは定着している」と書いたけれど、これは次の流れ。訴えの利益を広く認めていくことは、次の判決で、象徴的になった。
2008年10月14日のこのブログのエントリー ⇒ ◆区画整理事業 行政訴訟の門戸広げた/最高裁、当事者に「助け舟」判決も
 取り消しを求める訴訟の提起を認めない判例を42年ぶりに変更した10日の最高裁判決は、住民の権利救済に向けて少しずつ門戸を広げてきた行政訴訟の流れの一つの到達点だった。(読売)
・・・

 これら最高裁の住民の訴えをより広く認める流れは、今書いている本にも示し、上記の判例なども資料的に説明してある。
 
 ・・ところで、今日も、全国オンブズの各地報告の資料作り。

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●産廃周辺住民に原告適格=設置許可めぐり初認定-最高裁
     時事(2014/07/29-17:30)
 宮崎県都城市にある産業廃棄物の最終処分場をめぐり、周辺住民らが県に設置許可の無効確認などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は29日、住民らの原告適格を認め、訴えを退けた一、二審判決を取り消して審理を一審宮崎地裁に差し戻した。
 産廃処理施設の設置許可をめぐる訴訟で、最高裁が周辺住民に原告適格を認めたのは初めて。

 判決は、原告が環境影響評価(アセスメント)の調査対象地域に居住している点を理由に挙げた。アセスは、空港やダムといった大規模建設事業などを行う際、生活環境に影響が出る恐れのある場所を対象に実施される。判決は、そうした事業をめぐる訴訟の原告適格の判断に影響する可能性がある。

●宮崎産廃訴訟:最高裁「住民に原告適格」 アセス地域対象
       毎日新聞 2014年07月29日
 宮崎県が設置を許可した産業廃棄物処分場を巡り、許可の取り消しを求める訴訟を起こす資格(原告適格)の範囲について争われた行政訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は29日、「環境影響調査(アセスメント)の対象地域の住民には原告適格がある」と初判断を示した。その上で住民側の訴えを却下した1、2審判決を取り消し、審理を宮崎地裁に差し戻した。差し戻し審で実質的な審理が始まる。

 問題となったのは、宮崎県が2003年11月、都城市に設置を許可した処分場。小法廷は、原告13人のうちアセス対象地域(施設から1.8キロ以内)の住民12人について「有害物質が排出された場合、健康や生活環境に著しい被害を受ける恐れがある」と原告適格を認めた。

 1、2審は「被害が生じる具体的根拠がない」として、原告適格を否定し、実質審理に入らず門前払いにしていた。【川名壮志】

●産廃処分場「周辺住民に原告適格」 設置許可無効確認で最高裁
     産経 2014.7.29
 産業廃棄物最終処分場の周辺住民が設置許可の無効確認などを求める訴えを起こせるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は29日、「環境影響調査の対象地域の住民は裁判を起こす資格がある」として、地域外に住む1人を除いた12人の原告適格を認め、原告側の請求を退けた1、2審判決を破棄、審理を宮崎地裁に差し戻した。

 産廃処分場の設置許可をめぐり、最高裁が周辺住民の原告適格を認めたのは初めて。環境アセスメント(影響評価)を行う他の大規模建設事業の訴訟にも影響を与える可能性がある。

 住民が設置許可の無効確認などを求めていたのは、宮崎県都城市の産廃処分場。同小法廷は「調査対象地域の住民は、土壌汚染や悪臭などによる被害を直接受けるおそれがある」と指摘。処分場から約1・8キロ圏内に住む住民の原告適格を認める一方、対象地域外の住民については、処分場から20キロ以上離れていることなどから上告を退けた。

 23年10月の1審宮崎地裁判決は「生活環境などへの被害が生じるという証拠がなく、原告適格はない」として請求を退け、24年4月の2審福岡高裁宮崎支部判決も支持した。

●辺住民は原告適格 宮崎県の産廃許可めぐり最高裁
         日経 2014/7/29
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 宮崎県都城市に建設された産業廃棄物処理施設の周辺住民が県の許可取り消しを求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は29日、「原告は有害物質が排出された場合、健康や生活への被害を受ける地域に居住している」として、住民側に訴える資格(原告適格)があると認める判決を言い渡した。

 最高裁は原告適格を認めずに門前払いとした一、二審判決を破棄し、審理を宮崎地裁に差し戻した。許可の適否についてあらためて審理される。

 最高裁は原告13人のうち、産廃施設から約1.8キロ以内に住む12人について「業者が実施した環境調査の対象地域の住民で、大気や土壌の汚染、悪臭などの被害を直接受けると想定される」と判断した。今後、産廃施設をめぐる行政訴訟で、環境調査の実施地域が住民の原告適格を認める範囲の目安になりそうだ。

 判決によると、住民側は県が2005年に出した業者への処分業の許可を取り消すよう求めていた。一審宮崎地裁は「有害物質の飛散の程度が明らかではなく、住民らの安全が侵害されるとは言えない」と原告適格を否定し、二審福岡高裁宮崎支部も支持した。〔共同〕

● 最近の判例情報
事件番号  平成24(行ヒ)267
事件名  許可処分無効確認及び許可取消義務付け,更新許可取消請求事件
裁判年月日  平成26年07月29日  最高裁判所第三小法廷

原審裁判所名  福岡高等裁判所 宮崎支部
原審事件番号  平成23(行コ)13 原審裁  平成24年04月25日
裁判要旨
 1 産業廃棄物処分業等の許可処分及び許可更新処分の取消訴訟及び無効確認訴訟と産業廃棄物の最終処分場の周辺住民の原告適格
 2 産業廃棄物の最終処分場の周辺住民が産業廃棄物処分業等の許可処分の無効確認訴訟及びその許可更新処分の取消訴訟の原告適格を有するとされた事例

● 判決全文  (一部略)
平成24年(行ヒ)第267号 許可処分無効確認及び許可取消義務付け,更新
許可取消請求事件 平成26年7月29日 第三小法廷判決

主 文
1 原判決中上告人X1を除くその余の上告人らに関 する部分を破棄し,
  同部分につき第1審判決を取り消す。
2 前項の部分につき,本件を宮崎地方裁判所に差し戻す。
3 上告人X1の上告を棄却する。
4 前項に関する上告費用は上告人X1の負担とする。

理 由
上告代理人黒原智宏の上告受理申立て理由について
1 本件は,宮崎県北諸県郡高城町(平成18年1月1日以降は合併により宮崎
県都城市高城町。以下,合併の前後を通じて「高城町」という。)に設置された産
業廃棄物の最終処分場を事業の用に供する施設として,宮崎県知事が参加人に対し
てした産業廃棄物処分業及び特別管理産業廃棄物処分業(以下「産業廃棄物等処分
業」という。)の各許可処分及び各許可更新処分につき,高城町ほかの地域に居住
する上告人らが,被上告人を相手に,上記各許可処分の無効確認及びその取消処分
の義務付け並びに上記各許可更新処分の取消し(上告人X2にあっては上記各許可
更新処分の取消しを除く。)を求める事案である。

2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 - 2 -
(1) 参加人は,産業廃棄物及び特別管理産業廃棄物(以下「産業廃棄物等」と
いう。)の収集,運搬及び処理等を目的とする株式会社である。

(2) 参加人は,平成15年6月10日,産業廃棄物処理施設の設置に係る許可
を申請し,同年11月5日,宮崎県知事からその許可を受け,同17年8月23
日,上記許可に係る産業廃棄物処理施設(産業廃棄物等の埋立処分を行う施設であ
る産業廃棄物の最終処分場)を高城町内に設置した(以下,これを「本件処分場」
という。)。
上記申請の際,参加人は,本件処分場の設置が周辺地域の生活環境に及ぼす影響
についての調査の結果を記載した書類(以下「本件環境影響調査報告書」とい
う。)を申請書の添付書類として提出した。

(3) 宮崎県知事は,参加人に対し,本件処分場を事業の用に供する施設とし
て,平成17年10月25日に産業廃棄物処分業の許可処分を,同年11月30日
に特別管理産業廃棄物処分業の許可処分
をし(以下,上記各許可処分を「本件各許
可処分」
という。),また,同22年10月25日に産業廃棄物処分業の上記許可
に係る許可更新処分
を,同年11月30日に特別管理産業廃棄物処分業の上記許可
に係る許可更新処分
をした(以下,上記各許可更新処分を「本件各更新処分」とい
う。)。

(4) 本件処分場は,全体面積約25万㎡,埋立地の面積約3万㎡,埋立容量約
47万㎥の管理型最終処分場
であり,主要えん堤,埋立地(遮水工,浸出水集排水
管等の設備を含む。),浸出水処理施設,防災調整池等を備えている。また,本件
各許可処分及び本件各更新処分において埋立ての対象とされている産業廃棄物等の
種類は,産業廃棄物につき,燃え殻,汚泥,廃油(タールピッチに限る。),廃プ- 3 -
ラスチック類,動植物性残さ,ゴムくず,金属くず,コンクリートくず,鉱さい,
がれき類,ばいじん等であり,特別管理産業廃棄物につき,廃石綿等である

(5) 上告人らのうち,上告人X1(以下「上告人X1」という。)を除くその余
の上告人らは,いずれも高城町に居住し,その居住地は本件処分場の中心地点から
約1.8㎞の範囲内の地域に所在する
上告人X1は,都城市花繰町に居住し,そ
の居住地は上記地点から少なくとも20㎞以上離れている

上告人X1を除くその余の上告人らの居住地は,いずれも,本件環境影響調査報
告書において調査の対象とされた地域に含まれており,上告人X1の居住地は,こ
れに含まれていない。


3 原審は,要旨,次のとおり判断し,上告人らは本件各許可処分の無効確認及
びその取消処分の義務付け(以下「本件各許可処分の無効確認等」
という。)並び
本件各更新処分の取消し(上告人X2にあっては本件各更新処分の取消しを除
く。以下同じ。)を求める原告適格を有しないとして,本件各許可処分の無効確認
等及び本件各更新処分の取消しを求める訴えを却下すべきものとした。

本件処分場からの有害物質の大気中への飛散や汚染水の流出の有無及び程度は本
件全証拠によっても明らかでない上,それによって上告人らに生命,身体,生活環
境等への被害が生じ得るとしても,その具体的な内容や程度を認定するに足りる証
拠はないのであるから,本件処分場における産業廃棄物等の処分により,上告人ら
の生命,身体の安全や生活環境を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれがある
ということは困難であって,上告人らは,本件各許可処分の無効確認等及び本件各
更新処分の取消しを求める原告適格を有しない。

4 しかしながら,原審の上記判断のうち,上告人X1につき本件各許可処分の- 4 -
無効確認等及び本件各更新処分の取消しを求める原告適格を有しないとした部分は
結論において是認することができるが,その余の部分は是認することができない。
その理由は,次のとおりである。

(1)ア 行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するが,同条
1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当
該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に
侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定
多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰
属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解さ
れる場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該
処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の
取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。

そして,処分の相手方
以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,
該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく
,当該法令の趣旨及び目
的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し,この場合
において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共
通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し
当該利益の内容及び
性質を考慮するに当たって
は,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場
合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度を
も勘案すべき
ものである(同条2項,最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17
年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁参照)。

そして,行政事件訴訟法36条は,無効等確認の訴えの原告適格について規定す- 5 -
が,同条にいう当該処分の無効等の確認を求めるにつき「法律上の利益を有する
者」についても,上記の取消訴訟の原告適格の場合と同義に解するのが相当である
(最高裁平成元年(行ツ)第130号同4年9月22日第三小法廷判決・民集46
巻6号571頁参照)。

イ また,行政事件訴訟法37条の2第3項は,同法3条6項1号所定の義務付
けの訴えの原告適格について規定する
が,当該処分の取消処分の義務付けを求める
につき「法律上の利益を有する者」についても,上記アの取消訴訟の原告適格の場
合と同様の観点から判断すべき
ものと解するのが相当である(同法37条の2第4
項参照)。

(2) 上記の見地に立って,上告人らが本件各許可処分の無効確認等及び本件各
更新処分の取消しを求める原告適格を有するか否かについて検討する。

ア(ア) 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成22年法律第34号による改
正前のもの。以下「廃棄物処理法」という。)は,廃棄物の適正な処理等をするこ
・・・・・(略)・・・

(エ) 上記(ア)ないし(ウ)の各規定については,本件各許可処分がされてから本
件各更新処分がされるまでの間における廃棄物処理法及び関係法令の改正の前後を
通じて,その実質に差異はない。

イ 有害な物質を含む産業廃棄物等の埋立処分を行う施設である産業廃棄物の最
終処分場については,その設備に不備や欠陥があって当該最終処分場から有害な物
質が排出された場合には,これにより環境基本法2条3項にいう公害の発生原因と
なる大気や土壌の汚染,水質の汚濁,悪臭等が生じ,当該最終処分場の周辺地域に
居住する住民の生活環境が害されるおそれがあるばかりでなく,その健康に被害が
生じ,ひいてはその生命,身体に危害が及ぼされるおそれがある。このことに鑑

み,廃棄物処理法においては,上記のような事態の発生を防止するために,前記ア- 10 -
のとおり,産業廃棄物の最終処分場につき,その安全性を確保する上で必要な技術
上の基準への適合性が保持され,周辺地域の生活環境の保全が図られるための規制
等が定められており,産業廃棄物等処分業の許可に関し,その要件について最終処
分場の上記の適合性につき周辺地域の生活環境の保全という観点からもその審査を
要するとされるとともに,生活環境の保全上必要な条件を付し得るものとされ,そ
の条件の違反等を理由とする事業の停止命令や許可の取消しを行い得るなどとされ
ているものと解される。

そうすると,産業廃棄物等処分業の許可及びその更新に関する廃棄物処理法の規
定は,産業廃棄物の最終処分場から有害な物質が排出されることに起因する大気や
土壌の汚染,水質の汚濁,悪臭等によって,その最終処分場の周辺地域に居住する
住民に健康又は生活環境の被害が発生することを防止し,もってこれらの住民の健
康で文化的な生活を確保し,良好な生活環境を保全することも,その趣旨及び目的
とするものと解される。

そして,産業廃棄物の最終処分場からの有害な物質の排出に起因する大気や土壌
の汚染,水質の汚濁,悪臭等によって当該最終処分場の周辺地域に居住する住民が
直接的に受ける被害の程度は,その居住地と当該最終処分場との近接の度合いによ
っては,その健康又は生活環境に係る著しい被害を受ける事態にも至りかねないも
のである。しかるところ,産業廃棄物等処分業の許可及びその更新に関する廃棄物
処理法の規定は,上記の趣旨及び目的に鑑みれば,産業廃棄物の最終処分場の周辺
地域に居住する住民に対し,そのような最終処分場からの有害な物質の排出に起因
する大気や土壌の汚染,水質の汚濁,悪臭等によって健康又は生活環境に係る著し
い被害を受けないという具体的利益を保護しようとするものと解されるのであり,- 11 -
上記のような被害の内容,性質,程度等に照らせば,この具体的利益は,一般的公
益の中に吸収解消させることが困難なものといわなければならない。

ウ 以上のような産業廃棄物等処分業の許可及びその更新に関する廃棄物処理法
の規定の趣旨及び目的,これらの規定が産業廃棄物等処分業の許可の制度を通して
保護しようとしている利益の内容及び性質等を考慮すれば,同法は,これらの規定
を通じて,公衆衛生の向上を図るなどの公益的見地から産業廃棄物等処分業を規制
するとともに,産業廃棄物の最終処分場からの有害な物質の排出に起因する大気や
土壌の汚染,水質の汚濁,悪臭等によって健康又は生活環境に係る著しい被害を直
接的に受けるおそれのある個々の住民に対して,そのような被害を受けないという
利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが
相当である。


したがって,産業廃棄物の最終処分場の周辺に居住する住民のうち,当該最終処
分場から有害な物質が排出された場合にこれに起因する大気や土壌の汚染,水質の
汚濁,悪臭等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれの
ある者は,当該最終処分場を事業の用に供する施設としてされた産業廃棄物等処分
業の許可処分及び許可更新処分の取消し及び無効確認を求めるにつき法律上の利益
を有する者として,その取消訴訟及び無効確認訴訟における原告適格を有するもの
というべきである。また,以上の理は,前記(1)イにおいて説示したところを踏ま
えると,上記許可の取消処分の義務付けを求める訴えについても,同様に解される
(廃棄物処理法14条の3の2第2項,14条の6参照)。


エ 産業廃棄物の最終処分場の周辺に居住する住民が,当該最終処分場から有害
な物質が排出された場合にこれに起因する大気や土壌の汚染,水質の汚濁,悪臭等- 12 -
により健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に当た
るか否かは,当該住民の居住する地域が上記の著しい被害を直接的に受けるものと
想定される地域であるか否かによって判断すべきものと解される。そして,当該住
民の居住する地域がそのような地域であるか否かについては,産業廃棄物の最終処
分場の種類や規模等の具体的な諸条件を考慮に入れた上で,当該住民の居住する地
域と当該最終処分場の位置との距離関係を中心として,社会通念に照らし,合理的
に判断すべきものである(前記最高裁第三小法廷判決参照)。

しかるところ,産業廃棄物の最終処分場の設置に係る許可に際して申請書の添付
書類として提出され審査の対象となる環境影響調査報告書において,当該最終処分
場の設置が周辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査の対象とされる地域
は,最終処分場からの有害な物質の排出に起因する大気や土壌の汚染,水質の汚
濁,悪臭等がその周辺の一定範囲の地域に広がり得る性質のものであることや,前
記ア(ウ)においてみた上記の環境影響調査報告書に記載されるべき調査の項目と内
容及び調査の対象とされる地域の選定の基準等に照らせば,一般に,当該最終処分
場の種類や規模及び埋立ての対象とされる産業廃棄物等の種類等の具体的な諸条件
を踏まえ,その設置により生活環境に影響が及ぶおそれのある地域として上記の調
査の対象に選定されるものであるということができる。


これを本件についてみると,前記事実関係等によれば,本件処分場の種類や規模
及び埋立ての対象とされている産業廃棄物等の種類等は前記2(4)のとおりである
ところ,上告人X1を除くその余の上告人らは,いずれも本件処分場の中心地点か
ら約1.8㎞の範囲内の地域に居住する者であって,本件環境影響調査報告書にお
いて調査の対象とされた地域にその居住地が含まれている
というのである。そし- 13 -
て,上記のような本件処分場の種類や規模等を踏まえ,その位置と上記の居住地と
の距離関係などに加えて,環境影響調査報告書において調査の対象とされる地域
が,上記のとおり一般に当該最終処分場の設置により生活環境に影響が及ぶおそれ
のある地域として選定されるものであることを考慮すれば,上記の上告人らについ
ては,本件処分場から有害な物質が排出された場合にこれに起因する大気や土壌の
汚染,水質の汚濁,悪臭等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受
けるものと想定される地域に居住するものということができ,上記の著しい被害を
直接的に受けるおそれのある者に当たると認められるから,本件各許可処分の無効
確認等及び本件各更新処分の取消しを求める原告適格を有するものと解するのが相
当である。

これに対し,前記事実関係等によれば,上告人X1の居住地は,本件処分場の中
心地点から少なくとも20㎞以上離れており,本件環境影響調査報告書において調
査の対象とされた地域にも含まれておらず,上記のような本件処分場の種類や規模
等を踏まえ,その位置と上記の居住地との20㎞以上にも及ぶ距離関係などに照ら
せば,
同上告人については,本件処分場からの有害な物質の排出に起因する大気や
土壌の汚染,水質の汚濁,悪臭等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接
的に受けるものと想定される地域に居住するものということはできないのであっ
て,上記の著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に当たるとは認められず,
他に,同上告人が原告適格を有すると解すべき根拠は記録上も見当たらないから,
同上告人が本件各許可処分の無効確認等及び本件各更新処分の取消しを求める原告
適格を有すると解することはできない。

5 以上のとおり,上告人X1を除くその余の上告人らが本件各許可処分の無効- 14 -
確認等及び本件各更新処分の取消しを求める原告適格を有しないとした原審の判断
には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をい
う限度において理由があり,原判決のうち上記の上告人らに関する部分は破棄を免
れず,また,上記の上告人らについて本件各許可処分の無効確認等及び本件各更新
処分の取消しを求める訴えを却下した第1審判決も取消しを免れない。

そこで,本
件各許可処分及び本件各更新処分の適法性等について審理させるため,原判決のう
ち上記の上告人らに関する部分につき,本件を第1審に差し戻すべきである。

他方,上告人X1が本件各許可処分の無効確認等及び本件各更新処分の取消しを
求める原告適格を有しないとして同上告人の訴えを却下すべきものとした原審の判
断は,結論において是認することができるから,同上告人の上告は,これを棄却す
ることとする。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岡部喜代子 裁判官 大谷剛彦 裁判官 大橋正春 裁判官
木内道祥 裁判官 山崎敏充)


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