「背中を叩いてあげて」
ランドクルーザープラドの後部座席から、前のシートの彼女の背中をバシバシ叩いてあげる。まるでにわか陰陽師になったような気分。
小さいころは、こっくりさんが動いたりとオカルトの世界の経験がなきにしもあらずだが、心霊と言われるものの正体のほとんどは「変性意識状態での幻覚」だと信じてる。
つまり、科学の勉学に励んだ理系のなれの果てとして、宇宙の真理に相反する現象 -例えば力を伴わないエネルギー現象- つまり死後の世界なんてあるわけなかろうと思っている。
一方、霊感が強く、これまでに知人が亡くなったらすぐに異変のして感じるという彼女。彼女の体に変調が訪れたのは、ネパール最大のヒンドゥー教寺院、世界遺産パシュパティナートでのことだった。
シヴァ神を祭るこのパシュパティナートは、バグマティ川の川岸に建つインド亜大陸4大シヴァ寺院のひとつ。カトマンドゥ盆地の主要構成要素だ。
ヒンドゥー教徒にとってのまさに聖地。と同時に、ヒンドゥー教徒の遺体を焼いて灰にする火葬場もある。
この日もガンジス川の支流、バグマティ川の水で死者の体を清めて火葬。組み上げた薪の上に遺体を寝かせ、藁で覆った後、火をつける。息子でないと遺体に火をつけられないし、未亡人は赤い服を生涯着ることができない。遺体は燃え尽きて灰になり、その灰はバグマティ川に流される。
燃やされることで、空に還り土に還り、そして、川に流されることで水にも還れて輪廻転生を待つ。
藁がほぼ燃え尽きて、煙の勢いが薄れたのを見て、彼女は
「人は誰でもこうなるのね」とつぶやいた。
それから彼女の体調がおかしくなったわけだが、ぼくの素人考えでは原因は彼女の感受性の高さからくる自己暗示。その自己暗示を解くためには、暗示にかかった手順を逆にたどれば良い。つまり、死がきっかけなら生(性)に還ればいいってこと。
パシュパティナートから帰ってからもずっと具合が悪そうにしている彼女に
「肩もみましょうか?」に続けてつまらないジョークを言ったら、さすがは関西の女性、即座にリアクションが返ってきた。それからだった。彼女の笑顔が戻ったのは。。
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