
仕事帰りの電車の車内で「携帯、やめてくれない?」の声が聞こえた。年輩の女性の声だった。
優先席の前で吊り革につかまっていたぼくは、網棚に乗せたカバンに、マナーモードのiPhoneが電源を切らずにそのまま入っていることを思い出してドキッとした。
ぼくがいつも携帯をカバンに入れたままでチェックしないので、ぼくを知っている人たちは携帯でぼくと緊急の連絡を取れないことを知っている。それでも、親しい人たちとはチューンが合うらしく、何気にカバンに手を入れた時に振動しているiPhoneに気が付き、電車から降りた後で通話ができる。
・・・「想い」は通じるなんて言う気はない。まして、シンクロニシティ(Synchronicity:共時性)などと言う気もない。携帯で有用な連絡を受けることがほとんどないから、リアルタイムで連絡が取れたのは、単に偶然が重なっているに過ぎない。
その時、嫌だったのは、その女性が次の駅で電車から降りて、ぼくが網棚に乗せたカバンの中のiPhoneの電源をOFFにしていたら、周りの若者たちが一斉に携帯を使いだしたこと。・・・注意されなきゃ、いいってもんじゃないだろ。
次の日の帰宅中、同じ時間の同じ電車車両の同じ優先席で、また同じ女性の声が聞こえた。
「携帯、止めてって言ったでしょ」
その声のとげとげしさに驚いて振り返って見ると、座席に腰かけた昨日の女性が、目の前で携帯を操作している若い男性に向かって放った声だった。
男は
「電波、出してねえよ」
ん?・・・「機内モード」にしてる?
でも、電子機器に詳しい人なら、「機内モード」でも演算素子が高周波で動いている限り、その電子機器は電波を発振していることを知っている。飛行機に乗った時、「パソコン、デジカメ、携帯音楽プレイヤーなど、すべての電子機器の電源をお切り下さい」と言われるのは、そうした電子機器からのノイズが飛行機のNAVIや自動操縦などの計器に一時的誤動作を起こさせるリスクがあるからだ。電子機器から輻射される電波の強さは、航空機に使用される受信機の感度レベルや受信する電波の強度よりも大きい。上空に達してからの安定飛行に入れば多少のノイズは大丈夫だが、離着陸時は本当に危険となる。
厳密に言えば、腕時計や、電子レンジ、蛍光灯、マイコンを積んだ炊飯器、掃除機もノイズを発生するし、車のエンジンもスパーク・プラグがノイズ発生の原因となる。だから行機の機内では炊飯器も車も飛使ってはならない。
さて、その翌日。同じ時間の同じ電車の同じ優先席。
その日も周りに携帯をやめてと訴えた女性の声に
「うるせえんだよ。ばああ。なんで携帯が悪いんだ?」
と、酔っ払い風の男かかみついた。
「おとといも、昨日も、騒ぎやがって。第一、ペースメーカーを使ってる人間が電車に乗れるわけないだろ!嫌なら他の車両に行けよ」
心臓に埋め込んだペース・メーカー。最新の医療現場でも、ICUの装置やペースメーカーに対して、近くへの携帯の持ち込み禁止あるいは電源OFFが要求される。ICUの装置に対しては、携帯のノイズが影響を生じることが報告されている。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2738319/
実際には、最近のペースメーカーは、携帯電話の電波に対して強い設計になっている。だからと言って、新しいのにすれば良いと言うのは無神経だ。ペースメーカーの手術は、命をかけて莫大な費用を投入して行うものだ。
ペースメーカーの誤動作に恐怖を感じている人に、「車内の携帯の電源OFFは行き過ぎている。もし問題があるなら今すぐ苦しむ筈だ」とは人として決して言えない。
海外での規制はどうかというと、欧州ではおおよそ、、飛行機での携帯電話禁止はもちろん、病院と学校と映画館でマナーモードが基本。電車はOK。中には携帯依存症の人もいる。ただし、あちらの人たちは、自分の時間がほしいとか、誰かに呼ばれたくないとかで電源を切る人が多い。個人主義のあちらの人たちは、いつでもどこでもつながれるのは面倒と考えるようだ。
一方、お隣の韓国は、携帯天国。地下鉄の車内で通話がし放題。マナーもへったくれもあったものじゃない。
・・・日本の若者たちよ。せめてクリスマスの時期だけは、優先席近くでの携帯を止めね?
バーチャル世界とのつながりが切れることで、リアルな世界のつながりが深まる。
「小さいことから始めよう」なんて、きれいごとを言うつもりはない。だが、せめてクリスマスの間、電車の中で携帯の電源を切ることで、だれかが確実に平穏なひと時を迎えられるはずだ。
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