小室等ライブ&トーク「唐十郎を謳う」、素晴らしい企画であり心が躍った
ネットで「アングラ演劇」と検索すると、次のような文章に出会った。「アングラ演劇(あんぐらえんげき)とは1960年代から1980年代にかけて日本で活発に起きた舞台表現(主に演劇)の潮流である。ちなみに、『アングラ』とはアンダーグラウンドの略語である。その運動の根底には反体制主義や反商業主義の思想があり、1960年代の学生運動や市民運動の思想とも通底するものがあり、それまでの商業演劇や新劇とは一線を画して実験的な舞台表現で独特な世界を創り上げた。代表的な劇団は、寺山修司の天井桟敷、唐十郎の状況劇場、串田和美の自由劇場、佐藤信の黒色テント 68/71、鈴木忠志の早稲田小劇場など」。
何故こうしたことを書き始める気なったかと言えば、それは一昨日に「小室等ライブ&トーク『唐十郎を謳う』」に参加したからだ。この「ライブ&トーク」は、NPO法人アートファーム創立20周年企画「唐十郎の世界展」の中の、一つの企画だ。この「唐十郎の世界展」は、もちろん唐組のテント公演もあり、加えて音楽+映画+美術+対話+街区で構成されている。唐版演劇ポスターの展示やシネマセレクションとして「汚れた天使」、「シアトリカル」、「ガラスの使途」が上映される。
こうしたとてもステキな企画を具体化し開催できるのは、岡山ではアートファーム・大森誠一さん以外にはない。大森さんのご尽力で、これまでも様々な素晴らしい舞台を岡山の地で魅せていただいた。この20周年を機に、大森誠一さんとアートファームのさらなる発展をと願う。
さてその大森誠一さんの強い希望で具体化されたのが、一昨日の「小室等ライブ&トーク『唐十郎を謳う』」だそうだ。小室等さんは唐十郎の初期の舞台の頃から劇中歌の作曲を依頼されており、どうしてもその歌を謳って欲しいと思われたそうだ。
その夜は、唐十郎の舞台で歌われてきた劇中歌が、カフェ「城下公会堂」の空間に、小室等さんのステキな歌声が響き、MCでは60年代当時の「アングラ演劇」の状況なども語られて、ワクワクしながら聞かせてもらった。まさに心躍った。途中で、小堀純氏もゲストスピーカーとして登場し、唐十郎が語り合われた。「唐十郎が在(あ)る」という言葉で、その存在感を語られたのが印象に残った。
そして、小室等さんは唐十郎だけでなく、別役実や寺山修司の舞台の劇中かも謳っていただいた。加えて、サービスで市川崑劇場として製作されたテレビドラマ「木枯らし紋次郎」(1972年)の主題歌「だれかが風の中で」(作詞和田夏十)なども謳ってくれた。そして最後には、当日参加されていた劇団唐組の役者さんたちも登場して、迫力ある歌声を聞かせてもらった。
最近は、夜の外出はとても億劫になるのだが、この夜ばかりはとても心地いい時間を過ごさせてもらった。そして、「アングラ」の舞台に惹かれ続けていた若い頃のことも思い出した。少しだけビターな記憶もある。
ところで、一昨日に続いて昨晩は唐組の舞台「鉛の兵隊」を観た。その感想は後日とすることとして、今日の演劇の状況を見ていて、いささか忸怩たる思いがないではない。そろそろ唐十郎や寺山修司を超えるような、素晴らしいエネルギーを感じさせる演劇人の登場を待ち焦がれている私がいる。