tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

家計貯蓄率赤字化と日本人の行動予測

2015年01月06日 23時03分02秒 | 経済
家計貯蓄率赤字化と日本人の行動予測
 前回、2013年度の家計貯蓄率赤字化の基本的原因は高齢化の進行、典型的に言えば、平均消費性向135%(「家計調査報告」2013年)の高齢無職所帯の増加にあることを見て来ました。
 将来が心配という意見も多い中で、tnlaboは楽観的と書きましたが。その辺りをもう少し見て行きたいと思います。

 もちろん楽観的と言っても成り行きに任せればいいというわけではなく、日本人の努力が問題を解決するだろうという意味です。

 第1は、赤字化という状況が、雇用者報酬の長期停滞の最後の画面で起きているという点です。
 国民所得統計で雇用者報酬の推移を見ますと、1997年度は279兆円でした。それが、2005年度には27兆円減って252兆円に、その後いざなぎ越えで2007年度256兆円と4兆円増えましたが、リーマンショックで、2009年度には243兆円に13兆円減少、2013年度でも248兆円と5兆円の増加にすぎません。

 現実に日本経済自体が縮小し、家計の収入が減っていく中では、いかに貯蓄率を維持しても貯蓄は増えようがありません。高齢化の影響だけが出てきます。
 しかし、円高がぶり返さない限り、これから日本経済は成長経済になるでしょう。状況は変わるはずです。

 既に求人は大幅増、今後は安定雇用も増え、高齢者雇用も増加するでしょう。こうした変化は働く世代の所得である雇用者報酬を増やし、貯蓄の絶対額を増やすでしょう。高齢者の就業も容易になり、高齢無職世帯の増加にもブレーキになるでしょう。 
 これを計量的に推計することは容易ではありませんが、その結果は「アリ型」の日本人の消費・貯蓄行動に任せて見て行きたいと思います。

 第2は、これから格差社会の改善が進む(進めなければならない)と考えるからです。格差社会になれば超金持ちが巨大な貯蓄をするから貯蓄が増えるというのはどうやら誤りでしょう。日本人のような生活意識の中では、特に「中間層の厚み」が家計貯蓄率を決めるというのが実態でしょう。
 幸いなことに、与党も野党も「中間層の拡大」とか「分厚い中間層」とか言っています。現在は非正規雇用の活用に傾いている企業も、次第に従業員の能力開発を重視し、安定した長期雇用を志向することになるでしょう。

 時間が必要でしょうが、金利の正常化も今後視野に入ってくるでしょう。日本の経済社会が次第に正常化を辿る中で、 問題がどのように展開され、どのように政策がとられ、どのような結果が出るか注視していきたいと思います。