日本の実体経済、その強さと弱さ 2
前回、経済活動の中で最も重要な2つのバランスとして、労使関係のバランスと官民関係のバランスを 挙げさせて頂きました。
この2つのバランスを現実の社会・経済の中に当て嵌めてみましょう。
先ず、労使関係のバランスというのは、社会学的には、労使が敵対関係か信頼関係かといった労使の在り方の問題です。経済・経営指標で言えば、「労働分配率」に現れます。
企業レベルでは労使が協力して創出した付加価値を労使の間でいかに分配するかが春闘問題です。労使関係が信頼関係にあれば、分配の交渉は合理的なものになり、結果は企業の成長発展にとっても合理的なものになるでしょう。
労使関係が敵対的であれば、分配は力づくになり。往々企業経営に問題を生じます。
企業レベルの労働分配率の総和が、日本経済レベルの労働分配率になります。経験的には労働分配率が高すぎれば利益が減り不況になって、経済成長は止まります。
労働分配率が低すぎれば、格差社会化、生活不安、消費不振で成長が止まります。
どの程度の労働分配率が適切かは、その国や企業の経済発展段階や、経済状況、さらには「経済計画」、企業では「経営計画」の中で判断されるべき問題です。
では、官民バランスとは何でしょうか。これは社会学的(政治学的)には、政府と国民の間の信頼関係です。経済指標では「国民負担率」に現れます。国民所得のうち、何パーセントを税、社会保険料などで政府に納めているかです。昔は5公5民などと言われました。
国民負担率は、北欧諸国は最も高く、ヨーロッパ大陸諸国も高く、50~70パーセント、アメリカは30パーセント台、日本は約40パーセントです。
国民負担率が高いと社会主義的、低い方が自由主義的ということになりますが、これは、お国柄、国民文化、 政府への信頼度などによるようです。
日本ではこのほかに、政府が税金で取るのではなく、国民から借金(国債発行)して使っている分が約10パーセントあります。国民は、政府にいろいろやってほしいが、無駄遣いする政府に税金を納めるのは嫌だ、カネが無ければ、貸してやる、後からきちんと返せ、ということで国債発行残高が膨らんでいるのでしょう。
日本のこの状態というのは、官と民の信頼関係は確りせず、官への不信感も強く、その結果官民バランスは不適正で、国債発行で辻褄を合わせているということになるようです。
その結果いろいろ不具合が起きているわけで、その辺を次回見て見ましょう。