tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2018年3月期「日銀短観」:トランプ・ショックはあるか

2018年04月05日 09時42分22秒 | 経済
2018年3月期「日銀短観」:トランプ・ショックはあるか

 4月2日にこの3月時点調査の「日本銀行短期経済観測」通称「短観」が発表されました。
 このブログでも、景況感の先行きについてはずっと楽観的でしたが、3月時点の「短観」では8四半期ぶり、つまり2年ぶりの悪化という事になりました。

 悪化といっても、好況の中で多少水準の低下があった、という程度のものですが、原因は経済の自律反転などといったものではなく、好況の故の資源価格上昇によるコスト高とアメリカ発の貿易戦争の気配といった所でしょうか。

 製造業大企業の景況認識は、この3月時点のDI(良いと答えた企業の割合から悪いと答えた企業の割合を引いたもの)は24で、前回2017年12月の26から2ポイント低下しました。 非製造業大企業も25から23に低下です。
 
 製造業で大幅に下がった業種には、鉄鋼(19→10)、化学(35→26)などがあり、一方、高水準を維持しているのは機械関係です。総じて素材関連が落ち込みがひどく、加工業種は横ばいか上向きといった状態です。

そうした面から、2017年から上昇に転じた資源価格のコスト圧迫をなかなか価格に転嫁できないといった事情が言われています。

非製造業大企業でも落ち込みは25→23で、大きくはありません。
 人手不足の建設も46→43で落ち込みは軽微、不動産業は35→37と好調です。対事業所サービスも対個人サービスも数字は改善です。卸売りは多少の落ち込み、小売りは横ばいで、総じて、好況の中の足踏みといった所のようです。 

 中堅企業、中小企業の状況は、DIの数字そのものは、大企業より平均的には低いですが、製造業、非製造業ともに、殆ど落ち込みは見られず、平均数字はほぼ横ばいで推移しています。

 企業の将来活動に向けての本音とも見られます設備投資の動きについて見ますと、総じて堅調で、特にソフトウエア投資は2018年度に向けて、企業規模の大小を問わず極めて意欲的であるようです。

 現状としては、日本企業は、最近の海外環境に注意を払いつつも、日本経済の先行きには期待を持っているという所ではないでしょうか。
 世界経済は政治(国際関係)や地域紛争といった問題は孕みつつも、全般的には上向基調を保ってきており、日本経済もその中で、安定成長に乗る途上にあります。

こうした動きに水を差すのは、アメリカの仕掛ける対中、対日をはじめとした「貿易戦争」が具体的にどんなものになるかでしょう。
 トランプさんの中間選挙にかけての焦りが、世界経済を混乱に落とすかどうかです。 アメリカの良識がどこかでブレーキを掛けるだろう、という意見も強いようですが、予断を許しません。

 特に対日ではある意味で、アメリカは日本に甘えていて、何を言っても日本は黙って聞いてくれるし、国民はおとなしく我慢強いと読んでいるようです。
 という事で、また(プラザ合意、リーマンショックなどで円高がありましたが)日本に円高を強いる可能性が危惧されます。

 すでに、アメリカの金利引き上げにもかかわらず、円レートは105円~106円台で膠着状態になっています。
 今回の「短観」で製造業大企業は、円レート109円台を想定しています。今後どうなるかはアメリカの為替政策次第でしょう。この点が最大の要注意点かもしれません。