tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

自助、共助、公助、の問題を考える(7)

2020年11月06日 20時57分47秒 | 政治
「自助、共助、公助」と規制改革
 民主主義政治、自由主義経済システムが今の世界では、いわばスタンダードで、日本もその中にあるわけです。いわゆる自由世界です。
 その中でも、経済システムとしてはかなり幅があり、アメリカのような自由経済から北欧型の福祉国家までが存在します。これは、統計数字から見れば、「国民負担率」に反映されています。」
 国民負担率は、自助重視の国は低く、公助重視の国は高いということが出来ましょう。高い方から 北欧、ヨーロッパ、日本、アメリカといったところです。

 菅政権は安倍政権を継承し、規制改革、既得権の見直しを主張する新自由主義を基軸にすると言われていて、新自由主義者の竹中平蔵氏やデービッド・アトキンソン氏などがブレーン役です。

  新自由主義とは一言で言えば、北欧のように公助が大きな比率を占め、自由な経済活動を担う自助の部分が少ないと、社会主義に近づいてしまう(社会的自由主義)、そこで政府の規制を減らして民間の自由な経済活動を大事にしようという立場です。

 ですから、各種の規制や、法律制度に支えられた既得権は打破すべきという政策が出てくるわけです。

 この辺りは現実には大変ややこしくて、今回の日本学術会議の問題でも、菅総理は「学術会議の推薦を政府がそのまま任命するのは学術会議の「既得権」で、そうしたものは認めず、もっと開かれた制度にすべき」と言っています。

 ここで問題は、そのために、政府が、「任命拒否」という行動をとってしまったことでしょう。これはゲームの進行中に、現行ルールに従ってやっている選手にレフェリーがレッドカードを出した様なものです。これは当然揉めるでしょう。

 レフェリーは、今のルールは良くない、今のプレーはレッドカードを出すべきだという意見が出ているので、私の判断でやった、と弁明しますが、だれもが「それはルールが改正されてからでしょう」というのは当然です。

 学術会議は目立ってしまいましたが、携帯電話料金にしても、政府がこのぐらい下げろとか、春闘の際に賃金を何%引き上げろなどというのは、本来自由経済システムの中ではルール違反なのです。 政府は現行ルールに忠実なレフェリー であって、自分の権限を過信してプレーの中に割り込んで来てはいけないのです。

 政府は春闘では何の権限もありませんから賃上げ率は政府の言う通りにはなりませんが、携帯電話料金問題は政府が電波利用の割り当ての権限を持っていますから、民間企業は言う事を聞くしかないようです。もともと自由経済が阻害されているのです。

 本当は電波の割り当て制度が規制改革の対象になるべきなのでしょう。つまりは、政府が規制という権限を持って、プレーヤーのプレーの自由を制限していることが、携帯電話料金が下がらないことの原因という指摘も可能です。

 規制緩和、既得権打破というのは、制度を合理的(国民の多くが納得する)なものに作り変えるためで、政府の役割は最も合理的なルールを民間の意見を聞いて作ることです。
 あたらしいルールが合理的なモノであれば、経済活動は活性化するでしょう。

 その手間を省いて、政府の権力で民間の活動に介入することは、決して良い結果を生まないというのが 自由経済の経験なのです。

 自由民主党が主導権を持つ日本です。全体主義国のように、政府がプレーヤーのやることに無闇に口を出したり、自分がプレーに入ることはやめるべきではないでしょうか。