tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2020年7-9月期GDP速報:急回復の現実は?

2020年11月16日 17時12分32秒 | 経済
 今日、内閣府から2020年の7-9月期のGDP第一次速報が発表になりました。マスコミの見出しは、いつも通り所謂瞬間風速で、前期比21.4%の急上昇という事になっています。(以下数字はすべて実質値、物価変動が少ないので名目値もあまり変わらず)
 先ず、昨年の7-9月からの四半期GDPの前期比の動きは下の図の通りです。 

    2020年7-9月期GDP速報:対前期比実質成長率の推移(内閣府)  

            
 昨年の夏以来、景気は低迷気味で、7-9月は対前期ゼロ成長、10-12月、今年の1-3月は同マイナス成長、といった深刻な状況の所に4-6月から新型コロナの脅威が明確になり、緊急事態宣言になって、GDPは急落(-8.2%)となりました。

 6月からは緊急事態宣言は解除になり、徐々に経済活動が再開され、景気の更なる落ち込みを恐れる政府の意向で、7月下旬からはGo Toトラベルも始まり、「巣ごもり厳守」から解放されて、人の動きはかなり活発化してきました。

 その結果が、やっと前期比5.0%(正確には4.97%)の増というGDPの回復につながったという所です。上記の21.4%は、この5.0%の上昇が4四半期(1年)続けば年率で21.4%の経済成長になるという数字です。(1に1.0497を4回かけると21.4)
 しかし、人の動きの活発化は、同時にコロナ新規感染者の増加につながっていますので、ただし先行き不安もという解説がつく事になります。

 ここでいつも通り傾向値を見るという意味で対前年同月比の数字を見てみましょう。

    2020年7-9月期GDP速報:対前年同期比実質成長率の推移(内閣府)

        
 昨年7-9月は前年比では1.7%の成長経済でした。しかし対前月比ではゼロ成長だったわけですから、昨年夏が景気の上りから下りへの転換期という事になったようです。

そして10-12月から、前年比マイナスというマイナス成長経済になりました。(この時点で政府はまだ緩やかな上昇とかいっていました)
日本経済が自律的なマイナス成長にはまり込んで半年、そこでコロナ禍が起きたわけです。

後はもう経済の動きは自立的なものではなく、コロナのせいで今年4-6月期には日本経済は前年同月より1割強の収縮になったわけです。
昨年末の、 2020年度政府経済見通しは、超強気で、異常に高いものでしたが、コロナ禍で政府の高成長予測は雲散霧消、すべてはコロナのせいという解説が可能になったようです。

 問題はこれからで、政府はコロナ対策は二の次、頭にあるのは経済の浮揚だけという感じですが、都道府県以下では、コロナ対策が深刻な課題です。

 先行きはとても読めませんが、恐らく、国民の皆さんの、慎重さと賢明さが、コロナ禍の中での経済活動をある程度は支え、地方自治体と民間の知恵と努力で、日本経済をなんとか健全な範囲で維持するのではないかと思う(期待する)所です。

 そうなれば、政府はそれを自分の手柄のようにいうでしょうが、それを許すべきではないでしょう。
コロナ禍についての政府の軽視、無策・不作為、そして国民の努力に丸投げという態度は、このままでは、将来、厳しい批判に晒されるのではないでしょうか。