tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日銀の金融政策は何処へ行く

2022年02月22日 16時38分18秒 | 経済
去る2月14日、日銀は「指値オペ」をやりました。
10年物の国債を利回り0.25%の価格で無制限に買い入れるというのが内容です。しかし応札は全くなく空振りに終わりました。

その時は「日銀が少し安く買おうとしたんだな。マーケットの方はもっと高かったので、誰も日銀に売らなかっただけのことか」と思っていましたが、どうもそれだけではないようなので、一寸気を付けて見てみました。

世界経済がインフレ傾向を見せる中で、急激なインフレの進むアメリカが利上げ方針を打ち出し、それを受けて、主要国で金利が上昇傾向を見せる中で、日本でも「指値オペ」の直前10年物国債の利回りが0.23%まで上がったとのことで、ゼロ金利を目指す日銀は上限の0.25%以上には上げさせないという強い意思表示をしたという事のようです。

考えてみれば、黒田総裁の基本方針というのは、何はともあれ円安維持という事のようです。先日の政策決定会合でも、黒田総裁は記者に、異次元緩和継続と説明し、最近の円安傾向については、日本にとっては円安のメリットの方が大きいと説明されたようです。 

最近は、円安になると輸入物価が上がって、消費者物価も上がるという事で、賃金が上がらない中でこれは「悪い円安」その結果の「悪いインフレ」だなどという変な経済用語が使われますが、その辺を意識しての発言でしょう。

考えて見ますと、日銀は歴史的に「物価の番人」を自認し、出来るだけインフレを避け、物価安定を維持するために、円の価値を大事にしてきたように思います。

高度成長期は貯蓄増強中央委員会を主導し、国民の貯蓄による資本蓄積の基本を堅持し、高度成長を支える国民の貯蓄を奨励、生産性向上と物価の安定を目指し、固定相場制の中で、円の価値の向上策を推進していたと思います。

1970年代に入り、変動相場制の時代以なると、円の価値の上昇、変動相場制の中では円高という事になりますが、円高こそが物価安定を維持する重要な要素という事でしょうか、円高は、日本経済にとって好ましい物という基本的な姿勢を持っていたように思います。

その延長線上で、プラザ合意による過度な(日本経済の実力を上回る)円高に際しても、これは円の価値、日本経済の価値の高まりを示すもので好ましい物という立場を崩さなかったように思います。

しかし、リーマンショック後、1ドル=75円といった円高になり、当時の白川総裁が円高のデメリットの容易でない事に気づき、円安模索の姿勢を見せた直後、総裁の交替で黒田総裁が誕生、それまでの日銀の基本方針である円高容認を180度転換、異次元金融緩和による円安追求路線に入ったという経緯が読み取れるところです。
黒田総裁は、その後一貫して円安追求路線を取り続け今に至っているという事ではないでしょうか。

戦後一貫してインフレの番人、円の価値の維持向上に邁進してきた日銀が2013年を境に、円安追求に変わった、いわば歴史的転換は、日本をめぐる通貨環境の変化の結果でしょう。

1970~1980年代にかけての欧米主要先進国のインフレとスタグフレーションによる通貨価値の下落の中で一人インフレを抑え、競争力を高めた日本は、プラザ合意でその努力を無にされたばかりか過度な円高で経済の繁栄も成長さえも失いました。

そして今また円安政策を進め、ある程度(2%)のインフレ目標を掲げつつも、現実は、インフレを招かず競争力を強めています。(実施地実効為替レート50年ぶりの低さ)

欧米主要国はこれをどう見ているのでしょうか。資源価格などの値上がりで、インフレ化する国が多い中で、物価安定を維持する日本に、何時か、第2のプラザ合意が待っているのかどうか・・・。
変動相場制の中での物価問題を日銀、そして政府はどう考えているのでしょうか。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。