前回は、新年の経済、政府ベースでいえば当初予算を前提の来年度経済について、何か不健全な方向に進むのではないかという心配を書きました。
これはアメリカとの関係もあります。トランプさんの政策が関税によって、アメリカ・ファーストの実現を考えている事が、対中、対日の面で日本経済の順調な再活性化に影響を及ぼす可能性がある事、さらに、防衛装備品などの購入の要請、ドル高維持政策(円安の長期継続)の危険性などがありそうです。
しかしより問題なのは、日本自体の経済政策が、成長路線への復帰の障害になるような面が見えてきていることがあります。
その一つは、政府が「貯蓄から投資へ」というスタンスを打ち出してきている事にあります。
貯蓄というのは通常確定利付きで、利息というのは「付加価値の分配」です、しかし投資収益というのは「株や投信の値上がり」で所得を増やそうという事になります。経済成長はなくても、マネーゲームで豊かになれるという考え方です。日経平均がいくら上っても、実質経済成長とは別物で、所得格差の拡大は進んでも、経済成長は「置いてけ堀」という事になりかねません。
政府はこうした政策を採りながら、低所得層への給付金、一部産業企業への補助金で「国民生活の安定を図っている」と思っているのです。
実は大きな問題は、そこなのです、折に触れて書いているのですが、こうした実体経済を歪める経済政策は、価格機構の正常な活動を妨げる、つまり経済の実態という環境変化に対する必要な企業活動の対応を遅らせることになるのです。
価格は基本的には需給によって決まります。ガソリンが高くなればガソリン車からハイブリッド車への乗り換えが進みます。ガソリンの需要が減り価格上昇が緩やかになりCO² も減ります 。
企業が賃上げをせず、政府が給付金を出せば、財源は税金か国債で、長い国会議論と支給方法の検討が必要です。定額減税などは大変な手間でしたね。企業が賃金を上げれば、政府の手間とコストは大幅に減ります。
企業は環境変化に機敏に対応することが要請される組織です、国際競争に勝つためにも早く環境変化に対応、生産性の向上に成功して成長するのです、政府の補助金政策は、それを遅らせるものです。
何時も指摘しますように、政府はプレーヤーになってはいけないのです。
政府の役割りは、プレーヤーが最も優れたプレーをするようなルールを作る事なのです。
はっきり言えば、政府は、プラザ合意の様な経済外交の大失敗をしない事です。外国の戦争に引き込まれて国民の生命や財産を失う政策をとらない事です。
そして企業の活動を生かし、成長する経済の中で、価格機構に乗らない社会保障の様なエッセンシャル・ワークの充実を図る事でしょう。これは経済成長が無ければ出来ません。
今の政府は(野党も)当面の得票のために逆の事をしているような気がしてなりません。