2024年10月の実質賃金は対前年同月比0.0%という事でした。
昨日発表された総務省の「家計調査」では、二人以上勤労者世帯の実収入は、前年同月比で0.3%の上昇でした。これは、世帯主以外の世帯員の収入が寄与したからです。
この春、今春闘の賃上げ率は、政労使それぞれの集計でも33年ぶりの大幅上昇という事で、みな喜んだはずです。
にも拘らず、賃金が消費者物価の上昇に食われてしまって1年前に比べても上がっていないというのは何故でしょうか。
この場合原因は大きく2つでしょう。1つは、賃金の上昇不足ということになるのでしょう。もう一つは物価が上がり過ぎたからということになるのでしょう。
多分、現実は、その両方が原因だ、というのが正解なのでしょうが、問題は、どちらが、あるいは、何が主因かという事になるのでしょう。
原因が解らなければ、対策・改善策も考えようがないという事で、ここではそのあたりを少し見てみたいと思います。
賃金について考えますと、6月、7月はボーナスが昨年比大幅に増えたので、実質賃金はプラスになり、25か月続いた実質賃金マイナスは終わったと言われました。しかし8、9、10、月になるとゼロ、マイナスです。12月のボーナスがどうかですが、ボーナスを入れた年度間の数字がプラスであれば、年度間では実質賃金はプラスになり、賃金総額の引き上げの効果はあったということになるのでしょう。
物価の方を考えてみますと、値上げの原因は、輸入原料の値段が上がった、それと、人件費が上がったが2大要因でしょう。もう1つ、値上げを吸収する要因として生産性の向上があります。生産性が上がった分は物価は上がりません。
たしかに輸入物価は円安で上がり気味ですし企業物価も年率3%程度上昇と強含みです。それに加えて、10月の消費者物価指数上昇の大きな原因にコメの値上がりがあります。総務省の「消費者物価指数」では10月の対前年2.3%上昇のなかの「食料」の寄与分1.01の太宗はコメの60.3%の値上がりのようです。
米の値上がりがなければ、この所の実質賃金はプラスになっている可能性が大きいと見てもいいのではないでしょうか。
コメの値段は勿論マーケットで決まるのですが、その背後には、政府の減反政策を背景にした、コメの生産を増やさず、結果的にコメの生産性も上げないという、今日の世界で日本のコメがもてはやされるという環境変化に反応しない鈍感な農政があることは明らかです。
さらには、ガソリンが値上がりしにように、政府が赤字国債で補助金を出すことが、燃費の悪いガソリン車が減らない原因になっていることなども含め、国の政策自体にも問題点は沢山あるようです。
国民が、物事を、広く長期的視点で見ることも、消費者物価の上昇を下げるという効果もあることに思いを致す必要もありそうです。
<追記>
総務省の10月の消費者物価指数の上昇は、総合、生鮮食品を除く総合、生鮮とエネルギーを除く総合」がともに2.3%です。
厚労省が実質賃金に算出に使うのは「持ち家の帰属家賃を除く総合」で、これは上昇率が2.6%です。現金給与総額の上昇率も2.6%ですから、実質賃金上昇率は0.0%ですが、通常使われている「総合」は2.3%ですから10月は0.3%のプラスになります。