日本経済が高度成長からバブルのころにかけても、「貯蓄から投資へ」とか「銀行よ、さようなら、証券よ、こんにちは」などと言われたことが度々ありました。大体は,経済成長が順調で、株式市場が好調な時だったと思います。
日本の家計は真面目で、いつも将来の生活のことを考え、蟻とキリギリスの譬えでいえば蟻型で、頑張って貯蓄をしてきました。
ご存じのように、その貯蓄が積み上がり、今では2200兆円程になっています。日本のGDPが600兆円ですから、年間所得の3倍以上の貯蓄です。
この貯蓄を、出来ればもっと増やしたいと思うのは人情ですから、そこを狙って、銀行と証券会社は競争します。
銀行の売りは「元本は確実に保証します。それに利息が付きます」で、証券は「証券に預ければ多分銀行より増えます。時に減り危険もありますが・・」です。安全優先か、利得優先かの競い合いです。
ところがこの所は銀行預金に金利がつかなくなって、メリットは元本保障だけの様相です。そんな状況の中で政府は、何故か「貯蓄から投資へ」というキャッチフレーズでNISAを代表に、庶民の家計でも可能な少額の証券投資について、配当も値上がり益も課税免除という特典を付けて推奨を始めたのです。
確かにその効果はあって多少の貯蓄はNISAに動いたようです(家計の証券投資が23→24年で4%ほどシェアが増えたようです。
岸田前総理は、アメリカで日本の家計貯蓄のうち証券投資は2割でしかないといと演説したそうで、アメリカの投資銀行やファンドが日本でマーケティングをやったのでしょうか。
所で、日米の家計貯蓄の構成を比べてみますと下の表です。
家計貯蓄構成に日米比較 (資料:日本銀行・単位%)
日本の証券投資は、政府の旗振りで前年の17%から3~4%ほど増えてはいますが、アメリカにはとても及びません。(ヨーロッパは日米の中間ですが証券投資が30%を越えています。)
ここで疑問になるのは、政府が笛を吹いても何故日本の状況はあまり変わらないのか(逆になぜアメリカは証券投資が多いのか)。何故、証券投資が良くて、預金や貯蓄では駄目なのか、日本で貯蓄が投資に向かうには何が必要かといった事でしょう。
既にお解りかもしれません、が次回はその点を考えてみましょう。