~「裏金」を「不記入」として 澄(済)まし顔~
選挙戦たけなわです。大きな課題は日本経済の再活性化で、各党党首は減税、補助金、給付金、大型補正予算などと、政権を採ったらこんなことをして、皆さんの暮らしを豊かにしますと宣伝戦を繰り広げています。
しかし、これまでも政府がいろいろとバラマキをやってきたのに、一人当たりGDPがベストテンから転落、アベノミクス以来10年頑張っても、ズルスルと、40位近くにまで下がってしまった日本経済です。
今までの政策は駄目だったのに、また同じ方法で回復!回復!言ってみても、巧くいかないと解っているはずなのにです。
そこで、何で日本がこんな事になってしまったかを考えてみます。まず、プラザ合意による円高、バブル崩壊、円高深刻化、回復努力を挫折させたリーマンショックという過去があります。
特にリーマンショックまでは自力回復の努力が明瞭ですが、リーマンショック以降、「努力するほど円高になる」という環境の中で、政府・日銀も企業経営者も、何をやったら良いのか解らなくなったという経験があると思います。
この状態は、黒田日銀の異次元金融緩和(少し遅過ぎたようですが)で解消したのですが、その後のアベノミクスが正常化した円レートの活用し方が解らず、政府の努力で経済が回復すると思い込んで民間活力の発揮を阻害し、政府主導の掛け声とバラマキの政策に終始したこの10年の失敗は大変残念でした。
この間、民間の活力は大幅に落ち、社会の劣化のひどく、政府の政策に寄りかかるという姿勢が国内では強くなり、仕事は海外でという形で、第一次所得収支(海外からの利子・配当収入)ばかりが増えることになりました。
中でも最も大きな失敗は、円安によって大幅に下がったドル建ての賃金水準の引き上げを労使が本気でやらなかったことでした。
これによって国内の消費購買力は一向に上がらず、消費不足の片肺経済がこの10年続いてしまった結果が現状です。
この間も、輸入品の国際価は上がっていますから輸入価格は上がり、消費購買力不足で値上げ出来なかった生活必需品産業が、コロナ明けを機に一斉値上げに踏み切り、毎月実質賃金の対前年低下が25か月も続くといった異常事態が発生しています。
そこに、日本のゼロ金利を利用した国際マネーゲーマーのキャリートレードといったマネーゲームや伝説の投機家の発言、円安差益も絡む日本株暴騰という現象が発生、企業利益が極大化、賃金支払い能力の大幅増加の中で、財界からも「少し賃金を上げた方がいいのではないか」という意見が出てきたのが今年の春闘だったのでしょう。
これは経済現象としては自然な動きで、経営者自身も、経済成長のためには国内消費の増加が重要と気付いたという経済理論上の意識の表れでしょう。
その結果、日本経済は少し動き始めたようです。この動きをさらに進める事が大事で、必要なのは、前回も指摘しましたように、民間労使の合意で円安に見合う賃金水準上昇の実現でしょう。
次回その実態を見てみましょう。