tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

要注意の国際収支動向

2015年03月02日 10時16分42秒 | 経済
要注意の国際収支動向
 大抵の国では、こんな表題ならば、「国際収支の赤字に要注意」ということになるのでしょうが、日本の場合は反対です。

 先ごろまでは貿易収支の赤字が40カ月連続などといって、円安になったのに貿易赤字が改善しない、日本の製造業の国際競争力も失われてきているのではないか、この赤字の改善は困難では、などという意見もありましたが、そんなことはありません。

 ここに来て日本の輸出は着実に増加傾向になっています。高度な製品中心の日本の輸出産業で、国際取引ですから、近所のスーパーや居酒屋とは違って、値下げと言っても、売上げがすぐには伸びません。伸びるまでには、それなりの時間がかかります。

 一方輸入は次第に頭打ちになり貿易赤字の金額は急速に縮小してきています。財務省の国際収支統計(季節調整済み)で見れば、昨年の3月1兆6千億円近かった数字が、11月には6600億円、12月には3100億円になっています。

 貿易収支が赤字になっても、投資収益(第1次所得収支)でカバーして経常収支は一昨年暮れから昨年初めにかけて多少の赤字になったことはありましたが、このところは黒字が増加、昨年12月には9000億円に達しました。(数字はすべて月額)
 もしこのペースで行けば、年間10兆円を越える経常収支黒字になり、黒字幅はGDPの2パーセントに達します。

 原油価格もそう急には上がらないようですし、もし原発が再稼働すれば、LNGの輸入も減るでしょう。国際収支の大幅黒字は日本経済の健全さの証拠ですが、放置するとまた不測の事態を引き起こしかねないなどと考えてしまいます。

 EUが日本化を心配していますが、円安実現でデフレを脱出した日本が、また大幅黒字国ということで、円高を強いられる可能性も無きにしも非ずです。
 今のマネー資本主義の世界では、予断を許しません。日銀は金融緩和で対抗するかもしれませんが、円安誘導の批判などが出れば、限界もありそうです。
 アメリカが金利引き上げを延ばして、ドル高を嫌っている様子なのも気になります。

 望ましいのは内需拡大でしょうが、大幅赤字の政府が財政主導でやるのでは誰も納得しないでしょう。
 ここは民間の出番です。政府は、自分が金を使うのではなく、民間が金を使う気になるような政策を考えるべきでしょう。そのためにも国民の意識の底にある種々の「将来不安」の払拭を本気で考えてほしいものです。

格差問題: 日本の場合

2015年03月01日 10時18分11秒 | 経済
格差問題: 日本の場合
 日本の場合の格差問題というのはどうなのでしょうか。確かにいま日本の社会でも(あたかも春闘のさなかですが)、格差問題は、かなりの程度、関心の的になっています。

 ピケティの格差論は、資産格差の拡大が中心ですが、日本の場合はフロー、つまり所得格差の問題が中心で、資産格差の問題はあまり語られません。
 格差が世代間にも引き継がれていくといった問題も、日本では、現在の所得格差が学歴格差を通じて次世代に引き継がれていくことになれば問題だということでしょう。

 格差問題が語られるようになったのは、特にここ数年で、原因は非正規労働者の拡大によると思われます。そしてこの問題は、円高不況による「失われた20年」の中で、企業がサバイバルと雇用維持の狭間でとった、窮余の一策としての非正規の採用増の結果です。
 
 「失われた20年」以前、日本は北欧と並んで世界でもトップクラスの格差の小さい国だったことをご記憶の方もおいと思います。

 最近の人手不足基調の中で、企業は人材確保の面から非正規の正規転換を本気で考え始め、教育訓練を通じて、企業の長期的発展に役立つ人材に育てようという姿勢が見えて来ています。
 これからの日本経済の安定した成長の中で、労使の協力によって、こうした動きがますます徹底することを願う所です。

 正規への転換を望む非正規労働者は、雇用の38パーセントといわれる非正規労働者の中で派遣労働を中心に約3分の1ではないでしょうか。残りは家計補助や学生アルバイト、高齢退職者で、自由度の高い働き方を希望する方がたでしょう。

 日本の資産格差は、かつて「3代相続すればゼロになる」と言われた相続税の仕組みもあり(最近も更に見直されていますが)、実質的には欧米よりも、さらには急速に発展するアジア諸国よりも小さいのではないでしょうか。
 
 というのも、日本の資産価値の中で突出して大きいのは土地評価額で、バブルの時代には、日本の土地を全部売れば、面積25倍のアメリカが4つ買える(単位面積当たりの価格100倍)と言われたほどで、バブル崩壊で下がりましたが、半分程度(全国市街地平均)といったところでしょう。しかし、住んでいる土地は売れません。相続税支払でやむなく手放す人も多いようです。
 
 トップ企業の経営者の報酬も欧米に比べれば少額で、巨万の富を蓄積するような事にはなりませんし、成功した創業者の資産も相続の問題に直面します。

 日本人は、本来が真面目で、モノづくり、実体経済を大事にして、「等しからざる」を憂いつつ、豊かで住み易い国を作ってきました。この道は誤りでなかったように思います。