万引きで補導されたのは3歳の保育園児だった。2012年春、西日本のスーパーマーケット。ズボンとシャツのポケットにあめとチョコを詰め込み、背中にロールパンの袋を隠していた。

 数カ月前から児童相談所(児相)が「経済困窮によるネグレクト(育児放棄)」の疑いで見守っていた家庭の次男。「一度にたくさん盗んでいるからこの子は初犯じゃない。食べさせて、きつく叱ってください」。警察官は母親(43)に言った。

 5歳上の長男、4歳上の長女も万引きでの補導歴が複数あったが、次男が補導されたのは初めてだった。

 トラック運転手の父親(50)は仕事で深夜まで帰らず、泊まる日も。母親は家政婦として住み込みで働き、ほぼ子どもだけでアパートで暮らしていた。

 料金滞納でガスは年中不通。水道、電気もよく止まった。子どもたちの食事は1日15分ほど戻る母親らが用意したカップ麺やそうめん。空腹を満たすため万引きした。小学校を休みがちになり、午前1時ごろまで遊ぶ日もあった。

ログイン前の続き■児相に通報度々

 一家がこんな状態になったのは、父親が連帯保証人になっていた友人の借金を数年前に背負ったのがきっかけだった。給料はほぼ返済に充て、母親もパートで働いたが、家計をうまくやりくりできず、ヤミ金融から借りてしのいだ。

 「力になる」と話す友人の女性にも、母親は金を借りた。半年ほどすると家の手伝いを強要されるようになり、11年春から友人宅に住み込み始めた。ヤミ金からの厳しい取り立てに追われ、「この人に頼って返済し続けないと家族を守れない」と思い詰めていた。

 1年余りたって、不登校気味の子どもたちを心配した小学校が役所に連絡。児相職員が月に一度は家庭訪問し、改善を求めたが、母親は「子どもの面倒は見ている。私たちが育てる」と主張し続けた。その後も「外で子どもが1人で遊んでいる」「大人の姿がなくて心配」と近所から通報が相次いだ。

 13年に入り、家賃滞納で子どもたちは引っ越した。転校先の小学校が無断欠席を心配して役所に連絡。職員が家を訪ねると両親は不在で、食事も与えられていなかったため児相に連絡し、一時保護された。

■母子一緒がいい

 子どもを児童養護施設に入れることも打診されたが、二度と一緒に暮らせなくなるのではないかと心配した母親が固辞した。生活保護も考えたが、時間がかかると聞いてやめた。「現状では家族まるごと支援する方法はない」と言われ、離婚して、子どもと母子生活支援施設に入った。

 給付金を受けながら職業訓練学校に通い、医療事務の資格を取得。いまは就職し、手取り18万円ほどの月収がある。

 施設に入っても、子どもたちの乱れた暮らしはすぐには戻らない。布団の上で食事をとる。夜更かしなどのせいで登校を嫌がる。幼児のようにだだをこねる……。「子どもだけにしていた日々の影響がこんなにも大きいとは。後悔しています」と母親。負い目があり、いいなりになるか極端に叱るかしがちだった。

 職員や学校の助言で変化の兆しもある。今春、中学に進んだ長男(12)は警察官になる夢ができた。不登校状態だった長女(11)は小6になる直前から、少しずつ登校を始めた。次男(7)は発達障害と診断されて支援学級で学ぶ。

 長男は子どもだけの日々をこう振り返る。「おなかすいてた。両親は一生懸命やってくれてた。もう忘れた」(山内深紗子)

■総合的な支援を

 親が養育困難に陥り、深刻な貧困状態にある世帯を丸ごと支援する手段は、生活保護を除くと乏しい。親子を一体で保護する唯一の児童福祉施設が母子生活支援施設で、全国に247あり、3542世帯が入所する(2014年)。ただ「支援を必要とする世帯の一部にすぎない」と、児童相談所の勤務経験がある帝京科学大学の和田一郎講師(児童福祉)は言う。

 「貧困が背景のネグレクトなど、目に見えにくい虐待は、一時保護に踏み切る判断が難しい」とも指摘。親と関係がこじれそうな時でも、児相の職員が安心して判断できるよう、福岡市のように児相に弁護士を常駐させることを提案する。

 日本社会事業大学の宮島清・准教授(児童福祉)は「現状では、子どもや母子を地域から引き離して施設などに保護するか、中身がほとんどない『見守り』の二つしかない」と話し、介護保険のように、調査に基づいてケアプランを作り、実践していく仕組みが必要だと指摘する。ソーシャルワーカーが、子と親の困難を探り、当事者も一緒に、生活、就労、子育て、医療、住居などの支援を総合的に決める。「国が貧困対策を最重要課題と位置づけ、所得の再分配を進め、必要な予算と人材を確保すべきだ」と話す。

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 ご意見をasahi_forum@asahi.comメールするか、〒104・8011(所在地不要)朝日新聞オピニオン編集部「子どもと貧困」係へお寄せください。

下はネットで見た西宮市の広報の一部です。手順がわかりやすく書いてあります。


  僕のように長いこと福祉の仕事をしてきて わりあい制度を知っているつもりでいても福祉の窓口へ行くと「できません」と言われることがままあります。 

  先日も障害者福祉サービスが必要な方がおられて広島市の区役所・障害福祉係へ行きました。障害者手帳は所持しています。

  窓口では、「どこでどんなサービスを受けるのかを決めてから申請してください」ええ?と耳を疑いましたが、窓口で応対された人はそれがごくごく当たり前のような話し方。事業者の一覧表を渡しておしまいにしようとします。

  地域にすんでいる人はどんなサービスがあるのか、どこでそれは受けられるのかでまず相談に行かれると思うのですが。

  そして障害者相談支援事業所ではこうです。

  「通いたい作業所を決めてから来てください、そしたら支援計画を作ります」


  療育手帳の申請の際もそうでした。

  「今日は担当者がいないのでいる時にしてください。」

  そして担当者の出勤日に行くと

  「知的障害者更正相談所の判定を受けてから申請書をお渡しします」

  逆さやろがなあ。

  広島市の生活保護の窓口はとても優しくなっています。まずは話を聞こうとの姿勢が感じられます。でも同じ福祉事務所でも他の係ではまだまだです。これはなんででしょうか?     お一人お一人の資質の問題なんかなあ?


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