守田です。(20110804 23:30)
昨夜、(4日未明)NHKスペシャルの再放送で、「封印された原爆報告書」という
非常に重要な内容を取り上げた番組が放映されました。昨年8月6日に流されたも
のです。実は昨夜、出張で東京のホテルに泊まっていたのですが、そこで番組を
みながらこれは凄いと感じてツイートで番組を実況中継?しました。それをここ
に掲載させていただきます。
**********
8月4日未明のつぶやきより。(なおツイッターは、@toshikyotoです)
出張中で東京池袋のホテルにいてテレビをみています。NHKが重要な番組を放映中。
広島原爆後の被爆調査と米軍、日本軍の関係を追いかけています。
posted at 00:40:31
被爆後、陸軍はすぐに調査を開始。なんとそれを英訳して積極的にアメリカ軍に
提供しました。大本営にいた元陸軍軍医は731のことなどあったからと語りました。
posted at 00:44:35
つまり731部隊をはじめとした日本軍の戦争犯罪の追及を逃れるために、被爆情報
を差し出したのです。原爆は最も有効なカードだったと元軍医。
posted at 00:47:23
この調査から死亡曲線という殺傷能力データをアメリカ軍は得ました。アメリカ
側の元調査団員は、革命的な情報だったと語りました。これで初めて原爆の具体的
な殺傷能力が分かったからです。
posted at 00:49:50
ここからアメリカ軍は、ソ連の主要都市を壊滅するには原爆が何個必要かを割り出
しました。例えばモスクワは6個で壊滅できると判断されました。
posted at 00:52:12
その際、殺傷能力調査の一番の対象になったのはなんと子どもたちの記録でした。
建物疎開で外に集団で子どもたちが出ていたために、どこにいたらどれだけ死ぬか
が明確になったからです。
posted at 00:56:50
アクセスが悪くなったので番組のライブ報告を中止します。ともあれ憤りなくして
は見れない番組です。 にんげんをかえせ!
***********
以上、途中までしかお知らせできなかったのですが、この番組については何とか
手に入れて、もう一度丁寧に解説したいと思っています。
(録画をみせていただける方があればご連絡ください)
この番組をみながら思ったことは、そもそも原子力発電が原爆開発の中からでて
きたこと、「原発は核開発の副産物」であることへの認識を、311事態後の今、
しっかりと深めていかなくてはならないということです。
何故かといえば、核開発を維持し、進め、拡大するために、放射線の害が非常に
小さく報告されてきたからです。
そもそも広島・長崎における被爆調査は、核戦略を確立するために使われていっ
た。これがNHKスペシャルで明らかにされていた点ですが、その核戦略の中に、
放射線の害を小さくみせること、とくに内部被曝の恐ろしさを隠してしまうこと
が含まれていたのです。
そしてそのことが今、私たちを大きく苦しめる要因になっています。原発事故
被災地からの避難、子どもたちの疎開が進められず、被曝対策も公的には全く
とられてこなかったことも、こうしたことを背景としています。その意味で、
今なお原発は、核兵器と大きく絡まって存在しています。
この点について、僕は清水ただしさんの派遣村テレビに出させていただいて解説
しました。6月25日放送分においてです。今回はこの放送の内容を文字起ししま
したので、掲載したいと思います。(上)と(下)の2回に分けます。
なお、派遣村テレビ村長の清水ただしさんを「ただし」。アシスタントの清水
共子さんを、「ともこ」と書かせていただきました。
************
原発は核開発の副産物
http://www.youtube.com/watch?v=GNEhFjWWOp8&feature=related
福島原発での被曝の現実
ともこ 福島で子どもさんが鼻血をだされているそうですね。
守田 大変、深刻ですね。内部被曝が進んでいるのだと思います。
ただし 20ミリシーベルトと言ったり、1ミリと言ったり、文部科学省の態度も
あいまいですよね。
守田 子どもさんだけではなくて、大人の方もけっこう鼻血を出されていまし
て、私が聞いたのでは、東京から避難されてきた女性も鼻血を出されて
いました。
ただし 東京から・・・
守田 ええ、だから福島だけではないと思います。
ただし もうちょっと政府が正確な情報を出して欲しいですよね。
守田 まったく出さないですね。
ともこ 鼻血っていうと、普通に出たりすることがありますけれど、放射能が原
因で出ているってどういうふうな感じなんでしょうか。
守田 内部被曝の初期症状としてあると言われています。他に下痢などがあり
ます。
ただし そういう症状が出たらすぐに病院に行くのが大事ですよね。
守田 ええ、大事なのですけれども、現在の医療ではなかなか(内部被曝とし
ては)診てもらえないのですよね。今日はそのことにも後で触れたいと
思います。
ともこ その前に今日はさっき、村長がタイトルを言いました。「原発は核開発
の副産物である」。これ漢字が並んでいるんですが、ここをお願いします。
核エネルギーの仕組みとプルトニウム
守田 それでは今日は、原発と核開発についてお話したいのですが、まずはおみ
せしたいのは、原子力開発、あるいは核エネルギーの仕組みです。ごく簡
単にいいますと、まずウランという核分裂性の物資があります。これは天
然にある物質で、そのウランが中性子を取り込むと、プルトニウムになり
ます。これは人工的にできる物質です。
ここに(ウランかプルトニウム)に中性子が当たると、分裂するのですね。
分裂をしたときにエネルギーが出る。これが原子力発電にも使われるし、
核爆弾にも使われます。
ただし 凄いエネルギーを多分、出すのですね。
守田 そうです。大変なエネルギーが出ます。エネルギーが出ると同時に、また
この分裂のときに、中性子が飛び出すのですね。飛び出した中性子が次の
ウランやプルトニウムに当たって、いわゆる核分裂連鎖反応が起きる。一
言で言えば、これが一瞬のうちに爆発的に起こるのが原爆。これを制御し
て、ゆっくり起すのが原子力発電です。
ただし なるほど。つまり原子炉と核爆弾というのは、同じようなものだと言うこ
とですね。
守田 ある意味では連関しているものですね。
それで分裂するとどうなるか。次の図をお見せしますが、ここにウラン235
と書いてあります。235というのは質量、重さですね。それが分裂すると、
だいたいこの質量を二つに割ったぐらい。ここには±95と±138と書いてあ
りますけれど、その物質に分かれます。
よくヨウ素131とか聞きますよね。ストロンチウム90とか。だいたいウラン
235が割れるとその辺の値の物質になるのです。これが放射性物質、死の灰
とも呼ばれるものです。それが飛び出してくる仕組みなのです。
ただし それが一番人体や環境に影響を与えるものなのですね。
守田 そうです。
次のグラフを見て欲しいのですが、これは天然ウランの中に、核分裂する
ウランがどれぐらい入っているかを示したものです。核分裂するウランは
ウラン235と言いまして、天然ウランの中の0.7%しかないのです。
ただし ほんのちょっとだけですよね。へえ。
守田 あとの99.3%はウラン238といいまして、これは核分裂しないのです。
ただし そうしたら無駄なものというか、必要のないものなのですね。逆に使って
いるのはほんの少し何ですね。
守田 ところがこれは必要のないものでもないんですが、それはどういうことか
といいますと、ウランだけで考えるならば、0.7%ではなかなか核分裂が
進まないので、原爆を考えるなら、これを100%近くにもっていかないと
いけないのですね。これを濃縮といいます。
原子力発電の場合は、そこまで高濃度に濃縮しなくていいので、だいたい
3%から5%に濃縮して使っています。
ただし これはなかなか技術的に難しいんですよね。ウランの濃縮に成功したとか
よくいいますもんね。
守田 そうなのです。難しいし実はこれにもの凄くエネルギーがかかるのですね。
それで、もっとうまい方法はないかとなって、実は人類が発見したのが、
このウラン238を原子炉の中に入れておくと、ここにも中性子が当たるわけ
ですね。ウラン235の方は、中性子が当たると核分裂しますが、ウラン238
はいわば中性子を食べてしまい、違う物質に変わるのです。それがプルト
ニウムなのです。
ともこ それがあの噂のプルトニウムに。
守田 順番としてはウラン238に中性子があたって、ウラン239になって、ネプツ
ニウム239になって、だんだんに変わっていくのですが、最終的にプルトニ
ウム239が生まれます。つまりこれは人類が人工的に作った核分裂性物質
なのです。これが人類の第発見と言われました。
ところがこれが発見されたのが、ちょうど戦争の最中だったのですね。
1940年代のことでした。
ただし 第二次世界大戦の最中ですね。
原子爆弾と原子力発電
守田 そうなんです。その過程の中で、ウランを濃縮するのには大変時間もエネ
ルギーもかかる。だとしたらウラン238に中性子をあてれば、プルトニウム
は幾らでもできてくる。だったらこのプルトニウムを使って原子爆弾を作
ろうということになったのです。
ただし プルトニウムもそういうエネルギーがあるのですね。
守田 いやウランよりももっと核分裂しやすい。エネルギーもたくさん出します。
それで次に見せる絵は、私は見せるのが嫌なものなのですが・・・。
ただし あ、これは原爆じゃありませんか。
守田 はい。原爆は私達の国は、みなさん御存じなように、広島と長崎に落とさ
れたわけですが、実はアメリカには広島と長崎に二つ落とす理由があった
のです。
ともこ なんで、なんで?
守田 それはですね。ウランで作った原爆と、プルトニウムで作った原爆を試し
たかったのです。
ともこ 実験ですか・・・。
守田 ええ。
ただし 違うタイプの爆弾を落としたかったんや。
ともこ どっちがウランでどっちがプルトニウムですか。
守田 広島がウランで、長崎がプルトニウムです。
これは先程も言った、ウランを濃縮して原爆を作るのが早いのか。プルト
ニウムを作って原爆を作るのが早いのか。同時、アメリカも戦争中ですか
ら、実験をして確かめている余裕がなかったのですね。それでいっぺんに
両方、計画を走らせたのです。
ともこ それで6日と9日に・・・。
守田 ええ。6日と9日の分ができてしまって、正確にはプルトニウム型原爆は
もう一つ作って、それは7月に実験しているんです。
ともこ どこでですか?
守田 アメリカでです。
それで簡単に構造を説明しますと、こんな話はしたくないのですが・・・
ただし 一応、参考までに
守田 ウランもプルトニウムもそうなのですが、核分裂性物質というのは、ある
量をいっぺんにぐちゃっともってくると、核分裂をわっと起すのですね。
だから分けていたものをいっぺんにばんとぶつけるのが核爆弾の仕組みで、
ウランの場合は、両側にウランをおいておいて、その外側に爆薬をおいて
おいて、その爆薬が破裂すると、ウランがひっつく。それで爆発させる仕
組みなのです。
ただし なるほど。一度、爆弾の中で爆発させて、その勢いやエネルギーでウラン
を爆発させるということですね。なるほど、なるほど。
守田 ところがプルトニウムの方は、さきほどもいいましたように、ウランより
も核分裂しやすいので、ウランは大きく二つに分けましたけれども、プル
トニウムは二つに分けただけで爆発してしまうのです。
ともこ へえー。
守田 なのでもう少し小分けにして、ボールの真中に小分けしてその周りに火薬
を配置して、この火薬が爆発して、一気にがっと爆縮するのです。
ただし でもたった一発の爆弾で、何万人という人の命や建物が奪われるわけじゃ
ないですか。凄いエネルギーですよね。
守田 もの凄いエネルギーであると同時に、本当に残酷です。それから何カ月も
かけて、どんどん、手の施しようもなく、人が亡くなっていきました。
核心問題は、このプルトニウムを作るためにどうしたらいいのかです。
さっき、原子力発電と核爆弾の違いということを言いましたけれども、実
は、ゆっくり核分裂反応をさせて、プルトニウムを作るというのが、もと
もとの原子炉の目的なのです。
つまりプルトニウムを作るときに爆発したら大変ですよね。
ともこ はい、はい、はい。
守田 だからプルトニウムを作る過程では、ゆっくり核分裂をしないと、プルト
ニウムを取り出すこともできないわけです。それで作られたのがもともと
の原子炉なのですよ。この場合の原子炉はプルトニウム生産炉と呼びます。
ところがプルトニウムを作るときに、核分裂していますから、核分裂で
エネルギーがたくさん出て、熱がたくさん出るわけですね。この熱をどう
しようか。それで水とか、冷却材を回すわけですね。それでそれが熱を
もって出て来る。これ何かに使えないか。タービンを回してしまおう。と
いうことで出てきたのが原子力発電なのです。
ただし ということは、もともとは爆弾というか、兵器を作る過程でそのエネルギ
ーを何かに利用しようということでタービンを回したのですね。
守田 そうです。
ともこ だから副産物なんだ。
守田 特に戦争が終わって、それが何か他のものに利用しないと、作ったものが
無駄にもなってしまう。それで一つの説としてあるのが、原子力潜水艦に
使おうではないかということで、エネルギーに使うということが出てきた
という話です。
ただし その当時から安全性は二の次、三の次という感じですよね。
守田 そうですねえ、その場合、二の次、三の次と言っても、作っている側に
とっても、爆発したら困るのですね。ですから制御はできなくてはいけな
い。ただ軍事用ですから、多少、放射能が出てもそんなことは関係ないと
思うような人殺し兵器ですから。そのような形で作られたということを
頭に入れておく必要があると思います。
昨夜、(4日未明)NHKスペシャルの再放送で、「封印された原爆報告書」という
非常に重要な内容を取り上げた番組が放映されました。昨年8月6日に流されたも
のです。実は昨夜、出張で東京のホテルに泊まっていたのですが、そこで番組を
みながらこれは凄いと感じてツイートで番組を実況中継?しました。それをここ
に掲載させていただきます。
**********
8月4日未明のつぶやきより。(なおツイッターは、@toshikyotoです)
出張中で東京池袋のホテルにいてテレビをみています。NHKが重要な番組を放映中。
広島原爆後の被爆調査と米軍、日本軍の関係を追いかけています。
posted at 00:40:31
被爆後、陸軍はすぐに調査を開始。なんとそれを英訳して積極的にアメリカ軍に
提供しました。大本営にいた元陸軍軍医は731のことなどあったからと語りました。
posted at 00:44:35
つまり731部隊をはじめとした日本軍の戦争犯罪の追及を逃れるために、被爆情報
を差し出したのです。原爆は最も有効なカードだったと元軍医。
posted at 00:47:23
この調査から死亡曲線という殺傷能力データをアメリカ軍は得ました。アメリカ
側の元調査団員は、革命的な情報だったと語りました。これで初めて原爆の具体的
な殺傷能力が分かったからです。
posted at 00:49:50
ここからアメリカ軍は、ソ連の主要都市を壊滅するには原爆が何個必要かを割り出
しました。例えばモスクワは6個で壊滅できると判断されました。
posted at 00:52:12
その際、殺傷能力調査の一番の対象になったのはなんと子どもたちの記録でした。
建物疎開で外に集団で子どもたちが出ていたために、どこにいたらどれだけ死ぬか
が明確になったからです。
posted at 00:56:50
アクセスが悪くなったので番組のライブ報告を中止します。ともあれ憤りなくして
は見れない番組です。 にんげんをかえせ!
***********
以上、途中までしかお知らせできなかったのですが、この番組については何とか
手に入れて、もう一度丁寧に解説したいと思っています。
(録画をみせていただける方があればご連絡ください)
この番組をみながら思ったことは、そもそも原子力発電が原爆開発の中からでて
きたこと、「原発は核開発の副産物」であることへの認識を、311事態後の今、
しっかりと深めていかなくてはならないということです。
何故かといえば、核開発を維持し、進め、拡大するために、放射線の害が非常に
小さく報告されてきたからです。
そもそも広島・長崎における被爆調査は、核戦略を確立するために使われていっ
た。これがNHKスペシャルで明らかにされていた点ですが、その核戦略の中に、
放射線の害を小さくみせること、とくに内部被曝の恐ろしさを隠してしまうこと
が含まれていたのです。
そしてそのことが今、私たちを大きく苦しめる要因になっています。原発事故
被災地からの避難、子どもたちの疎開が進められず、被曝対策も公的には全く
とられてこなかったことも、こうしたことを背景としています。その意味で、
今なお原発は、核兵器と大きく絡まって存在しています。
この点について、僕は清水ただしさんの派遣村テレビに出させていただいて解説
しました。6月25日放送分においてです。今回はこの放送の内容を文字起ししま
したので、掲載したいと思います。(上)と(下)の2回に分けます。
なお、派遣村テレビ村長の清水ただしさんを「ただし」。アシスタントの清水
共子さんを、「ともこ」と書かせていただきました。
************
原発は核開発の副産物
http://www.youtube.com/watch?v=GNEhFjWWOp8&feature=related
福島原発での被曝の現実
ともこ 福島で子どもさんが鼻血をだされているそうですね。
守田 大変、深刻ですね。内部被曝が進んでいるのだと思います。
ただし 20ミリシーベルトと言ったり、1ミリと言ったり、文部科学省の態度も
あいまいですよね。
守田 子どもさんだけではなくて、大人の方もけっこう鼻血を出されていまし
て、私が聞いたのでは、東京から避難されてきた女性も鼻血を出されて
いました。
ただし 東京から・・・
守田 ええ、だから福島だけではないと思います。
ただし もうちょっと政府が正確な情報を出して欲しいですよね。
守田 まったく出さないですね。
ともこ 鼻血っていうと、普通に出たりすることがありますけれど、放射能が原
因で出ているってどういうふうな感じなんでしょうか。
守田 内部被曝の初期症状としてあると言われています。他に下痢などがあり
ます。
ただし そういう症状が出たらすぐに病院に行くのが大事ですよね。
守田 ええ、大事なのですけれども、現在の医療ではなかなか(内部被曝とし
ては)診てもらえないのですよね。今日はそのことにも後で触れたいと
思います。
ともこ その前に今日はさっき、村長がタイトルを言いました。「原発は核開発
の副産物である」。これ漢字が並んでいるんですが、ここをお願いします。
核エネルギーの仕組みとプルトニウム
守田 それでは今日は、原発と核開発についてお話したいのですが、まずはおみ
せしたいのは、原子力開発、あるいは核エネルギーの仕組みです。ごく簡
単にいいますと、まずウランという核分裂性の物資があります。これは天
然にある物質で、そのウランが中性子を取り込むと、プルトニウムになり
ます。これは人工的にできる物質です。
ここに(ウランかプルトニウム)に中性子が当たると、分裂するのですね。
分裂をしたときにエネルギーが出る。これが原子力発電にも使われるし、
核爆弾にも使われます。
ただし 凄いエネルギーを多分、出すのですね。
守田 そうです。大変なエネルギーが出ます。エネルギーが出ると同時に、また
この分裂のときに、中性子が飛び出すのですね。飛び出した中性子が次の
ウランやプルトニウムに当たって、いわゆる核分裂連鎖反応が起きる。一
言で言えば、これが一瞬のうちに爆発的に起こるのが原爆。これを制御し
て、ゆっくり起すのが原子力発電です。
ただし なるほど。つまり原子炉と核爆弾というのは、同じようなものだと言うこ
とですね。
守田 ある意味では連関しているものですね。
それで分裂するとどうなるか。次の図をお見せしますが、ここにウラン235
と書いてあります。235というのは質量、重さですね。それが分裂すると、
だいたいこの質量を二つに割ったぐらい。ここには±95と±138と書いてあ
りますけれど、その物質に分かれます。
よくヨウ素131とか聞きますよね。ストロンチウム90とか。だいたいウラン
235が割れるとその辺の値の物質になるのです。これが放射性物質、死の灰
とも呼ばれるものです。それが飛び出してくる仕組みなのです。
ただし それが一番人体や環境に影響を与えるものなのですね。
守田 そうです。
次のグラフを見て欲しいのですが、これは天然ウランの中に、核分裂する
ウランがどれぐらい入っているかを示したものです。核分裂するウランは
ウラン235と言いまして、天然ウランの中の0.7%しかないのです。
ただし ほんのちょっとだけですよね。へえ。
守田 あとの99.3%はウラン238といいまして、これは核分裂しないのです。
ただし そうしたら無駄なものというか、必要のないものなのですね。逆に使って
いるのはほんの少し何ですね。
守田 ところがこれは必要のないものでもないんですが、それはどういうことか
といいますと、ウランだけで考えるならば、0.7%ではなかなか核分裂が
進まないので、原爆を考えるなら、これを100%近くにもっていかないと
いけないのですね。これを濃縮といいます。
原子力発電の場合は、そこまで高濃度に濃縮しなくていいので、だいたい
3%から5%に濃縮して使っています。
ただし これはなかなか技術的に難しいんですよね。ウランの濃縮に成功したとか
よくいいますもんね。
守田 そうなのです。難しいし実はこれにもの凄くエネルギーがかかるのですね。
それで、もっとうまい方法はないかとなって、実は人類が発見したのが、
このウラン238を原子炉の中に入れておくと、ここにも中性子が当たるわけ
ですね。ウラン235の方は、中性子が当たると核分裂しますが、ウラン238
はいわば中性子を食べてしまい、違う物質に変わるのです。それがプルト
ニウムなのです。
ともこ それがあの噂のプルトニウムに。
守田 順番としてはウラン238に中性子があたって、ウラン239になって、ネプツ
ニウム239になって、だんだんに変わっていくのですが、最終的にプルトニ
ウム239が生まれます。つまりこれは人類が人工的に作った核分裂性物質
なのです。これが人類の第発見と言われました。
ところがこれが発見されたのが、ちょうど戦争の最中だったのですね。
1940年代のことでした。
ただし 第二次世界大戦の最中ですね。
原子爆弾と原子力発電
守田 そうなんです。その過程の中で、ウランを濃縮するのには大変時間もエネ
ルギーもかかる。だとしたらウラン238に中性子をあてれば、プルトニウム
は幾らでもできてくる。だったらこのプルトニウムを使って原子爆弾を作
ろうということになったのです。
ただし プルトニウムもそういうエネルギーがあるのですね。
守田 いやウランよりももっと核分裂しやすい。エネルギーもたくさん出します。
それで次に見せる絵は、私は見せるのが嫌なものなのですが・・・。
ただし あ、これは原爆じゃありませんか。
守田 はい。原爆は私達の国は、みなさん御存じなように、広島と長崎に落とさ
れたわけですが、実はアメリカには広島と長崎に二つ落とす理由があった
のです。
ともこ なんで、なんで?
守田 それはですね。ウランで作った原爆と、プルトニウムで作った原爆を試し
たかったのです。
ともこ 実験ですか・・・。
守田 ええ。
ただし 違うタイプの爆弾を落としたかったんや。
ともこ どっちがウランでどっちがプルトニウムですか。
守田 広島がウランで、長崎がプルトニウムです。
これは先程も言った、ウランを濃縮して原爆を作るのが早いのか。プルト
ニウムを作って原爆を作るのが早いのか。同時、アメリカも戦争中ですか
ら、実験をして確かめている余裕がなかったのですね。それでいっぺんに
両方、計画を走らせたのです。
ともこ それで6日と9日に・・・。
守田 ええ。6日と9日の分ができてしまって、正確にはプルトニウム型原爆は
もう一つ作って、それは7月に実験しているんです。
ともこ どこでですか?
守田 アメリカでです。
それで簡単に構造を説明しますと、こんな話はしたくないのですが・・・
ただし 一応、参考までに
守田 ウランもプルトニウムもそうなのですが、核分裂性物質というのは、ある
量をいっぺんにぐちゃっともってくると、核分裂をわっと起すのですね。
だから分けていたものをいっぺんにばんとぶつけるのが核爆弾の仕組みで、
ウランの場合は、両側にウランをおいておいて、その外側に爆薬をおいて
おいて、その爆薬が破裂すると、ウランがひっつく。それで爆発させる仕
組みなのです。
ただし なるほど。一度、爆弾の中で爆発させて、その勢いやエネルギーでウラン
を爆発させるということですね。なるほど、なるほど。
守田 ところがプルトニウムの方は、さきほどもいいましたように、ウランより
も核分裂しやすいので、ウランは大きく二つに分けましたけれども、プル
トニウムは二つに分けただけで爆発してしまうのです。
ともこ へえー。
守田 なのでもう少し小分けにして、ボールの真中に小分けしてその周りに火薬
を配置して、この火薬が爆発して、一気にがっと爆縮するのです。
ただし でもたった一発の爆弾で、何万人という人の命や建物が奪われるわけじゃ
ないですか。凄いエネルギーですよね。
守田 もの凄いエネルギーであると同時に、本当に残酷です。それから何カ月も
かけて、どんどん、手の施しようもなく、人が亡くなっていきました。
核心問題は、このプルトニウムを作るためにどうしたらいいのかです。
さっき、原子力発電と核爆弾の違いということを言いましたけれども、実
は、ゆっくり核分裂反応をさせて、プルトニウムを作るというのが、もと
もとの原子炉の目的なのです。
つまりプルトニウムを作るときに爆発したら大変ですよね。
ともこ はい、はい、はい。
守田 だからプルトニウムを作る過程では、ゆっくり核分裂をしないと、プルト
ニウムを取り出すこともできないわけです。それで作られたのがもともと
の原子炉なのですよ。この場合の原子炉はプルトニウム生産炉と呼びます。
ところがプルトニウムを作るときに、核分裂していますから、核分裂で
エネルギーがたくさん出て、熱がたくさん出るわけですね。この熱をどう
しようか。それで水とか、冷却材を回すわけですね。それでそれが熱を
もって出て来る。これ何かに使えないか。タービンを回してしまおう。と
いうことで出てきたのが原子力発電なのです。
ただし ということは、もともとは爆弾というか、兵器を作る過程でそのエネルギ
ーを何かに利用しようということでタービンを回したのですね。
守田 そうです。
ともこ だから副産物なんだ。
守田 特に戦争が終わって、それが何か他のものに利用しないと、作ったものが
無駄にもなってしまう。それで一つの説としてあるのが、原子力潜水艦に
使おうではないかということで、エネルギーに使うということが出てきた
という話です。
ただし その当時から安全性は二の次、三の次という感じですよね。
守田 そうですねえ、その場合、二の次、三の次と言っても、作っている側に
とっても、爆発したら困るのですね。ですから制御はできなくてはいけな
い。ただ軍事用ですから、多少、放射能が出てもそんなことは関係ないと
思うような人殺し兵器ですから。そのような形で作られたということを
頭に入れておく必要があると思います。