守田です。(20110807 10:30)
昨日8月6日は広島に原爆が投下された日でした。明後日、8月9日は
長崎に原爆が投下された日です。広島に投下されたのはウランを
使った原爆でした。長崎に投下されたのはプルトニウムを使った原
爆でした。
すでに「明日に向けて(216)原発は核兵器開発の副産物(上)」
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/8927243c31aba162677214f21b5a0cb2
の中で説明しましたが、アメリカが二つの都市に原爆を落とした
のは二つのタイプのものを開発していたため、双方の威力を試した
かったからです。
ウラン型原爆は、ウランの濃縮によって作ります。天然ウランの中
に占める核分裂性のウラン235の占める割合はわずか0.7%。これを
より集めて、100%に近くまで濃縮して作るのがウラン型原爆で、
製造に多大な労力とエネルギーがかかります。
プルトニウム型原爆は、天然のウランの99.3%を占める核分裂をし
ないウラン238に中性子があたることで、プルトニウム239が生成さ
れることに注目し、これを再処理によって取り出して、原爆の材料
にします。このときかなりの放射能漏れを起こします。
ウラン型原爆は大きく二つに分けたウランを爆弾の中で通常火薬に
よってぶつけることで核分裂を起こさせます。これを爆縮といいま
す。プルトニウムは小分けしないと勝手に核分裂してしまうので、
ボールの中に分散し、外側の火薬で爆縮させて核分裂させます。
ウラン型が比較的核分裂に容易に達することに対して、プルトニウ
ムの爆縮の方が難しいとされており、事実アメリカは当初、ウラン
型原爆1個と、プルトニウム型原爆2個を作り、後者のうちの一つを、
1945年7月にアメリカで実験的に爆発させています。
この二つのタイプの違う原爆を持ったので、アメリカはどうしても
二個を投下したかった。そのために広島と長崎が選ばれたのです。
しかもアメリカは広島では、もっとも人が多く外にいる時間帯を狙
って、原爆を投下しました。それが8時15分でした。
この原爆投下は明らかに戦争犯罪です。武装しない一般市民の無差
別殺りくだからです。もちろんこれはすべての都市空襲にも該当す
るし、沖縄上陸作戦にも該当します。アメリカは1944年秋から大変
野蛮な戦争犯罪を連続させました。
これに対して日本はどうだったのかというと、世界で初めて爆撃機
を連ねて行う「戦略爆撃」を行いました。中国国民党政府のあった
重慶が対象となりました。このほか南京大虐殺をはじめ、数々の戦
争犯罪を犯しました。
その多くは告発され、裁かれていますが、日本政府の反省や謝罪は
いずれもあまりに不誠実です。このため南京大虐殺等々にについて、
そのような事実はなかったという論陣をはる人々もいます。しかし
あったとすればそれが戦争犯罪であることを否定する人は誰もいない。
ところが広島・長崎への原爆投下については、それがあったのかな
かったのかなど誰も論議などしない。その上で、アメリカは今なお
これを正義だとしています。大変恐ろしいことであるし、道義上、
どうしても許すことのできないことがらです。
つい最近も米空軍が、有事の核ミサイル発射を担う将校向けの訓練の
一環として、キリスト教の「聖戦」論を20年以上にわたり講義して
きたことが判明しました。しかも今年7月まで続けられていたのです。
これを報じた朝日新聞の記事を末尾に貼り付けておきます。
記事にはこう書かれています。「訓練初期にある倫理の講義を担当す
る従軍牧師が用いた資料が、「核の倫理」という項目で、旧約・新約
聖書の記述を多数引用していた」。これがアメリカ憲法の政教分離原
則に抵触するからと中止されたといいます。
しかし問題は政教分離にあるのでしょうか。そうではなくて、核攻撃
を正義とすることにこそある。これは広島・長崎のことを何ら反省し
ないことの上に重ねられてきた誤りです。アメリカはそれだけでなく
都市空襲も何も反省していないし、今もそれを繰り返しています。
私たちはこの歴史を終わらせなければいけない。戦争そのものも悪だ
と僕は思いますが、どうしてもというのなら、軍隊同士が誰もいない
野原にいってやってくださいというしかない。事実、かつての戦争の
多くはそうして闘われました。
しかし非武装の市民、いや軍人であっても無抵抗のものを殺害するの
は戦争犯罪です。戦争に倫理を持ち込むことに抵抗も感じますが、戦
争を克服できない人類が、今、到達している倫理は、戦争は止められ
なくても、無差別殺戮や大量殺戮は許さないとしています。
ところがアメリカは原爆投下を今も正義としている。それどころか核
攻撃は聖戦だという講義まで行っています。そして日本への大空襲に
続き、朝鮮半島に空襲を行い、ベトナムに空襲を行いました。さらに
イラク・アフガニスタン・リビア等々にも行っています。
ちなみにイラク攻撃のときに、日本の新聞は空襲と書かずに空爆と書
きました。空襲と書くと東京や大阪などの大空襲の記憶が蘇るからだ
とされています。こういうのを「姑息な手段」といいます。行われ
たのは日本がさんざんやられたのと同じ空襲なのです。
この空襲でたくさんのクラスター(収束)爆弾が使われました。親爆
弾が空中で分解すると、子爆弾がたくさん出て来るものですが、そも
そもそれが初めて使われたのも日本空襲においてです。焼夷弾と呼ば
れたものです。同じく日本空襲のアイデアがその後、続々と使われた。
とくに911事件後に、アメリカは世界中で空襲を激化させました。アフ
ガニスタンに空襲が始められたのはちょうど10年前の10月8日です。そ
の後、イラクにも激しい空襲が行われた。大量破壊兵器をイラクが持っ
ているという理由でです。しかしそんなもの、イラクは持ってなかった。
にもかかわらずアメリカは裁かれない。アメリカを支持した自民党政府
も裁かれていません。現代の戦争犯罪が不問に付されている。そのすべ
ては都市空襲、沖縄戦、広島・長崎への原爆投下が今なお正義とされて
いることに連なっていると僕は思います。
平和を紡いでいきたい。人との人の争いから、少なくとも暴力を排除し
ていきたい。争うことはあっても、より穏やかに、理性的でなくても
良いから(仕方ないから)せめて野蛮にならないようにしたい。そこに
多くの人の願いがあると思います。
そしてそのためには、戦争犯罪の人類全体での反省が必要です。そして
それはアメリカにも大いにためになることです。アメリカが暴力にまみ
れた状態から自分たちを救うことにつながるからです。だから隣人であ
るアメリカのためにも、戦争犯罪を告発する必要がある。
ちなみにOECDの統計で、参加国の中でもっとも他殺による死亡率が高い
のはアメリカです。しかもダントツです。戦争犯罪を反省できない国は
国民と住民にとっても危険な国なのです。ちなみに日本は他殺率が最も
低い国です。ただし自殺率は韓国とならんでトップなのですが・・・。
ヒロシマとナガサキの間の日に、この世界から戦争犯罪をなくしていく
決意を、再度、心に誓いたいと思います。
****************************
米空軍、核ミサイル発射担当将校にキリスト教で聖戦教育
朝日新聞 2011年8月4日3時1分
米空軍が、有事の核ミサイル発射を担う将校向けの訓練の一環として、
キリスト教の「聖戦」論を20年以上にわたり講義してきたことがわか
った。「憲法の政教分離原則に違反する」との指摘を受け、今年7月末
に突然、取りやめていた。
米国と旧ソ連・ロシアの間では、冷戦末期から核軍縮が進展。核保有の
必然性や使用の可能性は薄れてきた。民主的な議論とは無縁の「神話」
によって、核の道義的な正当化を試み、延命を図ってきたことに、懸念
の声が出ている。
問題の講義をしていたのは、カリフォルニア州にあるバンデンバーグ
空軍基地。ミサイル発射を担当する空軍の将校は全員、この基地で核に
ついて訓練を受ける。憂慮した複数の軍人から通報されたNPO「軍に
おける信仰の自由財団」が情報公開制度で資料を入手、問題が明るみに
出た。
取材に答えた空軍教育訓練司令部によると、訓練初期にある倫理の講義
を担当する従軍牧師が用いた資料が、「核の倫理」という項目で、旧約
・新約聖書の記述を多数引用していた。
http://www.asahi.com/international/update/0803/TKY201108030650.html
昨日8月6日は広島に原爆が投下された日でした。明後日、8月9日は
長崎に原爆が投下された日です。広島に投下されたのはウランを
使った原爆でした。長崎に投下されたのはプルトニウムを使った原
爆でした。
すでに「明日に向けて(216)原発は核兵器開発の副産物(上)」
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/8927243c31aba162677214f21b5a0cb2
の中で説明しましたが、アメリカが二つの都市に原爆を落とした
のは二つのタイプのものを開発していたため、双方の威力を試した
かったからです。
ウラン型原爆は、ウランの濃縮によって作ります。天然ウランの中
に占める核分裂性のウラン235の占める割合はわずか0.7%。これを
より集めて、100%に近くまで濃縮して作るのがウラン型原爆で、
製造に多大な労力とエネルギーがかかります。
プルトニウム型原爆は、天然のウランの99.3%を占める核分裂をし
ないウラン238に中性子があたることで、プルトニウム239が生成さ
れることに注目し、これを再処理によって取り出して、原爆の材料
にします。このときかなりの放射能漏れを起こします。
ウラン型原爆は大きく二つに分けたウランを爆弾の中で通常火薬に
よってぶつけることで核分裂を起こさせます。これを爆縮といいま
す。プルトニウムは小分けしないと勝手に核分裂してしまうので、
ボールの中に分散し、外側の火薬で爆縮させて核分裂させます。
ウラン型が比較的核分裂に容易に達することに対して、プルトニウ
ムの爆縮の方が難しいとされており、事実アメリカは当初、ウラン
型原爆1個と、プルトニウム型原爆2個を作り、後者のうちの一つを、
1945年7月にアメリカで実験的に爆発させています。
この二つのタイプの違う原爆を持ったので、アメリカはどうしても
二個を投下したかった。そのために広島と長崎が選ばれたのです。
しかもアメリカは広島では、もっとも人が多く外にいる時間帯を狙
って、原爆を投下しました。それが8時15分でした。
この原爆投下は明らかに戦争犯罪です。武装しない一般市民の無差
別殺りくだからです。もちろんこれはすべての都市空襲にも該当す
るし、沖縄上陸作戦にも該当します。アメリカは1944年秋から大変
野蛮な戦争犯罪を連続させました。
これに対して日本はどうだったのかというと、世界で初めて爆撃機
を連ねて行う「戦略爆撃」を行いました。中国国民党政府のあった
重慶が対象となりました。このほか南京大虐殺をはじめ、数々の戦
争犯罪を犯しました。
その多くは告発され、裁かれていますが、日本政府の反省や謝罪は
いずれもあまりに不誠実です。このため南京大虐殺等々にについて、
そのような事実はなかったという論陣をはる人々もいます。しかし
あったとすればそれが戦争犯罪であることを否定する人は誰もいない。
ところが広島・長崎への原爆投下については、それがあったのかな
かったのかなど誰も論議などしない。その上で、アメリカは今なお
これを正義だとしています。大変恐ろしいことであるし、道義上、
どうしても許すことのできないことがらです。
つい最近も米空軍が、有事の核ミサイル発射を担う将校向けの訓練の
一環として、キリスト教の「聖戦」論を20年以上にわたり講義して
きたことが判明しました。しかも今年7月まで続けられていたのです。
これを報じた朝日新聞の記事を末尾に貼り付けておきます。
記事にはこう書かれています。「訓練初期にある倫理の講義を担当す
る従軍牧師が用いた資料が、「核の倫理」という項目で、旧約・新約
聖書の記述を多数引用していた」。これがアメリカ憲法の政教分離原
則に抵触するからと中止されたといいます。
しかし問題は政教分離にあるのでしょうか。そうではなくて、核攻撃
を正義とすることにこそある。これは広島・長崎のことを何ら反省し
ないことの上に重ねられてきた誤りです。アメリカはそれだけでなく
都市空襲も何も反省していないし、今もそれを繰り返しています。
私たちはこの歴史を終わらせなければいけない。戦争そのものも悪だ
と僕は思いますが、どうしてもというのなら、軍隊同士が誰もいない
野原にいってやってくださいというしかない。事実、かつての戦争の
多くはそうして闘われました。
しかし非武装の市民、いや軍人であっても無抵抗のものを殺害するの
は戦争犯罪です。戦争に倫理を持ち込むことに抵抗も感じますが、戦
争を克服できない人類が、今、到達している倫理は、戦争は止められ
なくても、無差別殺戮や大量殺戮は許さないとしています。
ところがアメリカは原爆投下を今も正義としている。それどころか核
攻撃は聖戦だという講義まで行っています。そして日本への大空襲に
続き、朝鮮半島に空襲を行い、ベトナムに空襲を行いました。さらに
イラク・アフガニスタン・リビア等々にも行っています。
ちなみにイラク攻撃のときに、日本の新聞は空襲と書かずに空爆と書
きました。空襲と書くと東京や大阪などの大空襲の記憶が蘇るからだ
とされています。こういうのを「姑息な手段」といいます。行われ
たのは日本がさんざんやられたのと同じ空襲なのです。
この空襲でたくさんのクラスター(収束)爆弾が使われました。親爆
弾が空中で分解すると、子爆弾がたくさん出て来るものですが、そも
そもそれが初めて使われたのも日本空襲においてです。焼夷弾と呼ば
れたものです。同じく日本空襲のアイデアがその後、続々と使われた。
とくに911事件後に、アメリカは世界中で空襲を激化させました。アフ
ガニスタンに空襲が始められたのはちょうど10年前の10月8日です。そ
の後、イラクにも激しい空襲が行われた。大量破壊兵器をイラクが持っ
ているという理由でです。しかしそんなもの、イラクは持ってなかった。
にもかかわらずアメリカは裁かれない。アメリカを支持した自民党政府
も裁かれていません。現代の戦争犯罪が不問に付されている。そのすべ
ては都市空襲、沖縄戦、広島・長崎への原爆投下が今なお正義とされて
いることに連なっていると僕は思います。
平和を紡いでいきたい。人との人の争いから、少なくとも暴力を排除し
ていきたい。争うことはあっても、より穏やかに、理性的でなくても
良いから(仕方ないから)せめて野蛮にならないようにしたい。そこに
多くの人の願いがあると思います。
そしてそのためには、戦争犯罪の人類全体での反省が必要です。そして
それはアメリカにも大いにためになることです。アメリカが暴力にまみ
れた状態から自分たちを救うことにつながるからです。だから隣人であ
るアメリカのためにも、戦争犯罪を告発する必要がある。
ちなみにOECDの統計で、参加国の中でもっとも他殺による死亡率が高い
のはアメリカです。しかもダントツです。戦争犯罪を反省できない国は
国民と住民にとっても危険な国なのです。ちなみに日本は他殺率が最も
低い国です。ただし自殺率は韓国とならんでトップなのですが・・・。
ヒロシマとナガサキの間の日に、この世界から戦争犯罪をなくしていく
決意を、再度、心に誓いたいと思います。
****************************
米空軍、核ミサイル発射担当将校にキリスト教で聖戦教育
朝日新聞 2011年8月4日3時1分
米空軍が、有事の核ミサイル発射を担う将校向けの訓練の一環として、
キリスト教の「聖戦」論を20年以上にわたり講義してきたことがわか
った。「憲法の政教分離原則に違反する」との指摘を受け、今年7月末
に突然、取りやめていた。
米国と旧ソ連・ロシアの間では、冷戦末期から核軍縮が進展。核保有の
必然性や使用の可能性は薄れてきた。民主的な議論とは無縁の「神話」
によって、核の道義的な正当化を試み、延命を図ってきたことに、懸念
の声が出ている。
問題の講義をしていたのは、カリフォルニア州にあるバンデンバーグ
空軍基地。ミサイル発射を担当する空軍の将校は全員、この基地で核に
ついて訓練を受ける。憂慮した複数の軍人から通報されたNPO「軍に
おける信仰の自由財団」が情報公開制度で資料を入手、問題が明るみに
出た。
取材に答えた空軍教育訓練司令部によると、訓練初期にある倫理の講義
を担当する従軍牧師が用いた資料が、「核の倫理」という項目で、旧約
・新約聖書の記述を多数引用していた。
http://www.asahi.com/international/update/0803/TKY201108030650.html